報告と真実(2)
その夜。
報告を終えた四人は、寮の部屋のリビングに集まってささやかな祝勝会を開いていた。テーブルには惣菜や菓子、缶飲料が並び、ほんのりとアルコールの匂いが漂う。
「くはぁ〜! 戦いのあとの一杯は最高だなぁ! このために生きてんだよな!」
頬を赤らめたナヅキが、キサラギの肩を組みながらごきげんに笑う。
「チェリーさんってさぁ、美人だよな〜。あのきりっとした目、マジでやばくない?」
甘ったるい酒気を吐きながら、にやにや顔で問いかけてくる。
キサラギはチョコチップクッキーを齧りながら、肩をすくめて適当な調子で返した。
「はいはい、勝手に言ってろ」
「なんだよその生返事! ムカつくなぁ」
ナヅキはむっと頬を膨らませ、絡むように言った。
「じゃあ逆にお前はどんな子がタイプなんだよ? ほら、言ってみろよ!」
キサラギは片眉を上げ、わずかに笑う。
「……お前が答えるなら、話してやってもいい」
「いいぜ! えーっとぉ、俺はぁ〜……料理が上手で俺より細くて、んで意外と気が強いタイプ!!! な? 最高だろ」
指を突きつけるように断言するナヅキ。
すると、隣のニシナが、ぽんと手を叩いて妙にごきげんな調子で言った。
「それってネツレイさんのこと、ですよね?」
ゴクッとウーロン茶を飲んでいたネツレイは、ぶふっ!!と盛大に吹き出した。眼鏡がずれて、あわててハンカチで拭く。
「げほっ……な、何を急に……! 全然違うだろっ!」
「確かに……」
ナヅキはにやにやしながらネツレイの両頬を両手で挟み、まじまじと顔を覗き込んだ。
「こうして見ると……こいつが女だったら、わりとアリだったかもなぁ。ちょっと可愛げあるし」
じっと見つめられて固まるネツレイ。
間を置いて、ナヅキは突然大声で笑い出した。
「じょーだんだって! そんな顔すんなよ!」
ぱっと手を離す。
「馬鹿! お前酒くせぇんだよ!! 寄るなっ!」
ようやく声を振り絞り、顔を真っ赤にしたネツレイが怒鳴る。
その横で、ニシナがくすくすと笑っていた。頬が赤く、いつもよりテンションが妙に高い。
キサラギはその様子に眉をひそめ、彼女の手元の缶を取り上げた。
「……これは……」
缶のラベルを見て、深いため息をつく。
「甘いジュースみたいだけど、中身はお酒じゃないか。……通りで様子がおかしいと思った」
その瞬間、ニシナがふらりと立ち上がり、キサラギに抱きついてきた。
「キサラギさんも……私のこと、好きになってくれますか……?」
頬を染め、瞳はとろんと潤み、声はいつもよりずっと甘い。
「……っ!」
キサラギは硬直したまま動けない。耳まで赤く染まっていく。
「あーっ! ズルい!! ニシナ、それ、俺にもやって! 同じの! 俺にも抱きついて!」
ナヅキがすぐさま飛びつこうとする。
「ナヅキ。お前はアウトだ」
ネツレイが眼鏡を押し上げ、冷静に制した。
「それにしても……キサラギがこんなに動揺するなんて、かなりレアだな」
悪い笑みを浮かべる。
「……うるさい」
バツが悪そうに、いつもの調子よりずっと小さな声でキサラギは答えた。
そのまま夜は更けていき——やがて、ソファに座っていたニシナが小さく寝息を立て始めた。
手にしていた空き缶がかたんと落ち、細い肩がゆるゆると揺れる。
「ははっ……子どもかよ」
ナヅキが笑いながら毛布を引き寄せ、ニシナの肩にそっとかけてやる。
無造作な動作なのに、指先は驚くほど丁寧だった。
ネツレイとキサラギは、ふと互いに視線を交わす。
「……戦場じゃ猪突猛進のくせに」
「こういう時は……妙に気が利くよな」
二人の吐息が重なり、リビングに柔らかな静けさが広がった。
戦いの夜を越えた小さな祝宴は、ほんのひとときの安らぎを確かに刻んでいた。




