紅の暴威(1)
冷たい風が吹き荒ぶ荒野を、四人の影が並んで進んでいた。
ナヅキ、ネツレイ、ニシナ、キサラギ。
リヅを失った今、誰もが口をつぐみ、ただ前だけを見据えている。
だがその沈黙を切り裂くように、大地が揺れた。
炎の柱と、黄金の閃光が同時に空を裂く。
「っ……二体同時……!」
ネツレイが眼鏡の奥で目を見開く。
燃え盛る火炎を纏い、狂気の笑みを浮かべる赤堕天使。
そして、黄金の瞳をぎらつかせ、時間そのものを捻じ曲げるような気配を纏う黄堕天使。
互いに干渉することなく、しかし確実に狙いを定める二つの影。
『やっと来たか、人間。さあ、どっちを先に壊してやろうか!』
赤堕天使が楽しげに吠える。
『……ふふ。僕は急がないよ。君たちの“記憶”を、一つずつ壊していけばいい』
黄堕天使は不気味に微笑み、冷たい声を放った。
瞬間、二つの力が爆発した。
炎の奔流が地面を割り、黄金の光が空間を裂く。
四人は咄嗟に飛び退いたが、轟音と衝撃で一気に散り散りにされる。
「っち、ネツレイ! こっちは赤だ!」
「わかってる!」
ナヅキとネツレイは炎の嵐に追い込まれ、赤堕天使と対峙する。
一方、ニシナは頭を押さえ、膝をついた。
黄堕天使の視線を浴び、記憶をえぐられるような痛みに顔を歪める。
「……やめ……て……! 奪わないで……!」
彼女の声は震え、涙がにじむ。
「ニシナ!」
キサラギがすぐに彼女を抱え起こし、黄色の輝きと対峙した。
その瞳には、迷いを断ち切った光が宿る。
「……俺が道標になる。お前は、俺を信じろ」
ニシナは必死に頷き、震える指でキサラギの袖を掴んだ。
---
——こうして、二つの戦いが同時に始まった。
赤の暴威に挑むナヅキとネツレイ。
記憶を抉る黄の幻惑に立ち向かうニシナとキサラギ。
それぞれの想いと覚悟が試される戦場が、幕を開けた。




