雪のあと(1)
冬のある朝。
夜のうちに降り積もった雪が、街を真っ白に染め上げていた。
「わぁ……!」
寮の窓から外を見たニシナが目を輝かせる。
一方で、ナヅキはげんなりとした顔で肩を落とした。
「ちぇっ……雪かき当番なんて聞いてねぇぞ」
じゃんけんの結果、ナヅキとネツレイが雪かき担当に。
抗議も虚しく、スコップを手に外へと追い出される。
---
数時間後。
真っ白になった庭先で、二人はせっせと雪をかき分けていた。
「……はぁ……なんで俺が……」
ナヅキは鼻の頭を赤くして、ぼやきながら雪を投げる。
「当然だろ。負けたんだから」
ネツレイは黙々と雪を片づけ、冷静に言い返す。
「お前だって負けただろ!」
「……はいはい」
雪が解けるまで、小競り合いは止まらなかった。
---
ようやく作業を終えて寮に戻ると、部屋の中はぽかぽかと温かい。
ドアを開けると、ふわりと湯気の匂いが迎えてくれた。
「——湯船、貯めときましたよ!」
ニシナが笑顔で立っていた。
二人の顔が同時に輝く。
「「一番乗りは俺だ!!!」」
取っ組み合いの末、結局二人同時に浴室へ飛び込んでいった。
---
リビングに残されたニシナは、呆れながらキサラギへ視線を送る。
「……あの人たち、仲良しなんですね」
キサラギはため息をつき、頭をかきながら答えに詰まる。
「……まぁ、あれで案外、息は合ってるのかもしれないな」
その声音には、どこか温かさが滲んでいた。
---
浴室。
大きな湯船で、ナヅキとネツレイが肩を並べて浸かっている。
「ちょっと!俺より先に入るのは反則だろ」
「反則も何も、一緒に飛び込んできたのはお前だろ」
ちゃぷん、とお湯が跳ね、また言い合いが始まる。
「うるせぇ! だったら次の当番は絶対やらねぇ!」
「いや、そこはまたじゃんけんだ」
騒がしさの後、不意に静けさが訪れる。
ナヅキは天井を見上げ、ぽつりとこぼした。
「……でもさ。ついこの前まで、チーム組まされてムカつくとか言ってたのに。今は一緒に風呂だぜ? 変な感じだよな」
ネツレイは少し驚いた顔をし、やがて小さく笑った。
「確かに。最初は振り回されてばかりで、うんざりしてた……けど、不思議と放っておけないんだ」
湯気に隠れて赤くなる頬を、互いに見せないまま沈黙が流れる。
そして次の瞬間。
「でも次の雪かきはパスだからな」
「だからそれは——!」
再び騒ぎが始まり、浴室に笑い声が響いた。




