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≪6≫

 ややこしいことになった。


 人々は、嘗て失われた美姫(…俺の母だ)が魔族に浚われ酷い目に遭っていたとの国からの布告を信じ込んだらしい。…もう行方不明になってから二十年超経っているというのに。

 今さらじゃないか?

 その姫を救い出さんと立ち上がったらしい。

 冷静に考えられる奴は居無いのか。…居無いんだろうなぁ……


「それで実際に救いに来たら、居たのは俺ってことになったらどーなるんだ?」

「ご安心を。陛下を誰にも渡しはいたしません」

 アグーはやる気満々だ。

 何だ。牧歌的に平和的に暮らしているという話はやはりデマか。

「売られた喧嘩は倍返しってだけだぜ」

「陛下。人という生き物は自分勝手な生き物です。人類という存在を同じ生き物のカテゴリーにはいれない。我々魔族とは相容れない」

「…話し合いで解決する気は…」

「「「ありません」」」

 おう。見事に三人揃ったな。

「この城に辿り付けるかどうか、そもそもそれが問題ですが」

「そんな辺鄙なところにあんの?この城」

 いきなり瞬間移動で連行された俺には、この場所がいったいどのあたりなのか全く見当が付かない。

「距離的には近いと言えますが…」

「地下だからな」

「地下?」

「そ。人間たちが地上に国を作っているのと同じように、俺たちは地下に国を作ってるわけ」

「へぇ~・・・」

 そんなことになっていたとは。

 自分たちの暮らす足元で、魔族たちが暮らしているなんて誰も想像しないだろう。

「でも、どうやってここまで来るんだ?」

「俺たちは魔族なら瞬間移動だが、人間たちならトレヴァ火山の火口に飛び込むことになるな」

 その火山は間違いなく活火山だ。去年、村に立ち寄った商人が灰の影響がどうのと言っていたのを覚えている。

「…それって普通、死ぬよな?」

「普通の人間はな」

「魔法使いがシールドを張れば問題無く辿り付けるでしょう。事実、これまでの勇者一行はそうしてここまでたどり着きましたから」

 ふむふむ。魔法ね…俺とは縁の無い話だ。

「つーか、これまでって…勇者ご一行はそんなにこれまで来てんの?」

「私が知っているだけで、5組は居たかと記憶しております。ほとんどが魔王陛下にたどり着くまでに他の魔族に倒されていますが」

 いい加減諦めれば良いのに…勇者ご一行。不毛だぜ。

「そのほとんどに関与しているのが、そこの殺戮卿です。陛下」

「ヴァミリュウム」

「本当のことを言って何が悪い」

 アグーに殺人光線もかくやという冷ややかな視線を向けられてもヴァムは笑っている。

「陛下。私は何も好きで人間を殺しているわけではありません。そのあたりを誤解なさらないで下さい」

「うーん…まぁ、理解しようとも思わないけどさ。言い分はわからんでもない」

 あれだ。きっと目の前に蝿がぶんぶんしていると鬱陶しいのと同じだ。

「なぁ、いっそのこと俺が王様に直談判して納めて貰うっていうのは…」

「陛下。カリ様。貴方の優しい御心は人には通じないでしょう。それに我々には貴方を失うことは出来ないのです」

 種の存続のためにも?・・・・嫌な感じだ。

 知らず、溜息が大きくなる。

「なぁ、陛下も疲れてんだろ。お休みになって貰ったらどうだ?」

 一番気が利かなさそうな(失礼)サリューがアグーに提案した。

「賛成!」

腹はまだ空かないし、寝るにも早すぎるが。

「では、陛下の居室へご案内致します」

すげぇおどろおどろしい部屋だったらどあしようか…不安だ。

 ドクロの照明とかやめて欲しいなぁ。



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