≪5≫
冗談じゃねぇよ!何で俺が男なんかと!!!!!
「俺の趣向はヘテロですので。ツツシンデオコトワリを」
「ご安心下さい。我らは男にでも女にでも陛下のお好みのように体を作り変えることが出来ます」
アグーが誇らしげに言うが、現在男であるアグーの姿を見るに例え女に変わられてもちょっと触手が動きそうにない。
「俺はこのままのほうが良いかなぁ。心配しなくても昇天できるぐらい気持ち良くする自信はあるぜ」
そんな自信は捨ててしまえ。
「我らがお気に召されないならば、他の者を呼びますが」
「美人!?」
身を乗り出した俺に、アグーとサリューは顔を見合わせる。どういう反応だ。
「美人と言えば」
「美人だよなぁ…相手にするには遠慮したいけど」
ますますどんな相手だ。
断ったほうが良いのかとオレが警戒心を抱きはじめたその時。
「サリユヴィシェヌ!」
大広間の扉が「どーん」という効果音付きで開け放たれた。
飛び込んできたのは、全身真っ赤な衣裳のど派手な美人。確かに美人だ。
…相手にすれば食われるのはこちら、という獰猛さはあるが。
「ヴァミリュウム」
またもや舌を噛みそうな名前。どうして魔族の名前っつーのはこう…
「恐れ多くも陛下の御前で…」
「煩い。殺戮卿」
ちょっと待て、どういう呼称だ。それは、今のアグーに対して言ったのか?
是非ともその由来は聞き出したいところが。いや逆に聞かないほうが良いのか。
迫力美人はアグーの注意を受けて、視線を向けた。やはり迫力満点。
ちょっとびびって逃げ出しそうになるのを我慢する。
「ご無礼を致しました。私はヴァミリュウムと申します。陛下のご来臨、心よりお待ち申し上げておりました」
「…ヴァムで良い?」
「は?」
いや、呼びにくいし。
「貴方の名前。ヴァムって呼んでも良いかなぁ?」
そう言うと迫力美人=ヴァムは艶やかに微笑んだ。
「陛下の御心のままに」
ん、でもやっぱり食われそうな感じ。
「おいおい、騙されんなよ。そいつだって男にもなれるんだぜ」
む。それもそうだが第一印象ってやつが違う。でもここまで迫力美人は俺の好みとは反対だ。
母さんにさんざん迫害?されてた親父を見て育った俺としては、おとなしめの可愛らしい相手が良い。逆らって半殺しにされるのは遠慮したい。(よく頑張ったな親父…)
「それで、どうしたんだ?」
「殺戮卿。人間どもが動き出したようだ」
「何で!?」
だって勇者候補の俺はここに居るだろ?
「ふん愚かな。代役の勇者など相手にもならん。適当な魔物をぶつけてやればあっさり退くだろう」
「そうであれば良いがな。どうも貴様が下手を打ったようだぞ」
ヴァムの言葉にサリューは眉を顰めた。
「貴様の姿、陛下を迎えに行った時に見られているだろう。…『行方がわからなくなっていた姫君を浚ったのはやはり魔族だった!』と勢いづいているらしい」
誰が『姫』だ。
誰か否定しろよ!近所のオヤジたちよ!