表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/33

≪4≫




 気が付くと、オレはだだっ広い部屋に立っていた。

 どこだよ、ここ。


「これからカリ様が生活される魔王城です」

 決定事項なのか、それは。

 オレの意志はまるっきり無視?……さすが魔族だな。

「アグー、あのな…」

「何でしょう?」



「おう、アグドメゼド。帰ったのか…つーことはそっちの兄ちゃんが次の魔王陛下か」



 背後からの声に振り向くと男が立っていた。

 アグーとはタイプは違うが、ワイルド系の美形だ。


「サリユヴィシェヌ」

「は?」

 今の呪文は何だ?魔族の挨拶か?

「サリユヴィシェヌ。陛下に対して無礼だぞ」

「はいはい。あ、オレ。サリユヴィシェヌ、よろしくな」

 名前かよ!

「えーと、オレはカリ。…サリューて呼んでいいか?」

 男はおやっという風に笑って軽く頷いた。

「早速愛称を賜るなど恐悦至極、身に余る光栄にございます」

 いや、ただ単に呼びにくいからだけなんだけどな。

 それよりも。

「アグー。オレ、ここで暮らすつもり無いんだけど」

「何かお気に召さないことが?…やはり新しく建て直すべきでしたでしょうか?」

 いやいやいやいや。

 そういうことじゃなくてだな……一般常識を知らない魔族ってのは厄介だな。

「そうじゃなくて。オレは魔王になるつもり無いから。だから元の家に戻せ」

「そのような訳には参りません!カリ様は我々をお見捨てになるのですか!?」

 何故そうなる。

「あのさ…人間があれこれ手出ししなけりゃ、普通に平和的に暮らしてたわけだろ?」

 魔族としてそれはどうなんだかとは思うが。

「だったら今まで通り暮らせばいいじゃん。魔王なんていらねーだろ」

「しかし、勇者が…」

「その勇者も、オレが断ればおしまいしさ」

「それだけではございません!」

 他に何があるんだよ。


「魔王様には、一族の者を生み出すという重要な役目がございます」


「…………は?」

 理解不能な発言に首を傾げた。

「我々魔族には、生殖能力がございません。魔王様だけが新たな魔族を生み出すことができるのです」

「へ、へぇ……」

 魔族の隠された生態に迫る!…みたいだな。

 でもちょっと待てよ。

「だったら、えーとあんたらも…魔王の子供ってことになるんじゃ…」

 アグーとサリューが頷いた。

 おお!それなら別に俺が魔王にならなくても良いんじゃね?

「確かに大雑把に捉えればそうなるでしょう。しかし、真に魔王様の御子となられるのは、真紅の卵から孵った者のみ」

 た、卵…そうか、魔族は卵から生まれるのか………卵生か。

 魚と同じだな。うん。

「ん?でもちょっと待てよ。魔王にしか生殖能力が無いんだったら…誰がその卵生むんだ?」

「もちろん陛下ご自身です」

「は!?」

「もちろん、オレたちも手伝うけどな」

「………どうやって?」

 恐る恐る尋ねた俺に、サリューがにやりと笑った。

「我々の気と陛下の気を混ぜるのです」

「………具体的には?」

「交接」

「は?」

「平たく言えば、セックスだな」

「…………」





 オレ、父さんが魔王が嫌で逃げ出した訳がすげー理解できたぜ。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ