≪27≫
ああっくそっ!男は度胸だ!
「どうやれば良いんだ?教えてくれ」
「カリ様!」
感動するのは後でいいからさ。成功するかもわかんないんだから。
「難しいことはありません。光玉に御手を翳して、この世界を感じて下さい」
「ん」
また抽象的だな。
言われるままに手を翳し、俺は目を閉じた。
・・・何も感じない。熱も世界も。失敗か!?
が、ふと気を抜いた瞬間何かに押し潰されるような感覚が襲った。
何だ!?
「カリ様!」
しかし光玉から手は離れない。おいおい。
「大丈夫です。カリ様、お心安らかに・・・私がお側に付いております」
ガクッと足が崩れ落ちそうになるのを後ろから支えられる。
手の先からすぅと引っ張られているような何か・・・吸いとられてないか!? 大丈夫なのか…このまま俺が骨と皮になっちまうなんてこと無いだろうな・・・
「カリ様」
耳元で囁かれ、鳥肌が立ちそうなところだが、そんな余裕も無い。
「素晴らしい・・・ご覧を」
何が。
アグーに促され視線を上げると・・・
「な・・・っ」
あり得ない大きさになった光球が浮いていた。
さっきはウキぐらいの大きさだったのにでかくなりすぎるだろ!?
「この短時間であれほどの光球になるとは、さすがカリ様。お見事です」
複雑な褒め言葉だ。つーか全然嬉しくない。 ともかく。これで一先ず俺はお役御免でいいな。もういいな!
ではお休みなさい。
耐えられないくらい瞼が重い。
「カリ様…ありがとうございます。ゆっくりお休み下さい」
ふわりとした浮遊感とともに俺の意識は闇に落ちた。
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貴方は選らばなければならない。
神であり、魔であり、人である。
わかってる…わかってる!そんなことは、俺自身が一番よくっ!
それでも選べないから・・・困っているんだ。
神は・・・あいつは…鬱陶しいとは思うが、弟だ。切り捨てることは出来ない。
そして魔族たちも…彼らは俺の子供たち…愛しい存在だ。
ならば。
ならば・・・。
「おはよう。カリ様」
「…おは…おぅぃっ!!」
挨拶に挨拶を返そうとした俺は、上に乗っかるトールに突っ込みをいれずにいられなかった。
「何やってんだっ!」
「ん?カリ様襲ってる~」
「アホかっ!」
退かそうと起き上がろうとした俺は・・・
「へ…」
「ムリムリ。力入らないでしょ?力使い過ぎたね」
イイ笑顔でトールの顔が近づく。
待て待て!…俺、ピンチか!?
「ちょっ…!」
もそもそと腹の中に手が入り込んでくるのに本気で危機感を覚える。
「いい加減に・・・っ」
「覚悟は決めた?」
「何…?」
「思い出したでしょう?カリ様・・・陛下。ご自分が『何』であるか」
「何って…俺はだからっ漁師だって!」
必死で言い募る俺に、くすりと笑う。外見こそガキだが、ガキがする笑い方じゃない。
「誰よりも優しく、誰よりも残酷な」
歌うようにトールが紡ぐ。
「我らが父、我らが母。魔王陛下」
「・・・・・」
「貴方無くして、我ら魔族は存在できない」
青年姿に戻ったトールが、俺の動きを戒める。
「諦めて…我らは貴方を逃がさない。神にも・・・・人にも渡しはしない」
「だーかーらっ!俺はただの人間でっ…魔王とかそんなの関係ないからっ!」
諦めろといわれて諦められるかってんだ。
「頑固だね、カリ様」
「あ、そうですねって頷けることと頷けないことがあるんだよ!」
「うん。だからさっさと既成事実を作っちゃおう」
何ですと?
「大丈夫。痛くないように、じっくり解してあげるから」
ナニをですか!?