表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/33

≪25≫




「カリ様!」


突然、トールが険しい表情になり俺へ手を伸ばした。

「くそっ」

だからどうした?

いったい何に反応しているんだろうかと疑問を抱いた瞬間、目の前に光が突き刺さった。

何事!?

「眩しっ」


『会いたかった』


眩しさに目を覆った腕に誰かが触れた。トールでは無いだろう。

誰だ?


『我が兄上様』


俺は一人っ子だ。親父に隠し子が居なければ。・・・バレたら母さんに殺されるのでその可能性は低い。

腕を下ろし、相手を視界に入れた。

「・・・・・・」

何か、光ってますよ。疑似太陽の影響とかでなく、目の前の人が(人なのか?)自身で発光している

そんな発光体は身内にはおりません。

「カリ様っ離れて!」


『黙れ。穢らわしき魔よ』


俺に向けていたのとは正反対な冷たい言葉が突きささる。表情も冷たい。見事なほどの変わりっぷりだ。 発光している腕がトールに向けて上げられるのを見て俺は咄嗟にその腕を掴んだ。何か知らないがヤバそうな気がしたのだ。

『兄上様?』

「あんた誰?」

取り敢えず名乗りやがれ。

ふ、と発光体の表情が曇った。

『私をまだお怒りですか?』

・・・だからお前のことなんか知らんと言ってるだろうが。

「誰と勘違いしてるのか知らないけど、俺はあんたとは初対面だぜ」

『いいえ。貴方は私の兄上様でらっしゃいます』

だからそもそもお前は誰なんだ。

「忌々しい神族がっ!」

ん?うおっ!

俺の横を衝撃波が通りすぎた。危ねぇなおいっ!

「遅いっ殺戮卿!」

トールが向こうから叫ぶ。アグーか。

「カリ様。私の後ろに」

守られてばっかりか。カッコ悪ぃな俺。

『穢れし者が兄上様の傍に在るとは万死に値する』

「陛下に見捨てられた者が吠えるな」

あー、気分的に火花が散ってるな。何でそんなに険悪なんだか。

発光体は神族だって言ったよな。やっぱり神と魔は仲が悪いのか?

トールは魔王は元神様だって言ってたもんなぁ・・・ん?

「なぁなぁ」

睨みあってるとこすいません。

「もしかして、そいつが言ってる『兄』って初代の魔王のことじゃねぇの?」

勘違いしてるなら言ってやらないとな。もうそいつは居ないんだって。

『私が兄上様を間違えることはありません』

でも実際、間違えてるしな。

「間違えてることを認めるのは恥ずかしいことじゃないぜ」

『私に間違いはありません』

強情なやつ。私が正しいって?そういうやつに限って間違えてるんだよなぁ。

『このような場所にいらっしゃるからです。お痛わしい。私が兄上様を天へお連れします。昔のように過ごしましょう』

 どいつもこいつも思い込みが激しすぎるだろう。

「カリ様は我らが魔王陛下。神などの出る幕は無い」

『私から兄上様を奪った薄汚い魔めが』

 お前らどっちもどっちだぞ。そんなだから初代魔王に逃亡?されるんだ。

「なぁなぁ」

「『はい』」

 息ぴったりじゃん。

「これ以上俺のこと無視して話するんなら、二度と話聞かねぇけど。いい?」

「『………』」

 アグーも発光体もぴたりと口を閉じた。


 やれば出来るじゃん。









「それじゃ、自己紹介からどうぞ」

 発光体を指名してやる。

『兄上様…、私は貴方の弟のミーキァクリゥォアです』

 ・・・・。ミカで良いな。

「アグー。こいつって魔族の敵なの?」

「魔族というよりカリ様の敵です」

『愚かな。私が兄上様の敵になどなろうはずが無い』

 あー、また言い合いが始まりそうな。

「俺が指名した時以外の発言禁止。破ったら一生無視な」

 静かになった。

「…で、ミカ。名前はわかったけど、お前は『何』なの?」

『兄上様…昔もよく私のことをそう呼んで下さいました』

 やべ。何かうっとりしちゃってるぞ!?

『私と兄上様は天を統べる兄弟神。二人で一つとなる番いの神です』

 番い、ねぇ・・・。

『兄弟であり、恋人であり、夫婦でもあります』

 俺はかっくり、と首を落とした。またそのパターンか。

『しかし、ある日些細な誤解により喧嘩となり…兄上様は天を飛び出していかれたのです。そのまま魔界へと棲みついてしまわれ、私にはお迎えにあがることも出来ませんでした。しかしつい先頃閉ざされていた結界が解かれ、私は兄上様がお怒りを解いて下されたのだとお迎えに参りました次第』

 結界が解かれたのか。へぇ、ふーん。そんな変わったことがあったのか?

 トールに視線をやると、さぁねとばかりに肩をすくめる。

 では、アグーへと視線をやると・・・何だか眉をしかめている。心当たりあるのか。

「アグー。結界なんか張ってはったのか?」

「初代魔王陛下が、神族避けに張ったと伝わっております」

 そうか。激しい兄弟喧嘩だったんだな。結界張ってまで弟に会いたくないなんて。

 ・・・ま、この弟じゃ無理もねぇと思うが。

 しかしそれが何で解けたんだ?

「魔王様が張った結界は魔王様にしか解けない。つまりカリ様が解いたんだろうね」

 え!俺!?

 いやいや、そんな心当たりは全然無いぞ。

「カリ様。狂将に突き落とされたでしょ。原因っていったらそのくれいじゃない?」

 ジークか。あいつか。トールに促され、不快感がこみ上げる。

 今度会ったら絶対に殴ってやる。

「あーあ、余計なことするから裏目に出ちゃったねぇ」

 トールの言葉は揶揄するようで、いったいどちらの味方なのやら。

 俺はどっちの味方でも無いけどな。


「結論を言う。俺はお前の兄とかでは無いし。魔王でも無い。以上!」


 はい。帰った。帰った。

 ついでに俺も地上に帰してくれ。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ