≪24≫
「あっははははは!!」
腹を抱えて笑っているのはトールだ。
そんなに笑うところか?俺がアグーを殴ったのって。
「だってよくあの顔を殴ったね。カリ様にしか出来ないし、あいつも許さないだろうな。それで殴った手は大丈夫だったの?痛めなかった?」
「…慌てたアグーにすぐ治療されました」
殴られたことなどお構いなくアグーは俺の手を心配した。馬鹿か。
そこで再びトールが笑う。お前は笑い上戸だったのか。
「トール」
「うんうん。それでどうしたの?用がなくても来るけど、用があって呼んだんでしょ?」
「俺は本当に『魔王』か?」
「間違えたりしないよ。カリ様以外に魔王は居無い」
一点の疑いもなしか。
「魔族って何で魔王以外に子供が生めないんだ?」
それがそもそもおかしいだろ。
「おかしくは無いよ」
「だから何で」
「生殖能力は特別な力なんだ。聖と魔の力をその身に宿す者で無ければならない。僕たち魔族は『魔』の力しか持たない。竜族や神族だって同じで『聖』の力しか持たない。人が何の疑問もなく子供を増やすのは彼等が『聖』と『魔』の力を合わせもつからにならない」
へーへー。そうなんだ。
「つまりその理屈でいくと魔王は両方の力を持つってわけ?」
「その通り!」
大当たり~とトールはぱちぱちと手を叩く。
「魔王様は己の後継者を一人しか産めない。それは自分の力をそのまま後継者に渡すからだよ。聖と魔の力をね」
うーむ。やはり疑問が。
「何で魔王だけ?」
「魔王様は神様だからね」
何ですと。
「正しくは『元』神様かな。ずーと昔々に天から堕ちてきた神様。何で堕ちてきたのかは詳しく言わなかったらしいけど」
セオリーから行くと禁忌に手を出したとか、勢力争いに負けたとかか。
「でもこの魔界を作って悠々自適に暮らしたらしいよ」
「…平和だな」
「うん」
そうか。天界に喧嘩を売ろうとはしなかったんだな。
「諦めて」
「んあ?」
「カリ様。貴方を見つけたからには僕たちは逃がさない。だから人界に戻るのは諦めて」
いやいや。そこで簡単に諦めてたら悪あがきしてないだろ。
「お前らって…勝手だな」
「魔族だもん」
「ああ、そう」
そういい切られると後が続かんだろうが!
「わからないなぁ。人間って贅沢とか酒池肉林とか最強とかって大好きなんじゃないの?」
「人によるだろ。だいたい酒池肉林って・・・」
相手が男ばっかりで何が嬉しいか。むしろ悲しみでいっぱいだ。
「時間はたっぷりあるから大丈夫。長期戦には慣れてるから安心して」
できるか!
ああ・・・右を向いても左を向いても変な魔族ばかり。
どうしたものだろうか。俺の貧しい脳では打開策は一向に浮かばない。
『見つけた』
「へ?」
「どうしたの?」
「いや、今何か…」
俺は周囲を見渡したが、トールと俺以外に誰も居無い。
くすくすくす。
ゆ、幽霊か!?