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≪23≫

封印を。

我らの願いを。



















 気がつくと、真っ暗闇だった。どこだよ、ここ。

 手を伸ばしてみるが指先さへ視界に入らない。盲目の人間の気分だ。


『落ち着いて』


いや、別に慌ててな・・・て誰だ!?

『私は貴方の中に眠る者』

へぇ…俺の中?・・・中?

不法進入か。

『・・・いえ違います。私は元からここに居ます』

でも俺は知らないけど。あんたのこと。

『私は貴方です』

意味がわかりません。すみません。(何で謝ってるんだ?)

『そういうものだと納得して下さい』

 わかりました。(わからないけど)俺は基本的に流されるタイプだ。

 魔界なんてところに居るのを考えてもらってもわかると思うけれど。

 ・・・で、まぁあんたが俺だったとして、何の用?

『貴方は大いなる選択の刻に居ます。意味がわからないという気持ちもよくわかります。『カリ』には人として生きて欲しいという願いが込められましたから』

 人として生きて欲しいって…人ですけど。ああ、いや…そういえば魔王疑惑が。

 べ、別にっ忘れてたわけじゃないぞ!ちょっとした現実逃避ってやつだ。

 あ・・・何か思い出してきたぞ。そうそう、俺突き落とされたんだっ!…温厚な俺でもここはキレて良いところじゃないか?

『貴方は選択が出来ます』

 俺の葛藤は無視ですか。そうですか。

『魔として覚醒するか。このまま人として生きるか』

 ふむ。

 ここは迷ってみせるべきなんだろうか?全く悩まないけどな。

 だってな、魔として覚醒したとしても面倒が増えるだけに思える。それなら人として細々と漁師をしてたほうが絶対に良い。

『…そうですか』

 そうですよ。

『では、勇者としての道を選ぶというわけですね』

 こら待て待て待てっ!何でそうなる!?

 俺は魔族になる気は無いと言っただけで、勇者になるなんて一言も言って無い!!

『人として生きるということはそういうことです』

 違うだろ。

 魔王か勇者か選べ、てどんな選択肢だよ!お伽話にも聞いたことねぇよ。

 どうかそこに『漁師』ていう選択肢も追加して下さい。

『選ぶことの出来ない夢は妄想と呼びます』

 失礼だな!ちゃんと選べるって。いくら流されやすい俺でも勇者にも魔王にもなる気は無いからな。頷いた覚えなんて一度も無いぞ。

『貴方は、選ばなければならない』

 だから選ばないって!!

『そうで無くば・・・』

 無くば?







「カリ様」








「あーっもうっ!いいところで!!!」

 目を開けた先にはアグーが居ました。顔を覗き込んでます。

 いい加減美形にも慣れてきたな。

「カリ様」

「何?」

「愚かな私にどうか罰を賜りとうございます」

「は?」

 置きぬけのそんな台詞に目が点になった。何だ『罰』て。しかも賜るって。

「カリ様を危険に晒し御身を守りきれぬばかりか、カリ様のお優しさを踏みにじるような真似を致しました。この身を滅ぼされても仕方なきこと」

 いやいやいや。

 確かに俺はジークに突き落とされました。アグーが止めなかったことにも腹を立てました。

 でもさ、やったのはジークだろ。つまり元凶はジーク。

 ジークが謝るんならまだしも、アグーが謝るのは筋違いだろ。その上罰するなんて有り得ん。

 ・・・とは言え、それじゃ納得しなさそうだよなぁ。

 出会った当初から融通きかなそうな奴だったもん。

「アグー」

「はい」

 頭を下げ、アグーは俺が罰を先刻するのを粛々と待っている。

 うん。そうだ。こうしよう。

「アグー。顔を上げろ」

「…は」

 俺はにっこりと笑い、拳を握った。


 うん。男なら拳で語れ。

 親父もよく言っていた。

 そう言うわけで。


「これでチャラな!」

 俺は容赦なくアグーの顔を殴りました。

 …全国の美形ファン。どうか石を投げないで下さい。










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