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≪22≫




 母さん、親父…何で死んだんだよ。しかも何の事情説明も無しに。

 はぁぁ、と溜息をつくしかない。自分の置かれた立場は本当にどうしようも無い。


「何の能力も無いのに…本当に魔王なのかよ」


 魔王を自覚しろと言われても、その自覚するための根拠が無くて自覚できるわけが無い。

「貴様がそう思っているからこそ力が顕現しない」

 そう言うやジークは俺の腕を掴んで歩き出した。

 おいおいおい。どこへ行く!?

「狂将!」

 アグーとロウも慌てたように続く。

 腕を振りほどこうにもびくともしない。俺が非力なのではない。こいつが馬鹿力なんだ!!

「大人しくついて来い。貴様のような馬鹿に丁度良い手っ取り早い方法がある」

 上司(仮)に馬鹿呼ばわりか…いいけどな。

 嫌な予感しかしない。精一杯お断りしたい!!全力で逃げたい。

 アグーとロウにも助けを求めるような視線を送ってみるが…お前ら追いかけてきてる割に必死さが足りんぞ!!見捨てるつもりか!?

 俺。絶体絶命!?

「どこに行くつもりだよ!!」

「すぐそこだ」

 一瞬の闇の後に、眩暈のするパノラマが広がった。

 どこここっ!?

 トールのところで見た景色が良いなぁ、なんてレベルでは無い。この高さは最早恐怖だ。

 びゅぉぉっと更に恐怖を煽るように風が耳元を通り過ぎていく。

 ここまできて、『何するつもり?』なんて暢気に聞くほど察しは悪くない。


 お前!俺をここから落とすつもりか!?


 俺の内心の叫びを聞いたのか、ジークが振り返り、にやりと笑った。

 今まで見た中で最悪に凶悪な顔だ!

「心配するな。貴様がどれだけ否定しようと貴様は『魔王』だ。ここから落とされたぐらいで命を落としはしない。人間やめる覚悟が出きるだけだ」

 それが嫌なんだよっ!!

 俺は必死にジークの手に爪を立て、暴れてみるが効果ゼロ。ああ、ホント、マジにやめろ。

「では、さらばだ。また会おう」


「ふ・・・ざけんなぁっーーっ!!」


 俺の体は宙に投げ飛ばされた。










 心臓が掴まれるような急速落下。

 目も開けられず、ただただ落ちていく。










 ああ、俺は死ぬのか。

 短い人生だったな。

 とりあえず、死んだらすぐに文句を言う。馬鹿親父に。






 ・・・地面に叩きつけられるのは痛いか?

 そんなこともわからず、一瞬であの世か?














「何やってんの?」







 俺の危機的状況を無視するような呑気な声が掛けられた。

「ドール゛ぅぅ゛~っ!!」

 落下は続いているので、風圧の関係で妙な声になる。

「楽しいの?」

 誰が楽しんどるか!!!!!

 早く助けてくれ!!

 必死でわたわたと…出来たかどうかはわからないが、気持ちだけは焦る…俺に不思議そうな表情を浮かべながらもトールはひょいっと先ほどまでの落下が嘘のように俺を抱きとめた。

「カリ様、かーくほ!」

 楽しそうだな。でも助かった!!!恩に着るぜっトール!!

「それで何の遊び?僕にも声かけてよ」

「あ…遊んでねぇっ!!突き落とされたんだよ!」

 トールにしがみついたままで、俺は落ちてきたと思われる上空を睨みつけた。

 それにつられるようにトールも見上げる。


「カリ様」


 瞬間移動してきたらしいアグーが俺の様子を見ている…観察しているというのが正しいか。

 ジークの行動を止めず、積極的に参加しないまでも容認して見ていたのは…俺の『魔王』としての覚醒を狙ったからか。

 ぐっ、とトールに掴まる腕に力が篭もる。

 わかるだろ?だって、助けなかった時点で共犯だ。

 そして、何故かトールがくすりと笑いを漏らした。


「お前ら、馬鹿だね」


 先ほどよりも楽しそうにトールが言い、アグーが顔を顰めた。

「今さら焦る必要も無いのに」

 よしよし、と何故かトールに背中を叩かれる。

 子供扱いすんなよ!…まぁ、見た目子供にしがみ付いてる俺も俺だけど。



「大事なのは逃がさないってことだよ」



 そこで、ぷつりと意識が遠のいた。






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