第6章 強襲、ゲイラ部隊
ドンッ――!
木製のドアが爆発のように吹き飛んだ。
漆黒の装甲に身を包んだ《時間城》の時間調整部隊”ゲイラ” が、黒いマントをはためかせて雪崩れ込んできた。ガスマスクのような仮面の向こうの表情は何もわからない。光学銃が静かにバルたちを狙う。
「元監察者バル=ゼン!時制破棄の容疑で拘束する!」
「くそっ、やっぱ来やがった!」
アメリアが机を蹴って跳び下がり、義足に内蔵されたスチームライフルを構えた。
バルもすでに背中の鞄から蒸気式のナックルブラスターを取り出していた。
「アメリア、棚の裏の“シューター”へ!」
「ゴミまみれでまだ片付けてない!」
「生きて帰る方が先だッ!」
弾ける銃火、唸る空気。
銃声と蒸気の裂け目が、事務所を灼熱の戦場に変える。
そこへ――
「伏せろ!」
窓が砕け、青銀の影が空を裂いた。
マントをなびかせて飛び込んできたのは、男――ナユタだった。
その眼は、氷のように冷たく、背負ったクロノブレードから“時間の波動”が滲んでいた。
「修復者コード:ナユタ・フェルン。……この時間領域での介入は許可できない」
“ゲイラ”の部隊長が吠えた瞬間、ナユタの剣が蒸気を裂いて煌めく。
刹那、敵の腕がひとつ吹き飛び、時間が歪んだ。
「バル!行け!」
「……感謝はしないぞ!」
「それがいい」
ナユタは敵の一団を一手に引き受けながら、事務所の床を破壊し始める。
アメリアとバルは、帳簿棚の裏のパネルを外し、地下の脱出“シュウター”へ滑り込んだ。
しかし――
「ちょ、アメリア!?どこ行く!?」
滑り台のような金属管を滑り落ちる直前、アメリアが逆走して戻っていった。
「忘れてた!ちょっとだけ待って!」
「“ちょっと”って、今じゃないだろ!!」
バルが叫ぶが、彼女は素早く事務所の床下を開け、古びた鞄引きずり出す。
油染みと火薬の匂いがするそれは、まるで**長年隠されていた“記録の塊”**のようだった。
「これ、あたしの……いや、それより!あとで話す!!」
「……チッ、後で教えろよ!!」
アメリアが飛び込んだ直後、バルがシューターのレバーを引き、二人の姿は深い闇の中へと消えていった。
事務所の上空では、蒸気と煙が交錯し、ナユタの姿が時間の残像とともに揺れていた――。
キーワード
修復者ナユタは時間城の指示を無視している
アメリアの鞄