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第七話 悪魔降臨

第七話 悪魔降臨


「私以外、誰もミカエルを召喚できない……」

私は緋夜・グレイヴン、15歳。冒険者中最弱の存在――永遠のE級だ。


―――

今、私は冒険者たちにとって最も価値がなく、最も簡単な迷宮――E級迷宮にいた。

目の前には、青い髪の女性が立っている。背中にはミカエルとよく似た、しかし漆黒の翼を広げている。

彼女は魔界から来た悪魔だ。


「でも私が死ねば、ミカエルは他の人に召喚されるんだよね」小さな声で言う。

「天使にとって人間の寿命なんて一瞬のことだろうし」

「そんなことより、魔界の話を聞かせて!」目を輝かせて悪魔を見つめる。


「人間と天使の関係が、ここまで疎遠になっていたとは……」彼女は静かに私を見つめ、ため息混じりに呟く。


「魔界に行ってみてもいい?」期待に胸を膨らませる。

「人間が魔界に入ることはできない。私たちはより高次元の存在だ」淡々とした返事。

「そうか……」がっかりしてうなだれる。

「せいぜい、私たちが降りてくるくらいだ」


彼女は黒い翼を広げた。

「私は嫉妬の罪――レヴィアタン(Leviathan)」

「この名を覚えておきなさい、人間」


「さて……」苛立った口調。

「早くミカエルを呼び出しなさい!」

最初からずっと催促している。


「いや、言った通り、もう彼女は召喚しない」強い口調。

「次はキャラメルの同類がいいな」服の中のキャラメルを見る。

「次の幻獣は四本尾かな?」


「ところで、ミカエルに何の用?」好奇心に駆られて尋ねる。

魔界と天界は隣接していると聞く。

「普段から会えるんじゃないの?」


「防護結界で隔てられている。簡単には接触できないわ」

「そうでなければ、定期的に騒ぎに行きたいところだけど」

そう言いながら、私の前に立つ。

「今の人間は悪魔も怖がらないのね……」

手を伸ばし、私の服の中からキャラメルを引きずり出す。


「待って!何する気だ!」

キャラメルが苦しそうにもがく様子に恐怖を覚える。

「もう一度言うわ、人間――」冷たい声。

「ミカエルを呼び出しなさい」


―――

街中では、黒い翼を背負った女性が迷宮の転送門からゆっくりと現れた。

「ここが今の人界か……」低い声。

「久しぶりだ……前回来たのはいつだったか覚えていない」

彼女はレヴィアタン、魔界の悪魔、七つの大罪の一つ――嫉妬の罪。


「おい!お前!」見張りの兵士が怒鳴る。

「お前のような女を通した覚えはない!」

「こっそり入ったな!」

手を伸ばして遮る。

「迷宮への不法侵入は罰金だ!」


「この人間、何を言っているの……」困惑した表情。

「また金か……こんな方法で人類を滅ぼすには時間がかかりすぎるわ」

周囲を見回す。

「おい!聞いてるのか!」兵士がさらに怒鳴る。

レヴィアタンの目に苛立ちが浮かぶ。


「出口塞がないでよ……」私が迷宮から出てくる。

「通れないじゃない」二人の対峙する様子を見ながら言う。

「ちょ、ちょっと、何があったの?」


「お前か!永遠のE級!」兵士が私を見る。

「この女を迷宮に入れたのはお前だろう!」

「規則違反だ、罰金は倍だ!」


―――

「最悪だ……」私は街を歩き、レヴィアタンが静かに後をついてくる。

「今日の魔石どころか、昨日キャラメルが拾った魔石で得た金まで全部罰金で取られて……」

まる二日分の努力が水の泡だ。


「キャラメル……」呟くように呼ぶ。

するとキャラメルが服の中から出てきて、肩に飛び乗った。

「にゃ」小さく鳴く。

「無事でよかった……」ほっと息をつく。

こっそり後ろの女性に視線を送る。


「人間の文明はここまで進化したのか……」

彼女は黒い翼を畳み、街を歩いている。

「全部壊したくなるわ」口元に笑みを浮かべる。

「おい、人間!」突然叫ぶ。

「そろそろミカエルを呼び出せ」


さっき、彼女はキャラメルを人質に取り、私にミカエルの召喚を強要した。

だが、迷宮内では召喚魔法が使えないことが判明した。

(だから今、街に出てきたわけだが……)

「だ、ダメだ……家に帰らないと召喚できない……」慌てて言う。

(こんな人通りの多い場所で天使を召喚したら……)


「はぁ……早く行け」苛立った声で促しつつ、周囲の人間を観察する。


(彼女は召喚魔法に詳しくないみたいだ……)

目尻で彼女を盗み見る。

ミカエルも人間界の様子に不慣れだと言っていた。

(この「情報格差」を利用しなければ!)

「キャラメル……」小声で呼びかけ、服の襟を開く。

キャラメルは合図を察知するや、すぐに中に潜り込んだ。


この国では、ほぼ全員が召喚魔法を使い、ペットや運搬手段としている。

(街中に幻獣がいっぱいいれば、少しは足止めできるかも……)周囲を見渡す。

キャラメルをしっかりと胸に抱きしめる。

「キャラメル。何があっても、僕が守るから」囁くように言う。


そして、深く息を吸い込み、勇気を振り絞って――全力で走り出す!

「こいつ……」レヴィアタンは立ち止まり、私が遠ざかる背中を見つめる。


―――

逃げるのは弱者の権利だ。

「それに私は冒険者中有名の『逃走王』なんだ!」

キャラメルを抱きしめ、人混みを縫うように走り続ける。

「はぁ……人が多いから、追いつけないだろう!」


しばらく走って、息を切らしながら速度を落とす。

「でも……彼女は私がミカエルを召喚できるとわかった……」

「悪魔には私たちに見えないものが見えるのか……?」


その時、地面に黒い影が広がる――翼の形をした影だ。


街中の幻獣たちが突然騒ぎ始めた。

人々はきょろきょろと周囲を見回し、全ての幻獣の視線は空の一点に集中している。

「逃げようだなんて……」黒い翼を広げた彼女が空中に現れ、冷たく私を見下ろす。

「人間め」


「しまった、飛べるんだった!」ミカエルは翼で飛ばなかったのに!

私は再び逃げ出す。


「まだ逃げる気?」翼を広げて追撃する。

道端の幻獣たちが彼女に向かって攻撃を開始する。

「邪魔!」手を振って攻撃を払いのける。


―――

私は家の中に飛び込み、ドアを「バタン」と閉めた。

「はぁ……はぁ……」ドアに寄りかかり、膝から崩れ落ちる。

キャラメルが服から顔を出し、私の前に立つ。

「キャラメル……」小さな声で呼ぶ。

「ここまで来れば、もう大丈夫だよね……」

「彼女に透視能力がなければ……」自嘲的に笑う。


しかし――

ドン──ドン──ドン──

背後のドアから、重いノックの音が響く。

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