第六話 悪魔現る
第六話 悪魔現る
「よし、今日も来たぞ!」私は興奮して叫んだ。
私は緋夜・グレイヴン、15歳だ。見た目は12、13歳くらいだが、立派な成人だ!
「にゃ!」三本の尾を持つ黒猫が肩に乗っている。
「キャラメル、応援してくれてるのか!」嬉しそうに抱き上げる。
キャラメルは私の最初の幻獣で、夜になると三本の尾が微かに光る。
「よし、今日も頑張るぞ!」やる気満々で言う。
「昨日は全く成果がなかったけど……」
キャラメルが拾ってくれた魔石のおかげで、空振りは免れた。
―――
私とキャラメルは迷宮を進んでいく。
「このままじゃE級迷宮も有料化されるらしい……」
魔石一つ取れなかったら、入場料だけで破産してしまう。
「今日こそは!」拳を振り上げ、自分を奮い立たせる。
その時、茂みから魔物が飛び出してきた。
「魔物……」警戒する。
「ウサギ?でもキツネみたいな尾が……」
魔物はいつも形容しがたい姿をしている。
「いいや、とにかく行くぞ!」短剣を構えて突進する。
魔物は軽やかに跳び、私の頭を踏み台にして飛び越えた。
「ちっ……」よろめくが、すぐに体勢を立て直し向き直る。
「今日のターゲットはお前だ!」決意に満ちた表情で叫ぶ。
キャラメルは退屈そうにあくびをし、私と魔物の戦いを眺めている。
―――
「は……は……」息を切らし、傷一つ負っていないウサギ魔物を睨む。
「強い……」歯を食いしばり、短剣を握り締める。
「全部避けやがって、しつこい奴だ……」額の汗を拭う。
「だが今日こそお前の命は終わりだ!」再び斬りかかる。
「まったく……見てられないわね」天から水の柱が降り注ぎ、魔物を貫いた。
「な……なんだ!?」呆然とする。
青い髪の女性が空中から優雅に舞い降り、漆黒の翼を広げて着地した。
「4時間もかけて魔物一匹倒せないなんて……」冷たい口調。
「弱すぎるわ」一瞥する。
「にゃ!にゃーん!」キャラメルが突然激しく威嚇し始めた。
「どうした、キャラメル?」慌てて抱き上げる。
「大丈夫か?」状態を確認する。
魔物の死体は黒い煙となり、空に消え、魔石だけが残った。
女性が腰をかがめ、魔石を拾うのをただ見ている。
「そ、それは僕の獲物だ!」慌てて叫ぶ。
「冒険者同士で獲物の横取りはダメだ!」
「あら、そう?」魔石を見下ろし、だるそうに言う。
「あげるわ」ぽいっと魔石を投げてきた。
「こんなもの要らないわ」
あたふたと受け取る。
(意外と良い人?)魔石を不思議そうに見つめる。
(前にこう言った時、他の冒険者は……)
思い出に耽る。
(待て、彼女は一体誰だ!?)ハッと我に返る。
「にゃー!」キャラメルは牙を剥き、彼女を睨み続ける。
(キャラメルがこんなことするなんて……病気かな?幻獣も病気になる?)
キャラメルは突然私の腕から飛び出し、前に立った。
「にゃ!にゃ!」私を守るように、警戒の眼差しで女性を見つめる。
「緊張しないで、子猫ちゃん」女性はキャラメルを見る。
「私たちは直接人間に手出しできないのよ」
急に鋭い口調になる。
「でもあなたは別。飼い主のそばにいたいなら、態度を改めた方がいいわ」
両者の間に緊張が走る。
「しゅ……」キャラメルは鳴きやみ、私の懐に戻るが、目は警戒を解かない。
私は状況が理解できずにいる。
「一体どういうことだ……」
(キャラメルが無事ならいいけど)こっそり安堵の息をつく。
突然、女性が目の前に現れた。
「そうだ、用があったわ」顔を近づけて言う。
「な、なんだ?」一歩下がる。
「お金なら持ってないよ!」急いで魔石をポケットにしまう。
「お金……?」嫌そうな顔。
「そんなもの要らないわ」
「最近の人間はどうかしてる。お金と物質のことしか考えてない……」
「それに魔物一匹倒すのに4時間もかかるなんて」呆れたように。
「4時間も見てたんだから……」呟く。
「退屈だったわ」
「うっ……じゃあ何の用だ?」不安になる。
(さっきの魔石を取り返すつもり?確かに彼女が倒したけど……)
だが!冒険者たるもの、ここで引くわけにはいかない!
彼女は指を私に向ける。
「あなた、ミカエルを召喚できるでしょ。呼び出しなさい」
「え……!?」私は凍りつく。
―――
「彼女は田舎に帰りました」真面目な顔で答える。
(またミカエルを探す人か……)もう慣れた。
「この街にはいませんよ、会えないと思います」定型文で返す。
「何を言ってるの?」呆れた表情。
「天界も田舎ってこと?」
瞳が大きく揺れる。
「人間はそう思ってるの?」
彼女の背中の黒い翼を見る。
(ミカエルはいつも翼を隠していた……)
ミカエルの翼は真っ白で美しかったが、触らせてくれなかった。
思い出に耽る。
「つまり――大天使ミカエルを召喚しなさい」厳しい口調。
(黒い翼……もしかして……)恐怖の眼差し。
「あなたには彼女との通路がある」私をじっと見る。
「あなたはもしかして……魔界の……」声が震える。
「悪魔!」目を輝かせて見つめる。
「そうだけど?」平然とした返事。
「僕、ずっと魔界に憧れてたんです!」尊敬の眼差し。
「悪魔も人間みたいな見た目なんだ!変な形してるのかと思ってた……翼もあって、しかも黒いんだ!」
言いながら彼女の周りをぐるぐる回る。
「何してるの……早くミカエルを呼び出しなさい!」イライラした声。
「いや」立ち止まる。
「もう彼女を召喚しないと決めたんだ」
「ミカエルが僕のそばにいるのは危険すぎる」声が落ちる。
「もっと強い人が彼女を召喚できるといいな……」
「何言ってるの?」冷たい声。
「通路は一つだけ」
私はきょとんとする。
「一度確立したら、あなた以外誰も彼女を召喚できない」