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最弱な俺と最強の召喚獣  作者: 若君
第一章 毎週火曜日更新。
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第十九話 自責


第十九話 自責


「どうか私の背後に隠れていてください」ラファエルの声は相変わらず落ち着いていた。恐るべき悪魔を前にしても。

彼の、さっき悪魔の力で粉砕された腕のあった場所に、柔らかな白い光が湧き出し、新しい腕が瞬時に形を結び、元通りになった。

(ラファエルは戦闘能力なんてないのに…)緋夜・グレイヴンは自分を守ろうとする天使の背中を見て、恐怖で心臓が締め付けられる。

彼の視線は、ラファエルの前方に立つ、底知れぬ悪意と威圧を放つ存在から離せなかった——腰まで届く漆黒の長髪、地獄の溶岩のような深紅の瞳、今はラファエルを極度に不愉快そうな眼差しで睨みつけているその悪魔を。

彼女は傲慢の罪、ルシファーだ。


「なぜ…なぜミカエルが召喚できないんだ?ミカエル…ミカエル…!」緋夜の声は神経質な震えを帯び、彼が最も信頼し、最も強大だと思っている天使の名を、瀕死の者の息遣いのように速く、何度も何度も呼び続ける。

「ミカエルはどうしたんだ?ラファエル!」彼は焦ってラファエルの裾を引っ張りながらも、目はルシファーの手の中の瀕死のキャラメルに釘付けだった。

「あなたは今、ミカエルを召喚できません」ラファエルの答えは断固として明快で、彼の最後のわずかな望みを断ち切った。

「キャラメルを幻獣界へ送り返してください。彼は大丈夫です」ラファエルの声には安堵させる力があった。


「わ、わかった」緋夜は深く息を吸い込み、両手を近づけようとした。

今度は、ルシファーが妨害しているようには見えなかった。震える両手を合わせ、精神を集中させることに成功した。

ルシファーの手の中、キャラメルの弱々しい姿が瞬き始め、電波状態の悪い映像のように、やがて完全に消え去った。安全に幻獣界へ送り返されたのだ。

ルシファーは自分の空っぽになった掌を見つめたが、驚きも怒りもなく、ただ退屈そうな無関心が一瞬浮かぶだけだった。


「我が探しているのは…お前ではない、ラファエル」ルシファーの冷たい声が響く。深紅の瞳孔がラファエルの、精緻でありながらも雌雄判別困難な顔を捉える。

「ミカエルを呼び出せ」命令に疑いの余地はない。

「ミカエルは今、来ることができません」ラファエルは淡々と事実を述べた。

「ルシファー、魔界へお戻りください」彼の碧色の瞳に、穏やかな外見とは裏腹な、鋼のような強固な意志が初めて宿り、目の前の悪魔を直視する。


「ふぅ~ん」ルシファーは怠惰な唸りを一つ漏らし、手を引っ込めると、気ままに長い指を弄んだ。

「お前がそう言うなら…この人間を直接地獄へ連れて行くとしよう」彼女の深紅の視線が緋夜を掠めた。それは物を見るような審査の眼差しだった。

「此処に留まって力が制限されるのは…気分が悪い」彼女は意味ありげにラファエルを見た。相手も同感であろうと信じて。


「何とかして、彼にミカエルを召喚させる方法はある」ルシファーは優雅に立ち上がった。彼女の下にあった権力の象徴である簡素な玉座が煙のように消え去る。

ラファエルの背後に隠れ、真っ青な顔をした緋夜を見て、その口調は面白い玩具を論じるかのようだった。

「以前、何人かの人間を捕まえ、天使を召喚させようとしたが、残念ながら皆失敗だった」深紅の唇に残酷な弧が浮かぶ。

「天使を召喚できる人間に、ようやく巡り会えたというのに、見逃せるわけがない」

「彼に天使たちを、一人残らず…」彼女の瞳に狂気の光が宿る。

「魔界へ召喚させてやる!」


「彼が利用価値を失ったら…」ルシファーの声は柔らかくも、一言一言が心を抉る。

「始末してやろう」ついでに通路も閉じる。

「そうすれば、お前たち全員を永遠に魔界に閉じ込められる」彼女は勝ち誇った完璧な微笑みを見せ、その邪悪な最終計画を鮮明に描き出した。


ラファエルはその言葉を聞くと、わずかに身を乗り出し、母鳥が雛を庇うように、緋夜をもっと厳密に自分の背後に隠した。

「ラファエル…」緋夜は天使の強固な背中を見て、心は罪悪感と恐慌でいっぱいだった。

「わざと悪魔を召喚したんじゃないんだ!本当に、本当にお前たちを呼び戻したかったんだ!誓う…」彼は支離滅裂に弁解し、声には泣き声が混じっていた。


「存じております、緋夜様」ラファエルの声が届いた。相変わらず馴染み深い穏やかさだが、かすかに気づきにくい重さと後悔が混ざっていた。

「私が…以前あなたにお伝えした言葉が、あまりにも率直すぎました」

「申し訳ありません、緋夜様」彼はわずかに首を傾げ、碧色の瞳を優しく彼に向けた。その眼差しは寛容で誠実だった。

「たとえ私が戦いを得意としなくとも、たとえ私が十分に強くなくとも」その声は落ち着いていながらも力に満ちていた。

「私は必ず、あなたをお守りします」その瞳に宿った決意は、磐石のようだった。


「ラファエル…」緋夜の胸が震えた。複雑で言葉に表せない感情が込み上げてきた。温かさ、罪悪感、そして深い無力感。

彼は猛然と、虎視眈々と狙う悪魔の方へ視線を戻し、諦めきれない気持ちと怒りが頭に上った!

全身の力を振り絞って、再び両手を強く合わせた!

「くそっ!帰れ!」彼は声を限りに叫んだ。全ての恐怖と絶望を吐き出そうとするかのように。


しかし、奇跡は起こらなかった。ルシファーは相変わらず余裕たっぷりにそこに立ち、口元に嘲笑の笑みを浮かべ、裾すら微動だにしなかった。


刹那!

ルシファーの姿が魑魅魍魎のようにその場から消えた!ほぼ同時に、彼女はラファエルの眼前に現れている!

その完璧でありながら破滅的な力を秘めた手が、稲妻のように伸び、正確にラファエルの精緻な顎を掴んだ!

一瞬の躊躇もなく、五本の指が強く締め付けられる!

「ボッキリ――!」頭皮が痺れるような鈍い音!

ラファエルの頭が、巨力に握り潰されたスイカのように、一瞬で爆ぜた!

首から上の部分が完全に消滅!首のない胴体が衝撃で激しく揺れ、今にも倒れそうだ!


「ラファエル――!」緋夜は目を見開き、肺腑を抉るような悲鳴を上げ、自分が目にした恐ろしい光景を信じられなかった!


しかし、さらに驚愕すべき光景が起こった!

首を失ったその胴体が、倒れかけたその瞬間、奇跡的に踏みとどまったのだ!

血が噴き出すことはなく、切断面は柔らかな純白の光を放っている。

その無頭の身体の手の中に、聖なる光を煌めく短剣が虚空から具現化していた!


「スパッ!」刃光が一閃!疾風の如く速い!

ラファエルの首のない身体が、常識に反した流れるような動きで、短剣を振るい、正確にルシファーの凶行を働いた手へと斬りつけた!

「ガシャッ!」幾本かの長く白い指が切断音と共に落ちた!


ルシファーはわずかに眉を上げ、瞬間的に数本の指を失った自分の掌を見つめたが、痛みの表情はなく、ただ邪魔をされたような不快感が微かに浮かぶだけだった。

彼女は軽く欠けた手を動かすと、切断面に肉芽が目に見える速さで狂ったように蠢き、増殖し、瞬く間に元通りになった。まるで最初から傷ついていなかったかのように。


一方、ラファエルの無頭の胴体は、相変わらずしっかりと立ち、切断面に白い光が流れていた。

続いて、光が大いに輝き、新しい頭が神の奇跡のように急速に凝縮し、形を成した!

碧緑の長髪、精緻な五官。まさしくラファエルだ!

再生したラファエルの顔には痛みの表情はおろか、何の感情の動きもなく、大理石の彫像のように冷たかった。

彼の碧色の瞳にはかつての優しさはなく、ただ絶対的な理性と冷たい戦意だけが宿っている。手にした短剣をしっかりと掲げ、刃先を前方のルシファーへと真っ直ぐ向け、警戒に満ちた姿勢を取った。


「ふっ」ルシファーは軽く笑い、再生したばかりの指を弄びながら、少し退屈そうな口調だった。

「相変わらずつまらん奴だな」深紅の瞳孔に一瞬、計算めいた光が走る。

「しかし、ベルゼブブはお前を見たら、さぞかし喜ぶだろうよ」暴食の罪ベルゼブブは、ラファエルに特別な感情を抱いている。

「魔界へ戻れ、ルシファー」再生したラファエルが口を開く。その声は氷に覆われた湖面のようで、微動だにせず、その冷酷な気質は普段とは別人のようだった。


ルシファーの顔の侮蔑が瞬間に凍りつき、代わりに氷のような冷たさが広がった。

彼女の深紅の両眼が危険なほど細くなった。

「我に命令するな、ラファエル…」その声は急激に冷たくなり、厳冬が訪れたかのようだった。一言一言が刺すような寒さと絶対的な権威を帯びている。

「この世に…」彼女はゆっくりと宣言した。

「我に命令する資格のあるものなど…存在せん」


---

ルシファーの姿が再び捉えどころのない残像となる!

ラファエルが反応する間もなく、圧倒的な恐るべき力が彼を床へと叩きつけた!

その衝撃で床が軋みを上げる!


「ラファエル…!」緋夜は恐怖で縮こまり、巨大化した黒糖の背後に無力に隠れ、わずかな偽りの庇護を求めていた。

「くそっ!なぜ…」彼は無駄に両手を叩き、追放の魔法を発動させようとするが、蟷螂の斧の如く、ルシファーには全く影響を与えなかった。

「全部俺のせいだ…俺が…俺が悪魔を召喚しなければ…」絶望の涙が自責と混じり合って彼の目からこぼれ落ち、深い自己嫌悪に陥っていた。


「緋夜様、そう思ってはいけません!」床に押さえつけられたラファエルは、ルシファーの掌に再び頭を覆われていながらも、彼に召喚の原則を伝えようとしていた!

「あなたが自責と否定に陥れば」ラファエルの声にはかつてない切迫感が込められていた。

「私も…完全に消えてしまいます!」その言葉は雷鳴の如く、緋夜の耳元で炸裂した!


しかし、警告は遅すぎた。

ラファエルの顔を覆うルシファーの手に、再び破滅的な力が爆発する!

「ボッ――!」鈍い爆裂音が再び響く!

ラファエルが再生したばかりの頭が、再び無情に握り潰され、爆ぜた!白い光が迸る!


「威力はやはりかなり弱められているようだな…」ルシファーは傷一つない自分の掌を見つめ、武器の性能をテストしているかのような、不満気な評価を口にした。


「こ…これはどういう意味だ?ラファエル…?」緋夜は呆然と、頭を失い、再び白い光に包まれたラファエルの胴体を見つめ、彼が最後に発した警告の意味を理解できなかった。


彼の心の中に重い自責が墨のように広がった瞬間——

異変が突如として起こった!

白く光るラファエルの無頭の胴体は、あの聖なる短剣もろとも、透明になり始めた!

水で薄められた墨のように、輪郭が急速にぼやけ、消えていく!

「それでは、魔界でまた会おう、ラファエル」ルシファーは彼の次第に薄れ、完全に消え去ろうとしている身体を見つめ、深紅の唇に意味深長で、勝者の余裕に満ちた微笑みを浮かべた。

「覚えておけ」彼女の声は悪魔の囁きのように、虚ろな光の影を貫いて響いた。

「ミカエルによろしくと、伝えてくれ」


光は完全に弱まり、消え去った。

ラファエルの姿は、彼の最後の気配さえも、小屋から完全に消え失せた。

「ラ…ラファエル…?」緋夜は相変わらず目の前の出来事を信じられず、呆然とラファエルが消えた場所を見つめ、頭は真っ白で、魂の一部も抜け出たかのようだった。


ルシファーはゆっくりと背筋を伸ばし、優雅な豹のように、冷たい視線を再び緋夜へと向けた。

「ミャァァァァ——!」巨大化した黒糖が耳を劈く咆哮を上げ、全身の毛を逆立てて、緋夜の前を死守し、四本の尾を鋼の鞭のように立てて、最後の抵抗を示す。

「黒糖…」緋夜は無意識に震える腕を伸ばし、この最後の相棒を抱きしめようとし、わずかな慰めを求めようとした。

しかし、彼の小柄な体は、巨大化した黒糖を抱きしめることすら、無理で無意味に思われた。


(自責すら許されない…俺は一体…何ができるんだ?)底知れぬ恐怖が冷たい毒蛇のように彼の心臓を締め付け、死の化身のような悪魔がじりじりと近づくのを見て、緋夜は骨の髄まで凍りつく絶望を感じた。

(ミカエル…ミカエル…助けてくれ…)彼は魂の奥底で声なき悲鳴を上げた。

(天使は…弱者の祈りに応えるんじゃないのか?)

(なぜお前は出てこない!なぜ俺を見捨てるんだ!)


その時、黒糖が決然とした怒りの声を上げ、緋夜の無力な抱擁を振りほどくと、巨体が放たれた矢のように、相討ち覚悟の勢いで、死を恐れずルシファーへと突撃していった!


「ふっ、身の程知らずとはお前のことだな、子猫め」ルシファーは軽く笑い声を上げ、その口調は残酷な愉悦に満ちていた。

彼女は足すら動かさず、ただゆっくりと、猫が鼠を弄ぶような余裕を持って、白くも破滅をもたらすその手を上げた。


緋夜の心臓はその瞬間、止まりそうになった!

彼はその上げられた手を見て、ただ一つの念頭しかなかった——黒糖を守れ!何があっても!守るんだ!


「パンッ――!」甲高い拍手の音が、死の静寂に包まれた小屋の中に雷鳴のように轟いた!

緋夜だ!彼はどこからともなく湧き上がった決死の勇気で、残りの全身の力を振り絞り、両掌を強く打ち合わせたのだ!


その拍手音と共に、ルシファーへと突進していた巨大な黒糖の姿が突然止まり、一瞬にして虚ろに透明になり、消しゴムで消された鉛筆画のように、ルシファーの目の前で完全に消え去った!強制的に安全な幻獣界へ送り返されたのだ!


「はあ…はあ…はあ…」緋夜は激しく息を切らし、まるで全ての生命力を使い果たしたかのように、両手は無力に体の横に垂れ、体はふらついていた。


今、この狭く荒れ果てた部屋には、二人だけが残された。

一人は冒険者ギルドで公認の最弱——「永遠のE級」緋夜・グレイヴン。

もう一人は、片翼ながらも無限の傲慢と破滅の気配を放つ悪魔王——傲慢の罪、ルシファー。


「そいつも送り返したか~」ルシファーは一瞬で空っぽになった前方を見つめると、視線を独り立ち、今にも倒れそうな緋夜へと移した。深紅の眼に興味津々の光が宿る。

「これで」彼女はゆっくりと歩み出し、優雅な捕食者が獲物に近づくように。

「お前を守る者など、完全にいなくなったな?」その微笑みは、緋夜の目には、最も深い悪夢よりも恐ろしく映った。


「たまに、お前のような…純真で愚かな人間に出会うことがあるな」ルシファーの声は人間性を見抜いた嘲笑を帯び、死の静寂の中に鮮明に響き渡った。

「いつも、弱い者を傷つけるより、自分が全ての苦しみを背負う方がましだと思い込んでいる」彼女の足取りは急かず遅からず、一歩一歩が緋夜の張り詰めた神経を踏みしめる。

「しかしな」彼女は緋夜の目の前で立ち止まり、見下ろすように彼を見つめた。その紅い瞳は深淵のようで、彼を飲み込もうとしている。

「結局のところ…気づくことになる」その声は急に冷たくなり、氷の柱が心臓を刺すようだった。

「自分には…何一つできはしないということをな!」


緋夜は深々とうつむいた。体は恐怖と相手の言葉で微かに震えている。

彼は理解していた。自分が悪魔に対峙するのは、蟻が龍に対峙するのと同じで、勝ち目などないと。

だが少なくとも…少なくともキャラメルと黒糖は守れた!自分の無能さ故に、二度と彼らを傷つけたり、死なせたりしなくて済む!

(これで…十分だ…そうだろうか?)

(これが…俺にできる最高の結果だ…)彼は握りしめた拳の爪が掌に深く食い込み、鋭い痛みが走り、自分の存在を思い知らせた。


彼は猛然と顔を上げた。歯はまだガチガチ震え、体は震えていたが、その深い色の瞳には、窮地で最後の浮き輪を掴んだ決然とした、かすかだが異常に頑丈な炎が燃え上がっていた。

「お前…俺を殺せないんだろ?」彼の声は緊張で震えていたが、はっきりとルシファーの耳に届いた。

(もし彼女がここで俺を殺せば…人界に来るための通路を失う。)


(そして彼女が探しているミカエルも…此処へ召喚できなくなる!)

(これで…こうして膠着状態を続ければ…もしかしたら…それが最善の選択だ…)

彼は全身の力を込めて、この推測と覚悟を瞳の奥の決意に変え、一歩も引かずにルシファーの底知れぬ深紅の魔瞳を見据えた。


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