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最弱な俺と最強の召喚獣  作者: 若君
第一章 毎週火曜日更新。
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第十八話 絶望

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第十八話 絶望


緋夜・グレイヴンは冷たい床に跪いていた。極度の恐怖で身体が制御不能に激しく震えている。

必死に両手を合わせようとする。あの馴染み深い召喚の印を結ぼうとして。しかし、見えない力が頑丈な枷のように彼の腕を縛りつけ、どんなに力んでも指先は一向に揃わない。ただ空気の中で無駄に、神経質に震えるばかりだった。


「我を召喚した以上…」彼の前方に立ち、息詰まるような重圧を放つ悪魔が冷たく口を開いた。漆黒の夜のような長い髪、凝血のように深紅の瞳、そして背中には片翼ながらも威圧感満載の巨大な黒い翼。

「簡単に追い返せると思わぬことだな」その声は、氷が鼓膜を削るような冷たさだった。


「合、合掌しないと…」緋夜の声は震えがひどく、絶望的な泣き声を帯びていた。辛うじて視線を上げるが、相手の裸足の、木の床に立つ足首あたりまでが精一杯。それ以上、恐るべき存在を覗き見る勇気はない。

「ミカエル…ミカエルが出てこられないんだ…」声はか細く、蚊の鳴くような大きさだった。


「ふぅ~ん?」玉座の上のルシファーが鼻腔から、怠惰でありながら危険な含みを持った軽い唸りを漏らした。深紅の瞳孔が、地上で蟻のように震える少年を見下ろす。

「召喚魔法とは…」その口調は、全てを見透かしたような嘲笑を含み、無知な子供を教え諭すかのようだった。

「本質的には、敬虔なる祈りと思念こそが法則を動かすのに十分なのだ」言外の意味は、手の形など補助に過ぎず、むしろ人間が自らに課した儀式的なものだということだ。


「だ、ダメだ…」緋夜の声は恐怖で砕けていた。

「俺…召喚できない…」目をぎゅっと閉じ、頭の中でミカエルの名を狂ったように呼び続ける。彼女の金色のショートヘア、意志強固な顔立ちを思い描いて…しかし、心の通路は完全に塞がれているようで、何の反響も返ってこない。

(どうしよう…どうしよう…)巨大な恐慌が、冷たい潮のように一瞬にして彼を飲み込んだ。

ミカエルは今の彼にとって唯一の救いの綱なのに、それが全く感じられない。まるで最初から存在しなかったかのように!


「そうか…」ルシファーの深紅の瞳に、一瞬、苛立ちと残酷な興味が走った。

彼女はゆっくりと片腕を上げる。その肌は最高級の磁器のように透き通るように白い。その腕が優雅に、地上に跪く少年へと伸びる。

「どうやら、少し痛い目を見せてやらねば、ミカエルも出てくる気になるまいな」その口調は淡々としており、これから行う実験を述べているかのようだった。深紅の瞳孔は緋夜をしっかりと捉え、猫が鼠を弄ぶような嘲りを帯びている。


突然!

鋭い風切音と共に、横から電光石火の勢いで黒い影が襲いかかった!

「ズシャッ——!」漆黒の鋭い鉤爪が、ルシファーの伸ばした腕を容赦なくかき切る!

鮮血が完璧な肌から一瞬にして滲み出た。しかし不気味なことに、その血は滴り落ちず、高温に触れたかのように瞬時に蒸発し、空気中に消え去り、ほのかな硫黄の匂いだけを残した。


「ふっ…」ルシファーはわずかに首を傾げ、冷たい視線が実体化した刃のように、横で急激に巨大化しつつある黒猫——**黒糖**(くろとう)へと射られる!

今の黒糖は、敏捷な豹ほどの大きさに膨れ上がり、四本の漆黒の尾が不安そうな毒蛇のように、その背後で危険に揺れ、逆立ち、喉の奥から威嚇の低いうなり声を上げていた。

「お前、随分と図々しいな」ルシファーの声には怒りはなく、ただ骨の髄まで凍りつくような平静さ、嵐の前の静けさだけが漂っていた。

その眼差しは、腕に一瞬にして癒え、痕一つ残さなかった傷よりも冷たかった。


「ニャァァァ——!」(この人間から離れろ!)

黒糖の巨大な体が緋夜の前に立ちはだかり、鋭い牙を剥き出し、耳を劈くような咆哮を上げて、魔王に怯むことなく対峙する。

「黒糖…!」緋夜は驚愕して顔を上げ、巨大化した黒糖が自分の前を守っているのを見て、恐怖と心配で心臓が高鳴った。


「たかが幻獣が…」ルシファーの口元に侮蔑の笑みが浮かぶ。

彼女は黒糖をまともに見ることさえせず、さっき攻撃されたばかりの、今は無傷の腕を気ままに上げ、虚空を軽く一撫でした。

無形の、圧倒的で恐ろしい力が瞬時に黒糖の巨体を捉えた!


「ドカン!!!」轟音が響く!

黒糖は悲鳴を上げる間もなく、その力で壁めがけて思い切り叩きつけられた!

壁が激しく震え、埃がぼろぼろと落ちた。

巨大化した黒猫はぐったりと床に滑り落ち、苦しそうな呻きを一つ漏らすと、急速に元の大きさに縮み、弱々しく息を切らした。


「黒糖!」緋夜は肝を潰すような叫び声を上げた。


「ミャッ!」その時、相変わらず小さな**キャラメル**が、緋夜の背後から躊躇いなく飛び出してきた!

その小さな体は極度の恐怖で微かに震え、四本の脚が床をしっかりと掴み、背中の毛が総毛立っていたが、それでも勇敢に緋夜の前に立ち、無敵の魔王に向かって鋭い威嚇の声を上げる!

「ミャァァァ——!」(彼に手を出すなら俺を倒してみろ!)その幼くも決然とした鳴き声は、静まり返った部屋で一層悲壮に響いた。


ルシファーの破滅をもたらす手が再び上がるのを見て、緋夜は考える間もなく、猛然と飛び出し、自分のか細い体でキャラメルをしっかりと庇った!

「キャラメル!」彼はキャラメルを完全に自分の下に隠し、全身の力で叫んだ。

「キャラメルを傷つけるな!」彼は猛然と顔を上げ、歯は恐怖でガチガチ震えているにもかかわらず、全てを賭けた、絶望的な決意に満ちた眼差しで、玉座の上に立つ冷たくも絶美な悪魔の顔を直視した。


ルシファーは少年の、保護欲に満ち、涙で濡れながらも異常に輝く瞳を見て、動作をわずかに止めた。

(この世界に力が削られて随分と弱くなったか…)彼女の深紅の眼底に、かすかな思案が掠め、ゆっくりと上げた手を下ろした。

「では…」彼女はより楽な立ち姿勢に変え、改めて口を開いた。口調は相変わらず全てを掌握した傲慢さを帯びている。

「ミカエルを呼び出せ。それとも…」深紅の瞳が緋夜を一瞥する。

「他に召喚できる者がいるのか?」これが最後のチャンスだ。


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緋夜は再び地面に跪き、目をしっかりと閉じ、あらゆる雑念を払い、全精神を最も敬虔な祈りに注ぎ込んだ。

キャラメルと、辛うじて起き上がった傷だらけの黒糖が、忠実な衛兵のように彼の足元にぴったりと寄り添い、警戒した目で玉座の魔王を睨みつけている。


ルシファーは立つのに飽きたのか、いつの間にか虚空中に簡素ながらも王者の風格を放つ石の玉座を召喚し、だらりと腰を下ろしていた。

彼女は狭く貧しい人間の住まいを見渡し、明らかな不満を含んだため息を一つ漏らした。

「こんな場所に留まるのは…本当に不便だ」深紅の瞳が、相変わらず何の動きもない地上の少年を一瞥し、彼女の忍耐力は少しずつ削られていた。


「言っておくが」彼女の冷たい声が静寂を破った。

「たとえ今、お前が我を送り返すことに成功したとしても…」口元に邪悪な微笑みを浮かべる。

「一度通路が開かれれば、我はいつでもお前という『錨』(いかり)を通じて、再び此処に降臨できる」

「我ら悪魔は…」彼女は強調し、その口調はルールに対する軽蔑に満ちていた。

「あの偽善的な天使どものように、『人間の意思を尊重せよ』などという退屈な規定を守る必要はないのだ」深紅の視線が、恐怖で微かに震えながらも、どうしても合わせられない緋夜の両手に落ち、その目には隠そうもない嫌悪が浮かんでいた。

「特に、あの合掌して祈る仕草は、まことに…吐き気がする」


この時、緋夜の心は底知れぬ恐怖と焦慮に喰われていた。

(ミカエル…ミカエル!聞こえるか?お願いだ、応えてくれ!)心の奥底で天使の名を狂ったように呼び続ける。繰り返し繰り返し、まるで溺れる者が最後の藁にすがるように。

(どうしよう?ミカエルは召喚できない!なぜ…なぜこうなんだ…)絶望が冷たい蔓のように彼の心臓を締め上げ、ほとんど窒息させそうだった。

そっと目を細め、震えながら玉座の上に立つ不気味な気配を放つ存在を盗み見た。


突然、温かく、ふわふわした小さな肉球が、彼の冷たく震える手の甲にそっと触れた。

「キャラメル…」彼はほとんど声にならない呟きと共に、足元にぴったり寄り添い、体で微かな支えを与えてくれるキャラメルを見下ろした。

反対側では、黒糖が弱々しく伏せていて、傷を負っているにもかかわらず、その猫目は一瞬たりとも緩めることなく、鋭く悪魔を凝視し、警戒と敵意に満ちていた。

「黒糖…」彼は彼らが言葉にしない守りを感じ取り、崩れそうだった恐怖が不思議とわずかに和らいだ。

手を伸ばし、二匹の猫の柔らかい毛並みをそっと撫で、微かな勇気を汲み取った。


再び目を閉じ、精神を集中させ、より強くミカエルを呼んだ。

しかし、心の向こう側は、相変わらず死の静寂だった。

(なぜ…なぜ彼らが突然消えてから、完全に彼らとの繋がりを失ったんだ?基本的な感応すらできなくて…)無力な疑問が再び浮かぶ。

(確かに…あの時ラファエルに『強くなれない』って言われた時は、世界が崩れたような気がした…あの絶望感…)拳を握りしめ、爪が掌に深く食い込んだ。

(でも、それと召喚契約そのものに何の関係があるんだ?)深い困惑と無力感を覚えた。

(彼らの強さは生まれつきのもの、俺の弱さも決まっている…それが召喚契約に影響するなんてことがあるのか?)この問いに、彼は答えを見つけられなかった。


「時間だ」前方から悪魔の冷たい宣告が響いた。まるで弔いの鐘のようだった。

緋夜の身体は一瞬で硬直し、血が刹那に凍りつくかのようだった!

さらに恐ろしい光景が起こる!キャラメルの小さな体が、予兆もなく、重力に逆らって浮き上がったのだ!

「キャラメル!」緋夜は恐怖のあまり叫び声を上げ、心臓が喉から飛び出しそうだった!

キャラメルは無形の力に引っ張られ、まっすぐ玉座の上のルシファーのもとへ飛んでいく!

彼女の細い指が気ままにキャラメルの首元の皮を掴んだ。哀れな小猫は彼女の手の中で無駄にもがき、恐怖に怯えた鳴き声を上げる。


「どうやら」ルシファーの深紅の唇が残酷で愉悦的な弧を描く。

「邪魔なペットを一匹始末してやらねば、ミカエルを呼び出す気にもならんようだな」彼女の言葉が終わるか終わらないうちに、キャラメルの体が急に硬直した!

見えない巨手にぎゅっと握り潰されたかのように!骨が耐え切れない微かな音を立てた!

激しかったもがきは一瞬にして苦痛に歪んだ痙攣と引きつりに変わった!

「ニャ…ウゥ…ウゥゥ…!」キャラメルは悲鳴ともわからない変調した叫びを上げ、小さな体は押し潰されて変形し、目玉が苦しそうに飛び出した!


「やめろ——!キャラメルを!」緋夜は目を見開き、涙が決壊したように溢れ出た!

彼は跪いたまま、ほとんど這うように前へ進み、肺腑を抉るような懇願を叫んだ。

「やめてくれ!お願いだ!ミカエルを呼ぶ!必ず呼ぶから!お願いだ、キャラメルを放してくれ!」

しかし、玉座の上の悪魔は、ただ鑑賞するかのような微笑みを浮かべて、冷ややかにこれら一切を見つめるだけで、手を休める気配は微塵もなかった。


「ミャァァァ——!」怒りと決意に満ちた咆哮が響いた!

もとは虚脱していた黒糖が、キャラメルの瀕死の危機に刺激され、再び驚異的な力を爆発させた!

その体は再び急激に膨れ上がり、豹ほどの大きさに!四本の尾は鋼の鞭のように乱れ狂い、鋭い爪が木の床に深い傷跡を刻む!

黒糖は緋夜の前に立ちはだかり、ルシファーに向かって耳を劈く咆哮を上げ、最後の突撃を仕掛けんと構えた!


「ふん」ルシファーは巨大化した黒糖を軽蔑的に一瞥し、深紅の瞳孔に危険な光が走った。

「再び我に向かって爪を剥いてみろ、子猫め」その声は地獄から来たもののようだった。

「さもなくば、今すぐお前と奴を共に消し飛ばしてやる」その笑みは、破滅的な愉悦に満ちていた。


「ニャッ!」黒糖は一歩も引かず、戦意に満ちた低いうなり声を上げ、爪の下から木屑が舞った。


「ミカエル!ミカエル!ミカエル——!」緋夜は絶望的に目を閉じ、命の最後の力で心の中で狂ったように叫び続けた。涙と汗が彼の顔を濡らす。

しかし、応えたのは、キャラメルがますます弱まり、ほとんど聞こえなくなっていく苦痛の呻きだけだった。

(助けて!ミカエル!お願いだ!早くキャラメルを助けてくれ!)魂の奥底で声なき悲鳴を上げた。ミカエル…一体どこにいるんだ?

「うっ…」彼は絶望的に泣き叫び、巨大な無力感が彼を完全に飲み込んだ。彼に一体何ができるというのか?


キャラメルの息が完全に途絶えんとする寸前、黒糖が死を賭けた一戦を挑もうとした千鈞一髪のその時——

「ラファエル」緋夜はほとんど無意識に、最後のわずかな希望を込めて、別の名を口にした。


刹那!

穏やかでありながら揺るぎない神聖な光が、小屋に充満する濃密な闇と邪悪な気配を、予告なく引き裂いた!

光の中心で、純白無垢の翼が優雅に広がる。

柔らかな碧緑の長い髪、雌雄判別困難な精緻な顔立ちの天使が、煌めく光の塵を伴い、絶望に満ちたこの空間へとゆっくりと降臨した。

「あなたの召喚に応え、大天使ラファエル」穏やかで落ち着いた声が、焦がれた心の田に清泉が流れるかのようだった。


ラファエルは屋内に降り立つと、碧色の瞳がまず場内を一掃し、即座に玉座の上に立つ戦慄を覚えさせる邪悪な存在と、彼女の手中でかすかな息をしている瀕死のキャラメルを捉えた。


「ラファエル…!」緋夜は救世主を見たかのように、涙で霞んだ目でその緑の影を見つめ、声は詰まって崩れていた。

「キャラメルが…キャラメルが…!」彼はルシファーの手を指さし、悲痛のあまり言葉が続かなかった。

ラファエルの視線がキャラメルに向けられ、碧色の瞳に一抹の痛みが走る。

彼は玉座の魔王に向き直り、口調は落ち着いているが、疑いを許さない強固さを帯びていた。

「ルシファー、お前の望み通り我は現れた」

「その無実の幻獣を」ラファエルはルシファーに片手を差し伸べ、卑屈にも驕慢にもならない姿勢で。

「我が主君にお返し願おう」


玉座の上のルシファーは、深紅の瞳孔でラファエルの差し出した手を一瞥しただけであった。

何の予兆もなく!

「スパッ——!」無形の、鋭利極まりない力が虚空を切り裂く!

ラファエルが差し出したその手が、前腕のあたりから綺麗に切断された!

切断された腕は、牽引を失ったように、床にぱたりと落ちた!

不気味なことに、切断面から血が噴き出すことはなく、落ちた前腕も切断面も柔らかな白い光を発していた。その切断された腕は、日光に当たった氷のように急速に透明になり、ついには純白の光の粒へと変わり、空気中に消え去り、痕跡すら残さなかった。


「ラファエル…!」緋夜は彼の背後でこの恐ろしい光景を恐怖の眼差しで見つめ、心臓が止まりそうになった。


「ご心配には及びません、緋夜様」ラファエルの声は相変わらず穏やかで落ち着いており、まるで腕を切断されたのが自分ではないかのようだった。

彼は消えた腕すら見ず、ただ残った無傷の手で、鏡のように滑らかで微光を放つ切断面をそっと撫でながら、振り返って緋夜に安心させるような、やや幻想的な微笑みを見せた。

「大丈夫です」その表情は平然としており、痛覚がないかのようだった。


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