第十七話 魔界
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**第十七話 魔界**
「レヴィアタン」だるそうでいくぶん遊び心を帯びた声が響いた。
話し手は、深夜の絹のような深紫色の長い髪を持ち、深淵のような紫の瞳が帰ってきた人影を興味深そうに見つめていた。彼女は暴食の罪を象徴するベルゼブブ。今はのんびりと傍らにもたれかかっている。
巨大な魔物の甲羅の上にだらりと横たわり、ゆらゆらと戻ってくるレヴィアタンを見て、ベルゼブブの背中にある巨大な黒いコウモリの翼がゆっくりと広がり、薄暗い光の下に影を落とした。
「人間界を一回りして、どうだった?」彼女の口元には探るような笑みが浮かんでいた。
「まあまあってとこかな」レヴィアタンは気ままに、海のように紺碧の長い髪を弄りながら、気ままな姿勢だった。
「あの場所は…」彼女は軽く笑った。かすかに気づかれない軽蔑が混じっている。
「あまりにも安逸すぎるんだよね」まるでつまらない遊園地を評価しているようだった。
「でもまあ…」彼女は話の流れを変え、魔物の背中から猫のようにしなやかに飛び降りた。
「ようやく悪魔が辛うじて通れる空間の入口を見つけたよ」その場所が遠くてイライラするけど。
彼女は周囲の魔界の粘土で捏ねられ、じっと立っている人型の泥人形を見回しながら、口調には少し我慢ならない様子がにじんでいた。
「そろそろ計画を実行すべき時じゃない?そろそろあの安逸な人間たちに刺激を与える時だ」
「ずっとこっちでこんな泥の魔物を捏ねてるのも、本当に退屈だし」彼女は口をへの字に曲げた。
「こういう集団行動のことは、ルシファーに聞いたほうがいいわ」ベルゼブブが脇で注意を促した。紫の瞳に一瞬慎重さが走る。
「わかったよ、じゃあ聞いてくる」レヴィアタンは肩をすくめ、足を踏み出してほど近くにある壮大で陰鬱な建物へと歩いていった。
「そうだ!」彼女は突然何か重要なことを思い出したかのように、はっと振り返り、悪戯っぽい楽しげな笑顔を浮かべた。
「俺さ、ミカエルを見たぜ」
「ミカエル?!」ベルゼブブの紫の瞳が瞬間に見開かれ、だるそうな表情が驚きに取って代わられた。
「ありえない!あの連中がどうやって人間界に行ったんだ?」この知らせは淀んだ水に投げ込まれた巨石のように、幾重もの疑問を巻き起こした。
「召喚って形みたいだぜ」レヴィアタンが説明した。口調には少し信じがたいものが混じっている。
「こんなに長い年月、俺たちは召喚魔法で直接人間界に行こうと心を砕いてきたのに」
「結果、人間が悪魔を召喚したって話は聞いたことない」彼女は手を広げた。
「なんと天使のほうが先に召喚されたんだぜ!」
「人間への歴史洗脳がまだ不十分だったようね」ベルゼブブは考え込んだ。指先で顎を軽く叩きながら、口調には悔しさがにじんでいた。
「最初から『天使』という言葉も、彼らの存在の痕跡も、人間の記憶と歴史書から徹底的に消し去るべきだったわ」
「で…ミカエルを召喚したやつは、どんな奴だった?」ベルゼブブが興味津々で追い打ちをかける。
「とっても…」レヴィアタンの顔に極度の軽蔑の表情が浮かんだ。何か穢れたものを口にするかのようだった。
「弱っちくて、超役立たずのガキだよ」彼女は鼻で笑った。
「あのガキ、ちょっと耳元で囁いて、力への渇望を植え付けてやれば、悪魔だって召喚できるだろうな」何せ、悪魔召喚の根幹は、召喚者の心の奥底にある力への渇望だからだ。
弱く無力な魂であればあるほど、その渇望はより熱狂的で狂おしくなる。
「それに…」レヴィアタンの目に狡さが光った。
「ちょっと脅しておいたぜ。俺を召喚しなきゃいけないってな」まあ、あんなガキの約束なんて、あまりあてにならないけど。
「とにかくさ」レヴィアタンは青い髪を振り、口調が興奮気味に変わった。
「俺の部隊を連れて、人間界で存分に『賑やか』にしてくるぜ!」彼女は愉快に宣言した。
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壮大だが空虚で冷たい大広間の中央に、玉座のように巨大な精緻な石の椅子がそびえ立っていた。
腰まで届く漆黒の長い髪を持つ一人の女性が、権力を象徴するその位置に端座していた。
彼女の血のように鮮やかな赤い瞳が、大広間に入ってくる来訪者を冷たく見つめている。
「戻ったか」彼女の声は万年の氷のようで、温かみは微塵もない。
その言葉と共に、彼女の背中に唯一残った片側の巨大な黒い翼が、ゆっくりと、重厚で孤高の気勢を帯びて広がった。幾枚かの漆黒の羽が音もなく舞い落ち、まるで死にかけた黒い蝶のようだった。
彼女は振り返ることさえせず、ただ気ままに手を上げた。
刹那、大広間の隅に積まれた魔界の粘土が生命を与えられたかのように蠢き、歪み、瞬く間に無数の形態が奇怪で恐ろしい魔物へと化した。
新たに生まれた怪物たちは無音の雄叫びをあげ、潮のように大広間の各扉へと押し寄せ、姿を消した。
「成果はどうだった?」彼女は相変わらず巨大な玉座に端座し、真紅の瞳孔が冷たい石の床に立つレヴィアタンを高みから見下ろしていた。その眼差しには隠しようもない傲慢と支配が宿っている。
「相変わらずの高慢な態度だぜ…」レヴィアタンは低く呟いた。口調には少し諦めが混じっていた。
「とにかく、悪魔が通れる空間の入口を見つけたよ」彼女は間を置いて付け加えた。
「場所がちょっと辺鄙だけどな」
「それに、あの裂け目に近づけば近づくほど」レヴィアタンは眉をひそめ、その不快感を噛みしめているようだった。
「力が削がれていく感じが強くなるんだ」
「全体的にあの場所は…なんか気持ち悪い感じがするぜ」
「そうか…」玉座の上のルシファーの口元がかすかに上がり、ほとんど見えないが深い意味を含んだほほえみを描いた。
「やはり入口は存在したのか」彼女は呟いた。真紅の瞳孔の奥底で、暗い炎が躍動しきらめいているかのようだった。
レヴィアタンは静かに彼女を見つめた。
「そうだ!」レヴィアタンは何か重要な情報を思い出したかのように、すぐさま続けた。
「人間がミカエルを召喚することに成功したぜ」
「ミカエル…」ルシファーがその名をそっと繰り返した。真紅の眼差しの底を極めて複雑な感情がかすめた。まるで平らな湖面に石を投げ込んで生じた波紋のようだった。
「本当に…懐かしい名前だ」
「彼女を連れて来られるか?」ルシファーの視線が再びレヴィアタンに集中した。口調には疑いを許さない命令感があった。
「連れてくるなら自分で行けよ~」レヴィアタンはすぐに手を振り、気楽でいい加減な返事をした。
「それと…」彼女はその巨大な石の椅子を指さし、口調に少し愚痴が混じった。
「早くあの玉座から降りてくれよ!」なぜここにこんなものを置かなきゃいけないのか、さっぱりわからん!
「とにかく…」レヴィアタンは背を向けて、去ろうとした。
「俺は俺の連中を連れて人間界に行く。お前たちは…」彼女は手を振った。
「…好きなことを好きにしなよ…」
言葉が終わらないうちに、不吉な暗紫色の光を放つ、線が歪んで複雑な魔法陣が、何の前触れもなくレヴィアタンの目の前に突然出現した!陣の中を流れる魔力は強烈な空間の波動を帯びている。
「まさかこれって…」レヴィアタンは突然現れた召喚陣を驚愕して見つめ、思わず手を伸ばした。興奮を帯びて触れようとしているようだった。
しかし、その召喚陣は生命を持っているかのように、不気味に彼女を回避し、鋭いエネルギーの音を立てて、まっすぐ玉座の上のルシファーへと猛スピードで突進していった!
「ちょっと待て!まさか!?」レヴィアタンはぐるりと振り返り、声を上げて驚いた。
ルシファーは自分に向かって突進してくる召喚陣を静かに見つめていた。真紅の瞳に一瞬驚きが走ったが、避ける様子は微塵もなかった。
刹那、暗紫色の召喚陣は巨大な口のように玉座の上のルシファーを完全に飲み込んだ!
光が激しくきらめき、直ちにルシファーの姿もろとも、壮大で空虚な大広間から完全に消え去った。残されたのは、場違いな巨大な玉座だけだった。
「まさか…あのクソガキめ…」レヴィアタンは誰もいない玉座を睨みつけ、歯軋りしながら、青い瞳に怒りと信じがたい感情が燃え上がっていた。
「おい!レヴィアタン!」ベルゼブブのやや興奮した声が入り口から聞こえてきた。
「今、すごいエネルギーの波動を感じたぞ!まさか…」彼女は大広間に駆け込んできたが、言葉が突然途切れた。
見ると、レヴィアタン一人が青ざめた顔でがらんとした大広間の中央に立ち、前方には主を失った冷たく寂しい巨大な玉座があるだけだった。
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硫黄と腐敗の匂いを帯びた、実体のように濃密な黒い煙が、狭い人間の小屋の中で渦巻き広がっていた。煙の中心で、召喚陣の光が次第に薄れ、一人の影が姿を現した。
それは片側だけに巨大な黒い翼を持つ存在だった。
彼女は残った魔法陣からゆっくりと踏み出し、裸足が質素な木の床板に触れた。背後の片翼は無言の威圧感を放って完全に広がり、一枚一枚の羽が最も深い夜を吸い込んだかのようだった。
彼女の血のように真っ赤で、溶岩が流れるような眼差しは、審判と絶対的な傲慢を帯びて、この狭く貧しい空間を冷たく見渡した。
傲慢の罪、ルシファー、ここに降臨す。
「お前の魂が私の降臨に値することを願う。」彼女は口を開いた。声は低く磁性を帯びていたが、氷が鼓膜を削るようだった。
彼女の視線は最終的に、目の前にいる華奢な体つきで顔色の悪い黒髪の少年と、少年の足元で背中を丸め毛を逆立て、威嚇的な低いうなり声を発している二匹の黒猫に向けられた。
ルシファーはわずかに眉をひそめ、身体が瞬時にこの世界の見えない規則によって制圧され、不快感と力の喪失をもたらしたことを感じ取った。
「力は…確かにかなり弱められた…」彼女は呟いた。口調には少し邪魔された不満が混じっていた。
「本当に…不快な束縛感だ」
彼女は再び魂を貫く真紅の瞳を、目の前のひどく弱っている少年に向けた。
少年の体は疲れ、息は不安定だった。しかし、その深い色の瞳の奥底には、ある強烈な渇望が望んでいるものがあった。
「人間よ」ルシファーが高みから口を開いた。神々のご託宣のように。
「言え!」彼女の完璧な唇が支配と遊び心を帯びた弧を描き、愉快に尋ねた。
「お前は何が欲しい?」魂の取引を待っていた。
少年は弱々しくそこに立ち、全身の力を使い果たしてようやく倒れないでいるようだった。唇が微かに動き、苦しそうに二文字を吐いた。
「違う…」声はかすかだったが、異様に明瞭だった。
ルシファーの真紅の瞳孔がわずかに収縮し、彼を見つめた。
「僕は…」少年は顔を上げ、目の前に立つ無限の邪悪と威厳を放つ悪魔をまっすぐに見つめ、一語一語を区切って言った。
「天使を召喚したかったんです」
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「ふぅ~ん」傲慢の罪ルシファーが、粗末だが魔石でいっぱいのこの小さな家の中に立ち、意味深に長く唸った。
彼女の目の前には、私たちの主人公――緋夜・グレイヴンという名の、わずか十五歳の冒険者がいた。
少年の傍らでは、二匹の黒猫が彼女の降臨以来、極度に緊張して毛を逆立て、喉の奥で低い威嚇の唸り声を絶え間なく発し、室内で焦りながら歩き回り、一瞬もじっとしていなかった。
「お前は天使を召喚したかったのに、あれこれあって、私を召喚してしまった…そういうことか?」ルシファーは少年のやや混乱した説明を聞き終え、まとめた。
彼女の口調からは喜怒哀楽は読み取れなかったが、その真紅の瞳は渦のようで、人を吸い込もうとしているかのようだった。
「だって僕…僕はミカエルとラファエルを召喚できなくなったんです」緋夜の声には挫折感と焦りがにじんでいた。指が無意識に服の裾を摘んでいた。
「だからまたこれらの魔石を使って…彼らを呼び戻そうと…」彼の視線は思わず目の前のルシファーへと流れた。その絶世の美貌、片側の黒い翼、そして全身から放たれる圧迫感…
(どう見ても…天使には全然似ていない…)彼の心は巨大な疑問と不安でいっぱいだった。
「あなたは…ある種の高級な幻獣ですか…?」緋夜は抑えきれずに心の推測を口にした。声にはわずかに僥倖を願う探りが混じっていた。
(伝説では、ごく一部の極めて高等な幻獣は知性を持ち、人間と会話できると聞いたことはある…)彼はギルドで囁かれる断片的な言葉を必死に思い出そうとした。
(でも…完全に人型の幻獣が存在するなんて聞いたことない…)
「幻獣?」ルシファーが氷の玉が落ちるような、ごく軽い冷笑を一つ発した。
「私はそんな低等な存在ではない」彼女の口調は冷たく刺すようで、瞬時に緋夜の微かな希望を打ち砕いた。
(天使でも幻獣でもない…それなら…まさか…)一つの恐ろしい名詞が瞬間に緋夜の脳裏を撃ち抜き、巨大な恐怖感が冷たい潮のように瞬時に彼を飲み込んだ。
彼は目の前の気勢すさまじい存在を見て、体が制御できずに、極めてゆっくりと後ろへ移動した。
ほとんど本能で、彼の両手が微かに上げられ、手のひらがルシファーに向けられた。頭の中には一つの念頭しかなかった――すぐに、今すぐに、この現れてはいけない存在を、強制的に元いた世界へと送り返すことだ!
しかし、その思いが湧き上がり、召喚逆転の呪文が発動しようとしたまさにその瞬間――
緋夜の全身が、一本一本の指、一つの関節に至るまで、見えない鋼鉄の枷でがっちりと拘束されたかのように固定された!身動き一つできない!息さえも一瞬止まった!
「ふっ…」目の前の悪魔が軽蔑したような嘲笑を一つ漏らした。その真紅の魔眼は彼の魂の奥底を直接見透かせるかのようだった。
「人間よ、お前の考えは私の前では、開いた書物のように明らかだ」彼女の声には絶対的な支配力が込められていた。
「跪け」ルシファーが紅い唇を軽く開け、単純だが背くことを許さない命令を吐いた。
その二文字が落ちると同時に、緋夜は恐怖で気づいた。自分の両足が完全に制御を失ったのだ!抗いようのない巨大な力が強引に彼の膝を押さえつけた!
「ドスン!」鈍い音が響き、彼の膝が硬く冷たい床に激しくぶつかった!視界は急に低くなり、目の前の完璧だが裸の、埃の中に立つ足しか見えなかった。
(これは…何の力だ?!)果てしない恐怖が彼の心臓を掴み、相手を直視する勇気すら瞬時に喪失させた。
「さて…」ルシファーが一歩前に出て、跪き伏し、震えている少年を見下ろした。
彼女は身をかがめ、完璧無欠な顔を緋夜に近づけた。その邪悪で魅惑的な微笑みが、緋夜のうつむいた視界の端に明瞭に見えた。声は悪魔の囁きのように、疑いを許さない強制力を帯びていた。
「ミカエルを召喚しろ、人間よ」




