第十二話 もしそれがあなたの望みなら
第十二話 もしそれがあなたの望みなら
「それがね……」ラファエルは天界に召喚陣が現れた時のことを思い出す。
―――
「これは召喚陣では……?」
三人の天使が突然現れた召喚陣を見つめる。
「ミカエルの話より早いわね?(何かあったのかしら?)」
白髪の天使が言う。彼女は大天使ガブリエル、純潔の象徴。
「入り口が少し小さいようですね?」
傍らの緑の長い髪の天使が言う。彼は大天使ラファエル、男女の区別がつかない外見で、治癒を司る。
「とにかく、私の出番が来たわ!」赤髪の天使が興奮して言う。
彼女は大天使ウリエル、『炎』(光)の象徴。
「じゃあ行ってくるわ!」興奮して召喚陣に飛び込む。
―――
そして――
「あら……」彼女の上半身だけが召喚陣に挟まって、下半身が外に出たまま。
「入らないわ!!それに挟まった!」ウリエルがもがく。
「ラファエル、助けて!」外に出た足をばたつかせる。
「はい、今助けます」ラファエルが言いながら近づく。
「やはり入り口が小さすぎたのね」ガブリエルが傍らで言う。
「でも召喚はキャンセルできません」ラファエルは手を差し伸べる。
「誰かが入らないと、召喚陣は閉じないでしょう」ラファエルが言う。
突然、召喚陣が消え、ウリエルはバランスを崩して膝をつく。
「おかしいわ……」ウリエルは消えた召喚陣を見る。
「大丈夫、ウリエル?」背後からラファエルの声。
ウリエルがゆっくり振り向く。
「ラファエル!!」ウリエルが叫びながら、彼の足元の召喚陣を見る。
「あれ……」ラファエルの体が召喚陣に吸い込まれていく。
ウリエルは手を伸ばすが、間に合わない。
召喚陣は閉じてしまった。
「まさか……」ウリエルは膝をついたまま呟く。
消えた召喚陣と、ラファエルのことを見つめて。
―――
現在に戻る。
「そういうことです」ラファエルはミカエルの隣を歩きながら言う。
「本当に申し訳ありません、私のミスで……」ミカエルは自分を責める。
「大丈夫です、私も人間界に来られて嬉しいです」微笑みながら言う。
「でもあまりお役に立てないかもしれません」
「いいえ!ラファエルがいれば、三人でC級ダンジョンに行けます」ミカエルは興奮して言う。
C級ダンジョン、参加条件は3~5人。
「B級に行くには5人必要ですが……」ミカエルは考える。
(天界の天使を同時に人間界に呼ぶわけにもいかない……)
そうすると天界が手薄になってしまう。
(どうすれば……)ミカエルは頭を悩ませる。
「こちらのルールは複雑なようですね」ラファエルが口を開く。
「でもお役に立てるなら嬉しいです」微笑む。
―――
冒険者ギルド
受付嬢は遠くのラファエルと、資料を記入するミカエルを見る。
「ねえ、緋夜、今度のはどんな関係なの……?」
小声で目の前の主人公に尋ねる。
(しかもみんな美男美女……)
「え、えっと親戚の……従兄かな?」困ったように説明する。
(この家族は高スペック一族なのか、つまり彼も期待できる?)
(確かお母さんも……)
緋夜を見つめながら考える。
(ただまだ幼すぎる)
「で……このラファエルさん、今独身ですか?」受付嬢は恥ずかしそうに尋ねる。
「え……?」困惑。
―――
「緋夜様、無事C級に昇格しました」ミカエルが嬉しそうに言う。
C級になるには一定の実績が必要で、とっくに条件は満たしていた。
「これでC級ダンジョンにも入れます」
C級ダンジョンにはC級以上の冒険者が一人必要。
「あ、あなたは神官様ですか!」受付嬢は手元の資料を見て驚く。
「神官?」ラファエルは不思議そうに彼女を見て、ミカエルに視線を移す。
「治癒能力を持つ人間のこと……」ミカエルが小声で耳打ちする。
「なるほど……」
「はい、私は神官です」ラファエルは微笑む。
「本当に冒険者になられるんですか……?」受付嬢は疑わしげに見る。
「神官様は冒険者の中でも高リスク職ですよ!」
(今日見つけた獲物がこんなことで死んだら困る!)
「はい、人を助けるのが私の使命です」ラファエルは優しく笑う。
(この笑顔は殺傷能力あり!か、かっこいい!)完全に落ちる。
―――
「へえ~これが冒険者カードか……」ラファエルは興味深そうに見る。
「あとは迷宮に行くだけです」ミカエルが横で言う。
「C級ダンジョン~」ミカエルは嬉しそうな表情。
「彼女、楽しそうで何よりです」ラファエルは微笑む。
「あの……」ラファエルは横を見て、それから下を向く。
「あ、あなたって強いの……?」主人公が緊張して尋ねる。
ラファエルは彼を見て、しゃがみ込む。
「これからよろしくお願いします、ご主人様」微笑みかける。
「ご主人様じゃないよ……緋夜だ」照れくさそうに言う。
「で、だから……」緊張して言葉に詰まる。
ラファエルはそれに気づく。
「ご安心ください、私は強くありません。大天使の中で一番弱いです」
ラファエルは優しく言う。
「本当……!」嬉しそうに見つめる。
(い、いや、召喚した天使が弱いのを喜んでるわけじゃないけど、でも……)なぜか嬉しい。
「ラファエルは治癒天使で、戦闘能力はありません」ミカエルが補足する。
「それにここでは力が制限されているようです」ラファエルが言う。
「申し訳ありません、あまりお役に立てないかもしれません、緋夜様」
立ち上がりながら微笑む。
「い、いや、いいんだ」相変わらず嬉しそうに見つめる。
「緋夜様、なぜか特に嬉しそうですが……」
戦闘能力がないと聞いてから特に。
ミカエルは彼の意図を見抜き、そう言う。
「ち、違うよ!」
「もしどこか痛めたら、私が治して差し上げます」
ラファエルが言う。
―――
C級ダンジョン内
「うーん……」主人公はキャラメルを抱き、不満そうに立っている。
ラファエルがメスを手に、魔物の気づかぬ隙に体内から魔石を取り出し、手に持っている。
「どうぞ、お受け取りください、緋夜様」ラファエルは微笑みながら魔石を差し出す。
「う、嘘つき!!!」涙目で叫ぶ。
「え……?」ラファエルは困惑した表情。
―――
「小型魔物しか扱えません」ラファエルが言う。
元々戦闘が本分ではないから。
「そうは言っても……」主人公は落ち込む。
横でミカエルが大型魔物を軽々と倒すのを見ながら。
「僕は小型魔物一匹倒せないのに!!!」
「それにここはC級ダンジョンで、ここの小型魔物だってE級のより大きいんだよ!」
絶望的な声。
「そうですか?」ラファエルが言う。
「では」ラファエルが口を開く。
「緋夜様は私にどうしてほしいですか?」尋ねる。
主人公は振り向く。
「もし望まれるなら、私は何もしません」
ラファエルは微笑む。
僕が望むこと……
(確かにミカエルのように強すぎる天使は呼びたくない……)
(ラファエルはちょうどいい、僕よりは強いけど、最強じゃない……)
僕が最弱だという事実を受け入れないと。
(それがどんなに辛くても……)
「ラファエル……ラファエルは僕の仲間?」
「もしも」彼は微笑みながら言う。
「それがあなたの望みなら」




