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ワールドリカバーアドベンチャー  作者: 矢神 汰一
第一章 ストロント町編
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第九話 ストロント町の決戦

 「リックー!助けてー!」


 炎の中にみんなが包まれながらそう叫んでいた。


 「…リック…リック!……」


 僕はヴィクトリアの声で目覚めた。


 「大丈夫?あなたすごくうなされてたわよ」


 「あぁ、大丈夫だ。問題ない」


 「…そう、それならいいんだけど」


 その後、客間から出るとダイニングに全員が集まっていた。


 そこには、僕たちに宿を紹介してくれたおじいさんがいた。


 「昨日君たちに飯をやろうと思って部屋にいないから心配したがまさか、アンドリューの知り合いだったとはな」


 「ええっと、あなたは何故ここに?」


 「アンドリューにビルたちを見ていて欲しいと頼まれたんじゃよ」


 「ビルたちとは知り合いなのか」


 僕の質問にビルが答えた。


 「そうだよゼリオムおじいさんは僕たちや他の子どもたちとよく遊んでくれてる人なんだ」


 「まぁ、わしがアンドリューと協力するようになったのは子どもを誘拐して売り捌くというアーチボルド団に怒りが湧いてきたからなんじゃ」


 ゼリオムさんは穏やかな表情で答えてくれた。


 「なるほど、そうでしたか」


 「じゃあ、作戦会議を始めましょう」


 ヴィクトリアは地図を広げながら言った。


 「作戦を立てるって言ったって何も情報がないんだぞ」


 「リック、それは敵も同じよ。敵もダニエルさんを私たちに奪い返されたから今の敵は私たちがどこに現れるかわかっていない。だから敵は自分たちか私たちから行動しない限り何もできない」


 「確かにそうだな」


 「問題はこのメンバーでどうやってアーチボルド団に勝つかよ」


 ヴィクトリアがそう言うとダニエルさんが喋りはじめた。


 「私はビルが生まれる数年ほど前まで王国騎士団に所属していたんだ。だから私も戦える」


 「でも、引退してから随分経ってるじゃないか」


 ダニエルさんは鋭い目付きで言った。


 「大丈夫だ。必ず役に立つ」


 「じゃあ、ダニエルさんも戦うとして僕とヴィクトリア、ロイドにヘレナそしてボルトとアンドリューさんの7人か」


 ヴィクトリアは少し考えてから言い始めた。


 「リックはアーチボルド団のリーダーを倒して。ロイドは多分この中でリックの次に強いでしょうからブランドンを任せるわ。ボルトはいるかは分からないけどもう一人幹部がいるかもしれないからそいつを任せるわ。もしいなかったらボルトも加えて残りの私たちでアーチボルド団の構成員を倒しましょう」


 「そうだな。詳しいことはわからないから細かくは計画を立てられないが、大雑把でも計画を立てないよりはマシだろう。じゃあ、僕は外出て情報収集でもしようかな」


 「わかったわ。じゃあ、私たちは武器の手入れでもしましょう」


 僕は外に出て町の様子を見て回った。


 町の人たちの間では昨日起きた爆発と監獄から誰かが脱獄したという話で持ちきりだった。


 「アーチボルド団に手を出すなんて正気の沙汰じゃない」


 「だよな、殺されちまう」


 そんな会話も聞こえてきた。


 しばらく歩いていると子どもが手紙を渡してきた。


 どうやら、ある人から手紙を渡すように頼まれたらしい。


 「これ、誰から渡すように頼まれたの?てっ、あれ?」


 手紙から目を離して子どもがいた方を見るともういなかった。


 僕は手紙を開いて中身を見た。


 内容は


 今夜21時、ガキの母親を返して欲しければアーチボルド酒場に来い。


 と書いてあった。


 僕は急いでビルの家に戻り、みんなにこの手紙を見せた。


 ヴィクトリアは手紙を読み終えるとこう言った。


 「つまり、ビルのお母さんは少なくとも今のところは大丈夫だから私たちは戦いに備えて準備しましょう」


 「あっ、ところでゼリオムさんは?」


 「リックが出ていってから少しあとに出て行ったわよ」


 「そうか」


 その後、ゼリオムさんが帰ってきて状況を説明した後戦いに向けて準備を整えた。


 21時 アーチボルド酒場


 僕はビルたちやゼリオムさんを除いた全員でアーチボルド酒場へたどり着いた。


 「来たか」


 アーチボルド団のリーダーはそう言ってアーチボルド酒場の屋根の上から僕らを見下ろしていた。


 屋根の上にはブランドンと縛られた状態のビルの母さんがいた。


 「そういえば自己紹介が――」


 「お前!ビルの母さんを返せ!」


 「なぜタダでお前たちに返す必要がある。返して欲しいならお前を含めたそこのガキ5人と引き換えだ。どうだ?最高の提案だろ?」


 「そんな提案受け入れられるわけないだろ!」


 「そうか?お前が提案を受け入れないというのならこいつを殺すが?」


 リーダーの男はビルの母さんの首に剣を当てた。


 「やめろ!わかった。だが、引き換えにするのは俺一人にしてくれ」


 「いいだろう。お前にはこいつ以上の価値があるからな」


 そしてビルの母さんと僕は入れ替えになった。


 「お前の名前はなんという?」


 リーダーの男は僕に名前をたずねてきた。


 「それよりお前は?」


 「俺か?俺の名前はアレスタ・アーチボルドだ」


 「そうか」


 僕はそう言った瞬間に剣を抜いてアレスタに斬りかかったが、アレスタの剣によって防がれた。


 「やるのか?」


 「あぁ」


 そうして僕とアレスタは互いに剣をぶつけ合った。


 ロイド視点


 「リックが戦ってるうちに一旦ここから離れるぞ」


 ボルトがそう言うと僕たちは一斉に走って、その場を離れた少し離れたところでブランドンに追いつかれた。


 「おいおい、逃げるのか?」


 「いや、違う」


 僕はそう言うとブランドンに斬りかかったが、剣で防がれた。


 「みんなは今のうちに逃げてくれ」


 「わかったわ」


 僕の言葉にヘレナが応えた。


 ボルト視点


 俺たちは出来る限りアレスタやブランドンから離れるため、走った。


 すると、目の前に謎の男が立ち塞がった。


 「やぁ、僕はアーチボルドさんの左腕っていったところの立ち位置のドミニク・オールポートだ」


 「誰が僕の相手をしてくれるのかな?それとも全員でくるかい?」


 「へっ!テメェみたいな奴俺一人で十分だぜ」


 「そうかい」


 その瞬間、ドミニクは一気に間合いを詰めて俺に斬りかかってきたが、俺は剣でそれを防いだ。


 「大縦斬り《だいじゅうぎり》」


 「大振りで隙だらけだよ」


 ドミニクは俺の剣を避けて間合いに入ってきた。


 ドミニクが剣を振る前に俺はドミニクの横腹を蹴った。


 ドミニクは俺の蹴りで吹き飛んだ。


 ドミニクはすぐに体勢を立て直して切り掛かってきた。


 俺はそれを剣で防ぎながら詠唱を唱えた。


 「この手に宿れ、小さき雷球。迅雷球グローブ・フルミニス


 迅雷球はドミニクの胴体に直撃し、ドミニクは感電して硬直した。


 「大横斬り《だいおうぎり》」


 その隙に俺はドミニクに横振りの攻撃を喰らわせた。


 ドミニクは吹っ飛んでいき、建物に突っ込んだ。


 ドミニクは建物から出てきた。


 「なかなかやるね。今のはすごく効いたよ」


 またドミニクは間合いを詰めて切り掛かってきた。


 俺はそれを剣で防ぎ、剣をぶつけ合った。


 ヴィクトリア視点


 リックたちが戦っているうちにビルのお母さんを安全な場所に隠さないと。


 そう考えていると目の前に大勢の男たちが立ち塞がってきた。


 「お前らここから逃げられると思うなよ」


 男たちは不敵な笑みを浮かべてそう言った。


 「やるしかないみたいだな」


 ダニエルさんはそう言って剣を構えた。


 私もそれに合わせて杖を構えた。


 「この杖に宿れ、小さき光の球よ。光輝球グローブ・ルーキス


 「魔術師か!」


 光輝球は直撃し、一人男を後方へ吹き飛ばした。


 「俺がやる。君は援護を頼む」


 ダニエルさんはそう言うと、男たちへ突っ込んでいった。


 「精鋭流 点斬連鎖てんざんれんさ


 ダニエルさんは急所、関節などに狙いを定めて高速で斬りつけた。


 「大地を走れ、聖なる奔流。

  穢れを裂けよ、光の濁流!踏破せし光の波(ルーミナ・ウンダ)


 地面から光が湧き出して男たちを攻撃した。


 ヘレナ視点


 急いでビルのお母さんを今より安全な場所に移して私も戦いに参加しないと。


 「アンドリューさん、ビルのお母さんを任せたわよ」


 「えっ? ちょっと!」


 私たちはアーチボルド団の構成員に囲まれた。


 「鉄血流 鉄槌落とし(てっついおとし)


 私は飛び上がって剣を地面に振り下ろした。


 何人かは衝撃で倒したがまだ残っている。


 集団用の技も習得しておけばよかった。


 私は地道に剣で一人ずつ気絶させていった。


 ロイド視点


 「影風流 影閃えいせん


 僕はブランドンの死角に踏み込んだ。


 「この程度か?」


 影閃はブランドンに防がれた。


 そのままブランドンは切りかかってきた。


 「水月流 返し潮(かえししお)


 僕はブランドンの斬撃を受け流し、斬り返した。


 攻撃は防がれ、また切り掛かってきた。


 「精鋭流 冷徹斬り(れいてつぎり)


 「水月流 返し潮(かえししお)


 ブランドンの斬撃を返し潮で防いだ。


 「影風流 刃返し(じんがえし)


 回転しながら左手の短剣で攻撃し、右手の短剣で追撃した。


 ブランドンはそれを防ぎ、攻撃してきた。


 「精鋭流 一点穿孔いってんせんこう


 ブランドンは高速で突き攻撃を繰り出し、僕は避け切れず、肩にくらってしまった。


 まだ実験段階だが、あれを使うしかない。


 ボルト視点


 クソッ!このドミニクってやつ思ったよりつえぇ。


 あいつの動きに追いつくのが精一杯だ。


 力で倒すつもりだったが、逆にこの重量系の装備のせいで動きが遅い。


 「大縦斬り(だいじゅうぎり)


 「風雅流 蝶影返し(ちょうえいがえし)


 ドミニクは俺の攻撃を優雅にかわし、逆手で斬り返してきた。


 攻撃は直撃したが、闘気と防具によってなんとかダメージは防いだ。


 重装の防具で良かった。


 ビル視点 リックたちがアーチボルド酒場に向かってから数分後


 お兄ちゃんたち大丈夫かな。


 僕も何か役に立ちたい!


 僕は走って階段を駆け下りた。


 「おい、ビル。待つんじゃ」


 僕はゼリオムさんの静止を振り切って家を出た。


 リック視点


 「火炎球グローブ・イグニス


 火炎球はアレスタに剣でかき消された。


 「迅雷球グローブ・フルミニス


 雷を見た瞬間、僕の目に家に雷が落ちた瞬間がフラッシュバックした。


 ごめん、ごめん、ごめん。守れなくて本当にごめん。


 「あんたがいたせいでコールは死んだのよ!」


 母さんの言葉で僕は押しつぶされそうになった。


 その時――


 「お兄ちゃん!あいつの攻撃が来るよ!」


 僕はコールの言葉で我に返った。


 「火炎槍ランケア・イグニス


 火炎槍でアレスタの迅雷球を打ち消した。


 そのまま僕はアレスタに向かって間合いを詰めた。


 「竜影流 竜牙裂破りゅうがれっぱ


 僕は剣を逆手に持って、勢いをつけアレスタに向かって斬りつけようとしたが、防がれた。


 「影風流 影閃刃返し《えいせんじんがえし》」


 僕は突然足を斬られた。


 これはロイドが使ってた技!


 「竜影流 影尾輪えいびりん


 なんとかアレスタの攻撃を防いだ。


 「迅雷槍ランケア・フルミニス


 「火炎槍ランケア・イグニス


 アレスタの放った迅雷槍と火炎槍がぶつかり互いの間で衝撃波が発生した。


 気がつくと周囲は燃え上がっていた。


 目の前にはアレスタが剣を僕に向けて突き立てていた。


 ビル視点 10分ほど前


 僕はリックたちが心配で何か手助けになるようなことを考えた。


 僕は一軒一軒家をまわって声をかけた。


 「アーチボルド団との戦いに協力してください!」


 扉をたたきながら声をかけたが、返事は返ってこなかった。


 その後も、何軒か回ったがダメだった。


 町の所々に火が回っており、火を消そうとする人たちが大勢集まっていた。


 「今アーチボルド団と戦ってる人たちがいるんだ」


 集まっていた中の一人が怒り口調で言い始めた。


 「あぁ、知ってる。おかげでこっちは大迷惑だよ。どうせ負けてまたこの町から犠牲者を出す羽目になる」


 それに対し、僕は反論した。


 「今戦っている人たちの中にはこの町の人じゃない人もいるんだよ。あの人たちだけだと負けるかもしれない! 僕たちも戦おう」


 「だからなんだって言うんだ?勝ち目なんてないのに挑むのが悪いんだろ」


 「そうだ、そうだ」


 「勝てないのにどうするってんだ!」


 町の人たちから反感の声が上がった。


 「おい、小さい子どもにそんなに言うことはないだろ!」


 「小さい子どもだから、間違ったことをする前に言ってるんだろ!」


 集まっていた人たちの間で争いが始まりそうになっていた。


 「確かに! 確かに、今までみたいに恐怖で怯えてバラバラだと勝てないかもしれないけど、みんなが勇気を出して戦えばきっと勝てる! だから、みんな協力してほしい。お願いします!」


 僕はそう言うと頭を下げた。


 「ほら、子どもがここまで言ってるし、確かに俺たちはこれまで恐怖で何もしてこなかった。だからこそ今ここで勇気を出して全員でアーチボルドの野郎どもをぶっ倒してやろう!」


 「やし、やってやろう」


 「確かに倒せるかも」


 集まっていた人たちは雄叫びをあげた。


 「よし、使えそうなものを集めるぞ!」


 リック視点 現在


 「最後にもう一度だけ聞くが、俺たちの仲間に入る気はないか?」


 アレスタは僕の首に向けて剣を突き立てて言った。


 「死んでも嫌だね」


 「そうか。残念だ」


 そう言うとアレスタは剣を後ろに引いて、勢いをつけて僕に剣先を振り下ろしてきた。


 ――


 「クソ! なんだ!」


 一瞬でよくわからなかったが、僕とアレスタの間を何かが通った。


 飛んできた方向を見ると知らない大人たちがいた。


 知らない大人たちの中によく見るとビルの姿があった。


 その時、反対方向から爆発音が聞こえた。


 「花火か――」


 「僕たちが助けに来たよ!」

次回は来週月曜日午後8時投稿予定です。


登場剣技紹介

大横斬り 大剣を横に振る。

点斬連鎖 精鋭流三つ目の技。動きのブレが一切ない、精密な連続斬撃。急所・関節などの"点"に狙いを定めて、高速で連鎖的に斬りつける。

鉄槌落とし 鉄血流三つ目の技。振り下ろす一撃で相手の防御を叩き潰す。

冷徹斬り 精鋭流二つ目の技。相手の感情や勢いに流されず、冷静に「最も危険な瞬間」を見極めて返す一撃。剣を振る姿に一切の迷いがない。

刃返し 影風流三つ目の技。本来は一撃目の流れを崩さず、逆手に持ち替えた短剣で二撃目を加える技。ロイドの場合はもう片方の手に持っている短剣で二撃目を加えた。相手が防御姿勢に入る前に決める。

一点穿孔 精鋭流四つ目の技。装甲や魔法障壁の"最も薄い一点"を見抜き、そこだけを貫通する。

蝶影返し 風雅流三つ目の技。相手の斬撃を優雅にかわしつつ、その動きの隙をついて逆手で斬り返すカウンター。

竜牙裂破 竜影流一つ目の技。剣を逆手に持ち、勢いをつけて地面に叩きつけるような斬撃。地を這うような衝撃で敵を薙ぎ払う。

影閃刃返し 影閃と刃返しの合わせ技。


魔術紹介

踏破せし光の波 光の中級魔術

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