僕の使命は可愛いガワを作ることです!
初投稿です。
思い付きで書き殴った物なので、温かい目でご覧下さい。
(どうやら僕には使命があるらしい)
(生まれてから。いいや、生まれる前から魂に刻まれている思いが、行動を起こせと僕の心を騒ぎ立てている)
「力が…足りない。これじゃああの思いを繰り返す事になる。」
そう幼いながらもフランス人形の様に整った顔を歪ませながら、可愛らしい声には似つかわしく無い重々しい口調で呟く少女は、ぱちりと開いた碧眼を自身の手元から離し天井を見上げた。
彼女の手に握られている紙には、自身の似顔絵らしきものが描かれている。ふわりとウェーブしている金髪に目鼻立ちの整っており、将来は美人になるだろうと容易に想像できる彼女に、そっくりな少女が笑顔を浮かべている画だ。
「焦ってはいけない。この身体はまだ、小学生なんだから」
自分に言い聞かせるように、まるで小学生には似つかわしく無い事を反芻し、幼い四肢を伸ばし勉強机から離れ、ベッドへと倒れ込んだ。
(転生してから10年。長いようであっという間に過ぎていったな)
少女_水無月 カレンは転生者である。彼女の記憶には30数年間の別人の記憶があった。
中でも強烈に記憶として残っているモノが今の少女の原動力にして原点、使命を感じるに至った要因となっている。
Vtuberと言う言葉は聞いたことが有る人も居るだろう。2Dあるいは3Dの絵、所謂ガワとも呼ばれる自身の分身を使い、動画配信をしている者たちの総称。生前は魔境と言われるほどに彼等で賑わっていた。
その中にカトレーヌ・ミュレーという金髪碧眼のフランスからの留学生という設定の、ゲーム配信を主にしている個人勢のVtuberが居た。聴くものに癒やしを与える声と、類稀なゲームセンスを武器に配信をしている。そんな彼女には圧倒的に不足しているものがあった。
ガワである。
ガワの可愛らしさが圧倒的に不足していた。群雄割拠の時代、先ずは目に留まらなければ話にならない。カトレーヌは全く話にならなかった。へそで茶が沸くレベルである。故に登録者数は悲惨なものであった。
しかし、カレンのいる現在において、Vtuberの認知度は凄く低かった。小学校で聞いてもほぼ100%で何それ?と逆に聞かれる位には。
だからチャンスだと思った。カトレーヌが天下を取る迄とは言わないまでも、沢山の人に知って貰える存在になる好機であると。
(僕の魂に刻まれた使命は、カトレーヌ・ミュレーが配信を開始する高校生迄に絵の技量を磨いて、誰もが目を引くガワを作り出す事だ!)
時は流れて数年後。
カトレーヌ・ミュレーは流れる様に動くふわりとウェーブしている金髪を揺らしながら、ルームメイトと自身が呼ぶリスナーに向け締めの挨拶を行っていた。
「今日はこの辺りで終わりにしようと思います。おつミュレー!」
一斉にコメント欄に流れる<おつミュレー!>の嵐を微笑ましげに眺めた後、配信が終了している事を確認してから四肢を伸ばし、満足気な表情を浮かべ呟く。
「ガワをくれたシュウさんには感謝してもしきれないなぁ。どんな人なんだろう」
「おっ、おつミュレー!」
一筋の涙を流しながら、締めの挨拶をパソコンへと向かって叫ぶ。
「あぁ~、今日のミュレーちゃんも可愛かった〜!毎回神回ばかりで僕の心臓は悲鳴を上げてるよ。この思いは形にしなければ!」
一心不乱にパソコンに向かって描き上げた物を、自身のアカウントに投稿して落ち着いたのか年季の入った勉強机から立ち上がり、伸びをしてからベッドへと倒れ込んだ。
「うんうん。早速イイネが付いてるね」
ミュレーが認知されている事が余程嬉しいらしく、ニマニマと頬を緩めながらイイネが増えていく自身のアカウントを眺めるカレン。
(ミュレーちゃんのママになるために始めたこのアカウントも、大分フォローされたなぁ。神絵師なんて呼んでくれる人が居るのに、アカウント名が前世の名前だなんて締まらないよなぁ。もうちよっと捻った名前にすべきだったかなぁ)
「まっ!ミュレーちゃんの事に比べたら些事だからしょうが無いか!」
「生き甲斐をくれたミュレーちゃんには感謝しかない!ありがとう!」