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無才王子は国を離れてスローライフを満喫したい  作者: m-kawa
第二章 始まりの街アンファン

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第68話 雷属性の魔物

「なんなんだよコイツは!? 知り合いなのか!? あと鞄から魚出てきすぎだろ! それにそのコンロなに!?」


「あっ」


 次々と突っ込みを垂れ流すクレイブに、思わず声が出てしまう。

 そういえば時空の鞄だとばれないようにしてたんだっけか。魚いっぱいとお肉とコンロはちょっと容量超えてる気がしないでもない。


『アホか』


「アホじゃないもん」


「そこまで言ってねえけど!」


「あっ」


 クレイブに突っ込まれて二度目の声が漏れる。


『くっくっく』


「むー」


 キースに笑われてつい頬を膨らませてしまった。

 どうしよう。なんかいろいろバレた気がするけど誤魔化せるかな。


「膨れっ面してもかわいいなおい!」


 言葉とは違ってその表情からは、そんなんじゃ誤魔化されねぇぞといった雰囲気をひしひしと感じる。他のメンバーも微妙な表情になっていて、マリンは呆れた顔をクレイブに向けていた。


「アタシは黙ってようと思ったけどね……」


 とはいえクレイブに突っ込まれてしまったからにはどうしようもない。


「えーっと、その、スノウに笑われた気がしたから……」


 鞄はともかくキースの存在だけは見つからないようにしないとだめだ。だというのにキースから私にだけ声が届くというのはばらされたいんだろうか。そうなったらキースが狙われて捕まって……、んん? キースが捕まる? 私を観察することができなくなるのでは? むしろ……、いやいや、そんな単純な話でもないよねきっと。どこで見つけたんだとか私も絡まれまくるに決まっている。


「なんにしろだ。その鞄は時空の鞄で間違いないな?」


 ちょっとだけ思考が斜め方向へ逸れていたところに、クレイブから確信を込めた言葉が届く。なんとなく誤魔化したところで無駄な気がしてきた。


「はい」


 観念して肯定すると、大きく長ーいため息が聞こえてきた。超レアな時空の鞄ではあるがこの世に二つとないわけでもない。自律してしゃべるキースが見つかるよりはマシじゃなかろうか。

 そう思えば時空の鞄も大したことないような気がしてきたぞ。うん、きっと大丈夫。


「はぁ……、知ったのが俺たちだったからいいものの、他の奴には絶対に言うんじゃないぞ」


「もちろんです。フォレストテイルのみんなは信用してるので」


「はんっ」


「ふふ」


 そっぽを向くクレイブではあるが、なんとなく照れているように見える。マリンからもほほえましい表情が向けられているので間違いでもなさそうだ。

 信用しているからこそ、手持ちの魚も大盤振る舞いしたんだけどね。そのせいでいろいろばれちゃったけど。


「おっと」


 気が付けば焼いていた魚が焦げそうになっている。トングでひっくり返すとクレイブも呆れた表情になっている。


「マイペースだなおい。まぁ俺たちも飯にするか」


 こうして街の外でのお昼ご飯は進んでいくのであった。


 スノウの魚も焼けて自分の魚を焼いているころ、ルナールが魚を食べ終わったようで大人しく座っている。てっきり食べたらすぐにどこかに行くと思っていたのでびっくりだ。すごくレアな魔物じゃなかったんだったっけ。だからと言って臆病ってわけでもないのか。


「食べるかな?」


 食べていたスープの具を取って手のひらに載せると、ルナールへと差し出してみる。

 その様子を見たクレイブが何か言いたそうにしていたけど、少し考えて諦めたのか肩をすくめるだけだ。これでも一応テイマーギルド員なのだ。興味本位だけでやってるわけじゃない。……といってもテイマーのなんたるかはよくわかってないけど。


 差し出されたスープの具を見てルナールがゆっくりと近づいてくる。やっぱり興味はあるみたいだ。私たちがご飯食べる様子をじっと見てたしね。

 鼻を近づけてふんふんと匂いを嗅いでいたかと思うと、そのままペロリとためらいなく食べた。


「おお」


「マジか」


「餌付けしてる……」


 クレイブとマリンだけでなく、フォレストテイルのメンバー全員が目を丸くしている。

 食べてくれたことに嬉しくなってもう一度あげると、その隙にゆっくりとルナールの頭に触れる。ちょっとだけピリッとしたけど、そういえばルナールは角から雷を出すんだっけ?


「ぶふぉっ」


 前にキースが話していたことを思い出していると、いきなりクレイブが吹き出した。他のメンバーもポカンとしていたり笑いをこらえたりしているように見える。


「アイリスちゃん……、なに、その頭」


「えっ? 頭?」


 マリンの戸惑った言葉を聞いて、もう片方の手を頭に持っていくと頭皮に触れる前にくすぐったい感触があった。つまんで顔の前に持ってきたら自分の髪だった。なにやら髪の毛が逆立ってるような。なんだろうと思って両手で改めて頭に触れるけど、逆立った状態が戻ったのか何事もなくいつも通りになっている。


「あれ?」


「ぶはははは!」


『ふむ。静電気か』


 自分の頭を触っていると今度はルナールが驚いが顔になっていた。触られるのが嫌だったんだろうか。


「ダメだった?」


 腹を抱えて笑い転げるクレイブはとりあえず放置して、今はルナールだ。

 声をかけながら手をそっと出すと、ビクッとして一歩後ずさる。だけどそこからゆっくりと近づいてきて顔を寄せてきた。触れると髪が逆立つのを感じたのでちょっと納得だ。よくわからないけどルナールに触れると髪が逆立つみたい。

 せいでんきが何かよくわからないけど、雷が関係しているなら精霊のらいらに頼んでみようか。

 お、髪が逆立たなくなった。らいら、ありがとう。

 満足した私はルナールの頭を撫で繰り回してもふもふを楽しんだ。

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