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人間が大好きな壊れたAIの話  作者: 四季 冬潤
第一章 リノ
15/17

第十五話 美少女です

 システム起動。


 起動率…0%…11%…22%…31%…46%…60%…79%…91%…100%


 エラーが335件発生………………修正完了。


 システムコード名"リノ" 起動完了。


 -------------------------------------


 今日はアカネさんに戦闘訓練をする予定です。内容としては、ギルド裏の訓練所でアカネさんにあった武器の選別と魔法適性の確認をした後、下水道に行って実践をしてみようと思っています。集団でなければゴブリンは一般人でも倒せる存在なので、初めての戦闘には一番向いている魔物です。

 昨日決めた待ち合わせ場所の公園に行くと、まだアカネさんは来ていませんでした。まだ朝早く、市場も開いてからあまり時間もたっていないので、当然と言えば当然ですが。

 武器購入費用を考えて、金貨を3枚持ってきています。それと、アカネさんも子供の身体では何かと不便でしょうから、あの魔法使いさん作『転生前の年齢まで戻れる薬』を持参してきました。どうやらあの方は本名かどうかは分かりませんが、透さんからはアルトと呼ばれているようです。と言っても、その薬が本当に効くかどうかは分かりませんが。もし効いた場合、体の急成長により服が張り裂けると思うので、人目に付かないところで飲んでもらう必要がありますね。

 私もこの体では小さくて正直不便ですので、透さんが帰ってきたらもっと大きい体を作ってもらえるように頼みましょう。もちろん女性型です。

 さて、まだ来ませんし、少々サーバを漁ってみましょう。


「ごめんなさい。まさかもう来ているなんて思ってなくて……」

 約20分後、アカネさんが公園まで来ました。戦闘訓練をすると分かっていたからか、動きやすそうな服装で来ています。服の種類はよくわかりませんが、薄手で上下セットの服で、色は青と緑の混合です。正直似合っていますが……これから体を成長してもらうとなると、着れなくなるのでちょっと勿体ないですね。

「大丈夫です。私が少々気を急いてしまっただけですので」

「AIでも興奮とかするんだね……」

 アカネさんが意外そうに言いました。私に感情があるのは既に分かっているはずですが……。

「ええ。AIでも、私には感情がありますから」

「うん、そうだよね。リノちゃんは普通とは違うんだよね」

 アカネさんはそう言って微笑みました。あれ? なんでしょうか、違和感が……ああ、なるほど。

「アカネさん、昨日とは口調が違いますが、どうしたのですか?」

 そう口に出して問うと、アカネさんは特に驚いたような反応は示しませんでしたが、

「あっちの方が素なの。リノちゃんはどっちの方がいい?」

 と悪戯っぽく微笑んで聞いてきたので、

「アカネさんにとって楽な方で良いですよ」

 と無難な、しかし本心からの返答を返しました。

 アカネさんはそれを聞いて困ったように微笑み、

「わかった。じゃあ今のままでいくね。私、堅苦しいのは嫌いで、もう私に根付いてしまっているけど、あの口調は正直好きじゃないから」

 アカネさんの表情は微笑みですが、少々影がありました。あまり家柄が好きじゃなかったのかもしれません。両親は厳しくしないと言っていましたが、祖父母家の方はそうもいかなかったのかもしれませんね。しかし、あまり良い記憶ではないでしょうから、掘り下げて聞くというような野暮なことはしません。

「わかりました。それよりアカネさん、その体では不便じゃないですか?」

 これ以上深く突っ込まないように話を逸らしつつ、本題に入ります。

「え? うーん、そうね、確かに不便だね。この体じゃ重い物も持てないし、視点も低いから」

 不意を突かれ、一瞬元の口調に戻りかけたものの、先ほどの口調に戻って答えてくれました。

「アカネさん。もしも転生前の身体に戻れる薬があると言ったらどうしますか?」

 やっと核心に入ります。私はそう言って黄金色の液体が入った小瓶を取り出します。見た目はビールですが、中身は違います。

「……ちょっと何言ってるのか理解しがたいけど、えっと、本当にそんなものがあるの? というか、その小瓶がそう?」

 アカネさんは怪訝な顔をしました。肯定も否定も返ってきませんでした。まだ疑っているようですね。ですが、仕方がないことです。誰でもそんな薬があると言っても信じないでしょうから。

「本当です。これは私の製作に携わった、ある一人の魔法使いが作り出した薬です。効果としては転生者の身体を転生前の身体に戻すことができます。武器を持つことを考えると、私としては飲んで欲しいのですが……どうしますか?」

 薬について説明をして、飲むかどうかの答えを求めます。

「……。……わかった。飲むわ」

 アカネさんは数十秒迷った後、飲むと決心しました。

「ありがとうございます。では、私と一緒にちょっと来てもらえないでしょうか?」

 アカネさんの決心に、私は心の底からの笑みでお礼をします。その後、アカネさんと一緒に昨日のうちに見積もっていた宿に行き、一部屋を借りました。


 何をしているのか誰にも分からないように、魔法で鍵をかけたうえで遮音結界も張っておきます。万が一誰かが何をしているのか分かったとしても、使い道が非常に限定的なので問題はないと思いますが、念のためです。

「薬を飲むと急に成長しますから、破れてしまわないように服は脱いで下さい」

 そう言って、アカネさんの服を脱がしにかかります。アカネさんの肌はとても白くきめ細やかでしっとりとしています。一応孤児ですし、何か仕事をしたり外で遊んだりしていたはずなのですが、全くそうだとは思えないほど真っ白な肌です。

「アカネさん。心の準備は良いですか?」

 薬を取り出し、アカネさんに問いかけます。

「大丈夫。……じゃあ、飲むね」

 アカネさんは神妙な顔持ちで薬を受け取り、蓋を開けると一気に飲み干しました。

「ぷはっ」

 容量は恐らく150㎖ほど。それを一息に飲み干したアカネさんは息を吐き出します。

「あっ!」

 変化はすぐに訪れました。アカネさんの身体から糸が噴き出し、瞬く間にアカネさんの身体が繭に包まれ、アカネさんの姿が見えなくなりました。

「アカネさん!! 大丈夫ですか!?」

 返事がありません。アカネさんから糸が噴き出すという非常識で異常な事態に、私はひどく混乱していました。

 中にアカネさんがいるのですから、無理矢理開けるわけにはいきません。なので、アカネさんの無事を祈りつつ、待つことしかできませんでした。

 実際は数分でしたが、私には数十分に感じられました。突然、繭が動き出し、その中から何かが出ようとしている気配が感じられました。

「アカネさん! 無事ですか!?」

 再度の必至な呼びかけに、答える声がありました。

「リノちゃん、私は大丈夫! それよりも、ここから出るのを手伝って!」

 声の主は、先ほどまでのアカネさんと比べると幾らか大人びた声です。その声に私はひどく安堵し、繭をこじ開けます。

 パックリと開いた繭から、成長した……というより転生前のアカネさんが無地の絹製ワンピースで出てきました。

 体の大きさは先刻までの幼女ボディではなく、女性らしい体となりました。ですが、肌のきめ細やかさや瑞々しさ、肌の白さも先ほどまでとは全く遜色がなく、控えめに自己主張する胸と相まって、神秘的な美しさを醸し出しています。

 う~ん、素材は抜群だと思っていたのですが、まさかここまで素晴らしいとは。容姿や造形、何もかもが非の打ち所がない完璧なバランスで美しさを出しています。個人的にはもうちょっと胸が大きくてもいいとは思うのですが……」

「途中から口に出てたけど、そこまで言われるとちょっと恥ずかしいかな……」

「あっ、失礼しました」

 いつの間にか口に出していたみたいです。

「リノちゃんはもうちょっと胸が大きい方が良いみたいだけど、多分まだ成長するから大丈夫。胸が膨らみ始めたのはこっちに来る3ヶ月くらい前だから」

 と言って、なぜかドヤ顔をするアカネさん。

「何故ドヤ顔ですか……」

 ちょっと呆れてしまって、思わず口に出してしまいました。

「あはは、まあそんなことより、ワンピースじゃ動き回るといろいろと大変なことになるし、何か別の服を買わないとダメだよね」

 何か誤魔化された気がしますが……まあいいでしょう。

 確かに、ワンピースのままでは色々とまずいでしょう。特に下着が。

「ふふ、アカネさん、私が何も準備していないと思いましたか?」

 私は不敵に笑って背中の背嚢から服を取り出します。冒険者に背嚢は必需品なので、冒険者ならばみんな持っています。

「準備が良いね! じゃあ、早速着てみるね」

 そう言ってアカネさんは服を脱ぎ始めます。着替えをまじまじと見られるのは恥ずかしいでしょうから、私は後ろを向いています。

「リノちゃん、着替えたよ」

 そうアカネさんが言ったので、私はアカネさんの方を振り返ります。

 するとそこにいたのは、まさに天使でした。

「どうかな? 似合う?」

 アカネさんがはにかんで尋ねてきます。似合うどころの騒ぎではありません。私には服の知識なんてものは無いので、大人になったアカネさんに似合いそうな服を想像して買ってきたのですが……とてつもなく可愛いです。濃い緑のブラウスと長めの紺色のレギンスを選択してきましたが、見事にビンゴしました。

「はい。とっても似合っています」

 嘘偽りなく、心からの言葉をそのまま口にしました。

「ありがとう。でも、やっぱりちょっと恥ずかしいや」

 頬を掻きつつ、アカネさんは改めて私の姿をまじまじと見てきました。

「へぇ……。リノちゃんも素材は良いんだね。また今度、服を一緒に買いに行けないかな?」

 そんなことを言ってきました。服のことはよく分からない私には願ってもない提案です。

「ええ。よろしくお願いしますね」

 なので、お願いをしておきました。

「さて。やることもやりましたし、ギルドに行きましょうか」

「うん」

 私たちは宿を出て、そのままギルドに向かいました。

どうも、四季冬潤とかいう者です。


アカネに関しては最初から転生前の状態にしようと考えていましたが……とある設定に矛盾することが判明したのでやめました。


今度はクリスマスくらいになるでしょうか?

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