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人間が大好きな壊れたAIの話  作者: 四季 冬潤
第一章 リノ
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第十一話 決闘で性根を直します

 ウェルム君と手合わせをすることが決まりましたが、本人がいないと話にならないので、冒険者ギルドの端でミルクを飲みながら、再度回線をあさります。初めの回線から途中分離した回線なのですが、どうやらこの回線はかなり一般に普及しているようで、いろいろな情報があるようです。

 おっと、これは……『人の感情と表情の関係』ですか。あれ、これ、透さんの名前になっていますね。透さんが書いたのでしょうか。どちらにしても、私にとってありがたい物です。早速インストールしましょう。


-------------------------------------


インストール中……56%……100%。


インストール完了。


ファイルを展開……25%……49%……78%……100%。


データをスキャン……ファイルタイプ:バイナリファイル


アプリケーション名:ヴァイナリリーダーを起動中……起動完了。


ファイルを読み込み中……13%……28%……47%……71%……100%。


内容の確認、理解完了。


新機能:表情理解


更新ファイルを2つ確認。


展開中……展開完了。


更新中……83%……100%。


更新完了。スキル名:Magical power operationをLV.2に更新。

パッシブスキル名:Magical power suctionをLV.2に更新。


-------------------------------------


 今のファイルには、私がアクセスしたら同時に更新ファイルが送付されるようになっていたようです。それにより、魔力吸収と魔力操作の二つのスキルがレベルアップしました。そういえば、魔力吸収はまだ使ったことが無かったですね。今度試してみましょう。

 私が回線からファイルをインストールしている間に、ここからでは声はよく聞こえませんが、『子動物』の皆さんが帰ってきたようです。

 残っていたミルクを飲み干して、子動物の皆さんの方へ行きます。

 あれからどうやら一回だけ戦ってきたようです。その一回も、帰り道にエンカウントしたもののようです。

「こんにちは。さっきぶりですね」

 私がセレンに近づくと、向こうもこちらに気が付いたようで、笑顔で手を振ってくれました。おお、ちゃんと表情が解るようになっています。これで、目標の一つに近づいたわけです。

「あ、リノさん! さっきはありがとうございました!」

 そう言ってセレンがお辞儀をしました。

「そういえば、あんなに強いのなら、なんで下水道なんかに来ていたんですか?」

 頭を上げてすぐに、思い出したようにそう言われました。

「実は私は今日冒険者として登録したばかりで、これが初めての依頼だったのです。なので、万が一のことも考えて、余裕をもってこなせそうな依頼を選んだからですね」

 私が説明するとセレンは驚いた顔をしました。

「えっ!? あんなに強いのに、今日登録したばかりなんですか? あ、もしかして、すでに実戦を経験していたとか?」

 セレンが仮説を述べます。残念ながら、私は今日が初めての実戦です。そのことをセレンに伝えると、

「あれで初めてなんですか……。すごいですね……」

 なぜか落ち込んでしまいました。

「えっと、大丈夫ですか?」

 これが『心配』という感情ですか……。『人の感情と表情の関係』が凄く役に立っています。自分の持った感情が解るようになっています。

「いえ……、大丈夫です。私、初めて依頼を受けた時に、何もうまくできなくて……」

 セレンさんからどんよりとしたオーラが……。何とかしてフォローしないとまずいですね。

「それが普通ですよ。私は事前に知識があって、たまたま魔法が使えただけですから。私が異常なんです。」

「おい、そこのお前! 俺と勝負したいらしいな! 良いだろう、受けてやる!」

 ウェレム君が割り込んできました。人がどんよりしている時に……。空気が読めない人ですね。

「ええ、そうです」

 ちょっとイラっと来たので、そっけなく返事をしました。でも、『怒り』の感情も分かることができたのは少しうれしいです。

「なら、早く裏の訓練場に行くぞ!」

 ウェルム君はさっさと裏に行きます。私も裏に行こうとしたところ、セレンに袖をつかまれて、

「ウェルムはボコボコにしてやって」

 と無表情で言ってきました。相当怒ってらっしゃっる……。ウェルム君、後で怖いですよ……。


          ◇ ◇ ◇


 裏の訓練場には、既にかなり大勢の人がいました。いろいろと声が飛んでいます。

「嬢ちゃん! 怪我すんなよ!」

「ウェルムに灸をすえてやれ!」

「嬢ちゃん、負けんじゃねーぞ!」

 ウェルム君、完全にアウェーです。それほど目に余っていたのですね……。さっきから『……』ばかり使っている気がします。

 そんなことよりも、とにかくウェルム君を倒して天狗になっている彼を押し留めましょう。

「俺から行くぞ!」

 そう言ってウェルム君は私に切りかかってきます。真剣で。殺す気でしょうか? 一応真剣で戦うのはOKではあるのですが、それは両方合意の上であって、私は合意していません。まあ、当たらなければいいのですが。

 切りかかってきた剣をわざと紙一重で躱します。髪や服は斬られないようにします。

「くそっ! なんで当たらねぇんだよ!」

 こういう人は、一度完全に心を折った方が良さそうです。

 徹底的に剣を躱し続けます。


 約3分が経過しました。

「はあ、はあ……当たら……ねぇ」

 もうウェルム君は息が絶え絶えです。しかし、まだ子供なのに3分間も真剣を振り続けるって、かなりすごいことだと思いますが。

「えいっ」

「うおっ!?」

 攻撃がにぶった所で反撃開始です。まずは見当違いな方に振り抜きます。そしてどんどんと接近していくという鬼畜仕様で心を折りに行きます。あなたのプライドを逝かせます。

「うっ!」

 ウェルム君が体勢を崩してよろめきます。そのまま振り下ろすと脳天直撃ですが、当てません。逸らせて、顔面すれすれの下段切りを仕掛けます。

「っ!!」

 上体を大きく逸らされて、避けられます。避けれるようにしたのだから、当然ではありますが。

「ん」

 いったんバックステップで距離をとります。ウェルム君もよろよろと体勢を立て直します。

「うっ、ぉおおおおぉあおお!」

 ウェルム君ががむしゃらに私に向かって駆けてきます。

「……遅いです!」

 あえてギリギリまで避けません。ギリギリで避けて、服の裾に剣が掠ります。ですがそれを無視して、全速力でウェルム君の後ろに回り、強烈なひと振りをウェルム君の頭にお見舞いします。当然、死なない程度に手加減はしてあります。

 ボコッ、という鈍い音とともに、ウェルム君は意識が飛び、そのままうつぶせに倒れます。

「……ふうっ」

 額にうっすらと浮かんだ汗をぬぐいます。

「……おい、さっきの、見えたか?」

「いや、全然見えなかった……」

「最初は手加減してたのか……?」

「……俺、絶対にこの子だけは怒らせないようにしよう」

 恐れられました。

どうも、四季冬潤とかいう者です。

ウェルム君のパーティメンバー副リーダーじゃない女の子も、実は当初予定していなかったキャラです。後の展開を考えて、今後もきっと急にキャラが増えていくんだろうなぁ……と思うと、結構憂鬱で筆が進みませんw


次回は10月3日前後になると思います。

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