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83話 ウチのせいじゃない!(唯SIDE)

 どうしてこうなったのよ……


 黒ビキニ女を拉致ってちょっと脅そうと思っただけなのに……


 気が付けばウチは車で春翔君をはね飛ばしていた。 黒ビキニ女が突然車道に飛び出てきたから咄嗟にブレーキを踏んだけど、アクセルとブレーキを間違えて思い切りあの女をはね飛ばしていた。


 だけど道路に血溜まりの中に横たわっているのは春翔君…… あの女は今も必死に彼の名前を叫んでいる。


「どうして…… なんでこうなったのよ…… 」


 どう考えてもおかしいのだ。 まるで春翔君が車の前に瞬間移動したとしか思えない。 ウチの前に颯爽と現れたあの時のように。


 やがて聞こえてきた救急車とパトカーのサイレンの音。 目の前で春翔君が蘇生を施され、ストレッチャーに乗せられて運ばれて行くまで、ウチは車のハンドルから手を離せなかった。


「運転手さん、降りて来て下さい 」


 警官がドアを開けてウチに同行を求めると、急に体がガタガタと震え出した。 違う……


「ウチじゃないの…… 」


「えっ? 運転手さん? 」


「ウチじゃないわよ! あの女が全部悪いのよ! 」


 そう! 飛び出したあの女が悪いのよ! ウチは車を横付けしようとしただけ!


「ちょっと降りてきなさい。 現場検証しないと 」


「嫌よ! あの女を庇おうとした彼がいきなり現れたのよ? 一瞬で! 」


 警官はウチの顔を見ながら肩の無線で何やら話している。


「…… これは何かな? 」


 運転席のドアポケットには吸引器と白い結晶の入った小袋が雑に詰め込まれていた。


「ウチの車じゃない! ホントよ! 」




 聡にチャンスを与えるといい、あの女を拉致って脅して春翔君から身を退かせようと打ち合わせしたまでは良かった。 何を思ったのか、聡は秀樹を連れてきたのだ。


 この男はヤバイ…… ドラッグは普通にやるし、女は食い物としか思っていない。 ウチもその内の一人で、聡の女だからやられなかったくらいだ。


「あの女、ウマそうだな…… 」


 アイツの一言で脅す計画から強姦の計画に変わった。 ウチも女だから犯される恐怖はわかる…… 人としてあり得ない事だが、秀樹には逆らえなかったのだった。


 当初は学校祭が終わった後の帰り道が実行日だった。 一人の時を狙う筈だったけど、偶然ここであの女を見つけてしまったのだ。 しかも春翔君も一緒に……



「降りなさい。 覚醒剤だねこれは! 」


「違う! ウチじゃない! 」


 拉致を失敗したのもウチのせいじゃない!


 春翔君に怪我をさせたのもウチのせいじゃない!


 覚醒剤も強姦も全部ウチのせいじゃない!


 でもそんな言い訳は通用せず、ウチはその場で現行犯逮捕されたのだった。 

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