81話 嫉妬と勘違い(唯SIDE)
春翔君をモノにする為には、相手を知ることから。 今日は陵州高校の前で彼と鉢合わせを狙うことにした。 考えてみればウチは春翔君の何も知らない。 取り巻きの女達だって、四六時中彼と一緒にいるわけじゃないでしょ!
下校時間を狙って校門の前をウロウロしてみるけど、チャイムが鳴り響いても春翔君どころか誰も出てきやしない。
「陵…… 州祭? 」
校門前に設置され始めたアーチには学校祭の文字。 生徒達は準備の真っ最中なのだ。
「なんなのよ! 道理で誰も出てこないと思ったわ! 」
アーチ設営の男の子達に白い目で見られたけど、そんなことでめげはしない!
「またお会いしましたね、最上さん 」
「え…… うげっ! お嬢様! 」
アーチに気を取られていて、後ろから来ていたあの子に気が付かなかった。 側には昨日と同じく大男が控え、大荷物を抱えてウチを睨んでいる。
「今度は待ち伏せですか? バッチリメイクでご苦労様です 」
「え…… ええ、どうも…… 」
って違う! 危うくこの子のペースになるところだった。
「たまたま通りかかっただけよ! 」
「残念ながら春翔君はもう帰りましたよ。 今頃はもう自宅に着いている頃じゃないでしょうか 」
「なんだって!? 」
そんなはずは無い! ずっと校門は見張ってたんだから!
「嘘ついたってダメよ。 そうやって春翔君から引き離そうとしてるんでしょ? 」
彼女は呆れた顔でため息をひとつ。 憎たらしい女…… またウチの心に黒い渦が巻いていた。
「ちょっと可愛くてお嬢様だからって図に乗らないでくれる? 」
「貴様、お嬢様になんという口の…… 」
「やめて下さい蘇我君。 私はお嬢様ではありません 」
彼女は少し怒っている様子。 なんなの?
「昨日も申し上げた通り、春翔君に好意を寄せるのは構いません。 ですが昨日の今日でしつこくありませんか? 」
「本気の恋にしつこいも何もないわ。 アンタが本命の彼女なわけ? 」
「いえ、お付き合いはしていませんが 」
ほらやっぱり! ここで畳みかけてやる!
「しつこくしているのはアンタじゃないの? デスマス言葉でカッコつけちゃって、今どき流行らないのよそれ! 」
「私をけなしたければご自由に。 ですが他人をおとしめるようなあなたは春翔君には相応しくない…… お引き取り下さい 」
「はあ!? ケンカ売ってきたのはアンタの方でしょ? 彼女でもないアンタにどうこう言われる筋合いはないの! 」
はん! 強がって睨んでいるけど涙目じゃん! バカじゃないの?
「この人は俺の大事な人だ 」
その声に振り向くと、肩に鞄を担いだ彼がウチの後ろに立っていた。 やっと会えた…… けど、彼の目はとても冷たくウチを見下ろしている。
「春翔君! やっと…… 」
「帰ってくれ。 助けなきゃ良かったと思わせるなよ 」
え…… 今、なんて……
「用事があるならこんなことしなくたって俺に直接来ればいいだろ。 言葉遣いとか他人の事情も何も知らないでバカにするのは最低だ 」
最て…… い……
その後は覚えていない。 気が付けば春翔君の姿はどこにもなく、教師らしき男に声をかけられ、振り払って大通りを歩いていた。
運命の人に言われた言葉はウチをどん底まで突き落とした。 それもこれもあの女のせい…… あの女がいなければ、彼にあんなことを言われなかった筈。 ウチに手を伸ばしてくれた筈なんだ!
ピリリ……
「…… なに? 」
電話は聡からだった。 コイツもコイツでウザい……
ー 唯、やり直すチャンスをくれ! 俺はお前が好きなんだ! ー
そう、ウチの恋愛事情はずっとこうだった。 そうだ……
「いいよ、チャンスをあげる…… 」
あの女、絶対許さない……




