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24話 電話の横で

 ショーの行われていないイルカプールに来たはいいが、肝心のイルカ達は一匹も見当たらず。 奥のステージにはシャチが横たわり、お腹を見せてゴロゴロしていただけだった。


「あんたはあんな風にモテたいとか思ったことないの? 」


 仕方ないと引き返す途中で、高坂は笑いながら美紀のモテぶりを話題にしてくる。 そのニヤニヤは、俺がそんなキャラじゃないとわかっての事だ。


「興味ないな、なんだか疲れそうだし。 お前こそどうなんだよ? 」


 実際、高坂を『いい女』と言う男子は多い。 美紀やゆかり先輩にはほど遠いが、こいつも人気はある方だ。


「あたしも興味ないや。 あんたに同感 」


 本人は自覚なし。 今は多少がさつな所が目立つが、大人になったらきっと化けるタイプだろうと思う。


「そういやこの前クラスで人気投票やってたらしくてさ。 お前、ベスト5に入ってたらしいぞ 」


「興味なーい。 あたしはね、一人の男に愛されればそれでいいの。 っていうか、ウチの男子達またそんなことやってたの? 」


 ほお…… 一途な一面があるとは知らなかった。


「ウチの女子だって結構やってるだろ? この前やってた男子ランキング、ワースト1だったって蘇我が怒ってたぞ 」


「それ、あたしが蘇我に止めの一票入れたやつだ。 どうしても誰かに入れてって言われて参加した付き合いたくない男ランキング! 」


 俺達は顔を合わせて笑い合う。 俺も美紀の事を言えないな…… 水族館に来て魚を見やしない。 久々にこいつと話すのは楽しい。


 ー 御来館の皆様、11時30分より屋外プールにて…… ー




 話の途中で館内アナウンスが流れ、まもなくイルカとシャチのイベントが始まる旨を伝えた。 美紀達はまた見やすい席を取ると先に行ってしまったようだ。


「あたし達も…… 」


「あ、ごめん 」


 高坂が何かを言いかけたが、俺は着信の入ったスマホを取り出して応答する。


 ー 近江です。 こんにちは春翔君、今いいですか? ー


「こんにちは先輩。 はい、大丈夫ですよ 」


 先輩からの電話は、また図書館に俺を呼べと三浦さんから頼まれたという内容だった。 三浦さんに何を気に入られたのかはわからないが、会いたいとしつこいらしい。


 ー それじゃ伝えておきますね。 ごめんなさい、楽しい時間を邪魔してしまって ー


 うん!? まさか俺の予定を把握してるのか? ちょっと怖くなってきた。


「はぁ、そのうち。 それじゃ失礼します 」


 通話を終わらせると、なんだか高坂の表情が暗い。


「…… どうした? 」


「え? あ…… いや、なんでもない! それよりミキ達追いかけなくていいの? 」


 ついでに届いていたメールを高坂に見せてやる。


  疲れたらお昼ご飯時に合流でもいいよ。 フードコートの入口で待ってるからねー


「なにこれ 」


 美紀は美紀なりに気を使っているらしい。


「…… 絵文字使わないよね、ミキって 」


「そこじゃない 」


 すかさず突っ込んでやると、彼女はヘヘヘといつもの笑顔に戻っていた。 なんだ?


「あんたは疲れた? なんか、ちょっと顔色悪いみたいだし 」


「えっ? いや…… 」


 彼女は俺の言葉を聞かずにフードコートに向けて歩き出す。 実は眠気が俺を襲っていたのだ。 昼食時にみんなの前で飲むわけにはいかないと、バスの中でこっそり飲んだ成長遅延薬が原因だ。 飲まなければならない薬だが、今日くらいはやめておけば良かったと後悔する。


「はは…… ゴメンな 」


 『情けないなぁ』とため息をつかれたが、彼女は俺に手を差し伸べてくれる。


「ちょっと! フラフラじゃん! 」


「少し休めば大丈夫だよ 」





 そこからは少し記憶が飛んでいた。 どうやら俺はフードコートのテーブルに突っ伏して寝ていたらしい。


  こんなに調子悪いなら断れば良かったのに…… バーカ 


 夢の中でも高坂に怒られた。 が、その声はなんだかあたたかくて…… 


 目を開けるとそこには、向かいに座って頬杖をつき、ストローでつまらなさそうに遊ぶ高坂がいたのだった。

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