表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂った紫陽花の手記  作者: 青空
5/9

耐える冬

後半はただの愚痴です。読まなくても影響はありません!

年末、椿の家で水仙と花水木、そして私はお泊まり会をした。そこで花水木は椿のあどけない寝顔に惚れたのだと後に聞かされることとなる。

年が明けて、椿と水仙の間に生じた亀裂は修復不可能なくらいに広がっていた。

この頃から水仙は椿を悪くいうことが増えていった。椿や花水木のいないところで、延々と語られる悪意の言葉に心はすり減っていった。

『そもそも私の彼氏を取った椿が悪い』

『紫陽花も椿には近づかん方がいい』

『紫陽花は私といてくれるよね?』

中学を卒業してから久しく向けられることのなかった執着が怖かった。

執着は怖い。相手が気に入らない言葉を言ってしまうと、途端に泣かれるか、怒られるか、敵認定されるかのどれかになる。

この時私は真っ先に本心を隠すことを選んだ。まだ水仙の友情を信じて痛かった。

またこの頃の水仙は花水木への露骨なかまってアピールを始めていた。それに恐怖した花水木は。

なんと惚れている椿に相談したのだ。椿もまた水仙への不信感と嫌悪感が募ってたんだろう。嬉々として協力してたと思う。

一緒にショッピングモールに行ってお揃いのアクセサリーを買い、花水木に彼女がいるアピールをしたり。

水仙とのSNSをやめた方がいいと助言してたこともあったっけな。

花水木は椿にかまってもらえることが嬉しかったんだろう。どこに行っても椿の後を追いかけてたし、時には椿のことを可愛いと褒めていた。

その目は純粋で、鬼灯の時に感じたゾッとするものもなくて、内心花水木と椿がくっつけばいいのにと思ってたのは本人たちには内緒だ。

ただ3人でいるのはいたたまれなかったけど。

そんな折、私は自治会(高校で言うところの生徒会長)になった。そこで来る春の新入生を歓迎するイベントをやらなくちゃいけなくなった。

同級生の女の子の提案で衣装のドレスを作ることになり、忙しい日々が始まったのだ。

ドレスはひとり一着、高校で経験のある私はみんなが作れない分をサポートしながら男性用の衣装と、なかなかサークルに来れない子や縫えない子のドレス二着を作るという約束をした。

なかなかに無茶だったと思う。

睡眠時間は1時間を切って、いつも目の前が霞んで見えてた。

それでも椿が冷たいと落ち込む花水木を放っては置けないし、鬼灯とやり直し始めた椿に何かあった時にすぐ動けるようにもしておきたかった。

それに花水木の精神状態が不安定で、死にたいと言うことが増えたのも心配の種だった。たぶんいくら私が、

『死なないで』

『大事な友人が死んだら悲しい』

と慰めたところで意味なんてなかった。というか、そもそも花水木に友人として認識してもらえていたんだろうか。今でも甚だ謎である。

それにバンドの曲の練習もある。ふたりで演奏するところをひとり用に改変した分難しくなった楽譜を覚えなきゃいけなくて。

自治会長の仕事もあって。

ああ、県内の看護学科で繋がろうって話もあったな。

あ、事務から学祭メンバーを集めてって話もあった。

予算をぶん取る算段だって必要だし…。

やることがありすぎて、でも不安定な友人たちに頼ることはできなくて。

ある朝目が冷めると、下腹部が歩けないほど痛くなっていた。家族にも学校に行くのを止められて、花水木に伝言を頼んだけれど渋られて。

結局行くしかないのかと諦め、薬を飲んでふらふらの状態で登校した。帰りはバスの中で気絶して、電車の中でトイレとお友達状態で酸っぱくて苦いものを吐き出して。

その後予定してた他校の学生との話し合いも行かなくちゃいけなくて、薬を規定以上飲んで。手先が痺れた時には流石にやばいかな、と思ったけど気づかないふりをした。

もうどうでもいい。

帰宅した後また気を失った私は、次の朝衣装作りの予定が遅れていることに気づき絶望した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ