表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/250,000  作者: y
7/7

Again that Sights

 人の感覚とは曖昧なもので、気持ちや状態によって大きく変化する。いつだって同じように進んでいるはずの時間を早く感じたり、遅く感じたりする。今日の僕は完全に前者だった。50分あるはずの授業が10分ほどに感じた。それほどに僕の感覚を狂わせるなにかが、彼女にあったのだろう。そのことに驚いた。もともと僕は他人に興味を持つタイプではなかったのに、今日は彼女の反応が気になって仕方が無かった。次はどんな反応をしているのだろう。それを考えていると、授業はあっという間だった。

「ねえ、授業分かった?」彼女は感情が顔に出やすいので、不安なのがすぐに分かった。

「まあまあかな、一回目だからまだなんとも言えないけど」

「そっかー。まあ、一回目だからまだこれからだよね!」自分を励ましているようにしか聞こえない。フォローしておくべきか迷ったが、僕は間逆の選択をした。

「今日の授業ほとんど全部固まってたよ?大丈夫?」甘やかしてはダメだ、厳しくしようなどと保護者のような気持ちだった。

「え!?まさか見てたの!?やめてよ!!恥ずかしいじゃん!」大声で騒いでいる今の状況のほうが、よっぽど恥ずかしい。そもそも僕に見られたのも彼女が固まっているのが悪い。普通に授業を受けていたら、僕も見なかったのに。

「だって反応がおもしろかったから、つい、、、」僕は悪くないという思いを込めたつもりだったが、届かなかったみたいだ。

「ついじゃないよ!!ひどい!声かけてくれればよかったのに!」なぜか僕が悪いみたいになってしまった。

「まあまあ、落ち着こうよ美空ちゃん」こういう時に話に入ってきてくれる、さすが朝倉さんだ。

「聞いてよ、紗月ちゃん!この人ひどいんだよ」マジか。朝倉さんが来ても彼女は止まらなかった。

「言わなくていいよー 全部聞こえてるから」この一言で僕たちは初めて気づいた。教室で話していたのは僕たち二人だけだった。他の生徒たちは顔を見合わせてクスクス笑っている。さすがに恥ずかしかったのだろう、彼女は急に大人しくなった。

 昨日と同じメンバーで一緒に帰ることになったわけだが、彼女の僕を見る目が少し冷たい。

「黙ってずっと見ててごめん!」みんなと別れて二人になったタイミングで謝罪した。

「いや、大丈夫。私の方こそごめんね。いろいろと恥ずかしくて」いつもの彼女だった。これで一安心だ。

「じゃあ、私こっちだから。また明日ね」

「あ、うん。また明日」そう答えたあとで気づいた。彼女は笑っていたのだ。()()()()()()どこか切ない表情で――――。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ