Go home With
状況とは不思議なもので、さっきまで普通に話していた相手とも急に話しづらくなる。彼女と二人きりのこの状況で話題がなかなか見つからない。それでも必死に考えをめぐらせる。
「今日は楽しかったね。」彼女の方が早かった。
「う、うん。そうだね!楽しかった。」全力で普段通りを演じつつ答えた。
「誘ってくれて、ありがとう。うれしかった。」恥ずかしさからなのか、少し声が小さくなっているのがなんだか可愛らしい。
「こっちこそ、来てくれてありがとう。」僕も同じだろうが、夕日をうけて、彼女の顔が赤く見える。
「帰り道が一緒になる確率ってどれくらいだと思う?」質問が唐突すぎる。
「え?確率?こっちの方向から学校に来てる人を探せば分かると思うけど・・・」彼女との温度差感じ、間違ったと分かった。
「実際のデータが知りたいんじゃないよー、朝永くん現実的すぎだよ。もっとロマンを感じられないとモテないぞ!」くすくす笑いながらダメだしされた。ごもっともだ。
「じゃあ、20%ぐらい?」僕なりにロマンを考えて出した答えだった。
「君のモテ期はまだまだ先になりそうだね。」少し残念そうに微笑んでいた。僕には正解が分からなかった。
「じゃあ、正解は何%なの?」ただ単純に正解が知りたかった。
「なに言ってるの?正解なんて分からないよ。70%かもしれないし、20%かもしれない。でも私はすごく低い確率だと思う。」正解が分からないのにクイズを出すなんて、彼女はどこか不思議な人だ。
それから僕はずっと確率のことを考えていた。
「朝永くんは部活とかするつもりないの?」僕の思考が計算から会話に切り替えられた。
「うん、そんなに興味ある部活もないし。」
「私もそんな感じ、一緒だね。」この時、一緒という言葉がすごく心地よく聞こえた。
「だね。じゃあ、明日も、、」ここまで言いかけたが、最後までは言えなかった。
「ん?明日も何?」不思議そうに彼女が尋ねる。
「いや、なんでもない。」下手なごまかし方だとは思うが、これしか出来なかった。
「ふーん、じゃあ私こっちだから。また学校でね。」元気よく手を振る彼女が、夕日に照らされ、なんとも神秘的な美しさだった。
「うん、また学校で。」僕も軽く手を振り返した。オレンジ色の大きくて綺麗な夕日が、僕たちのいるこの街を照らし続けていた。