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中学生になる君へ

作者: 中坊駄浪

 5年生になるYは、近所に住んでいる同級生のH君とそのお兄さんのM君と友だちで、学校帰りや休みの日にときどき遊ぶのが楽しみでした。

 テレビアニメのプラモデルが同級生のあいだではやっていて、プラモデルを作って闘いごっこをしたり、プロレスごっこをして技をかけあったり、男の子らしい遊びをいろいろしました。

 やがてYが6年になるとM君は中学生になりましたが、M君はYとはよく遊んでくれて自転車や電車で街へでかけて、ゲームセンターへ行ってゲームをしたり、買い物をするくらい仲良くなりました。

 Y君が6年生の終わりくらいになるとM君は中学のことをいろいろ話してくれるようになりました。YはM君にはいわなかったけれど

(こわい先輩がいっぱいいるのかな、いじめられたりしたらいやだなあ)

と話をききながら心配していました。

 ある日、M君は部活のことを話してくれました。M君は中学では剣道部に入っています。そして、その剣道部にYを誘うような話をしてきました。そしてそれはときどきM君に会うたびにするようになりました。

 Yは少年野球などのスポーツをいっさいやらず、習い事はそろばんと習字だけでさほど活発なほうではないのでスポーツの剣道部に入るのが少し心配でした。

 でもY君は

『剣道部は休んでもあまり先輩もうるさくないしきびしくないし、好きにできるから楽だよ。』

 というようなことをいっていました。

 その頃はM君とはゲームのことや、さらにお互いに好きな音楽のバンドの話もするようになり、街に行くと楽器屋に行くようになり、シンセサイザーやエレキギター、ドラムセットなど展示してあるものをいじって遊ぶようになり仲良し度はアップしていきました。


 やがてYは中学生になりました。小学生の時は2クラスだった6年のころとは違い、中学になると一学年だけで8クラスでした。体育館である集会のときはずいぶんと人数が多く、にぎやかなのに驚きました。そして2,3年生の先輩たちは体格がよくほとんどの先輩がだぶだぶの太いズボンをはいていて元気がいいので少し圧倒されました。

 集会では部活の紹介がありました。剣道部の出番になり、M君も他の部員の人に混じって竹刀を持って素振りをしていました。前に剣道部のはなしをしているときにきいたM君より一級先輩で部長のAさんもいました。放課後、M君に誘われるまま、剣道部の部室へ行きました。A先輩にもM君からYのことは話がしてあるようでした。A先輩は近くで見ると坊主頭がよく似合い、目つきも鋭い、剣道にふさわしい迫力を持った人でした。A先輩もYが剣道部に入部すると思っているようできげんがよさそうでした。その日は特に練習はしないで話しを少しだけして帰りました。

 あとでM先輩からYが入部をするのか確かめてきたことがあったのですが、その時Yは

「入ることに決めてます。」

とだけ話したのでした。


 あるとき、同じ小学校の同じクラスのE君からバスケの練習を見に行かないかと誘われました。聞いてみると小学校のときの何人かで見に行くというのでYも

「見に行くだけならいいか」

と軽い気持ちで見学に行くことになりました。

 バスケの練習を見に行くと剣道のかっこうと違い、服装も軽そうで、先輩たちがシュートを決める動作もかっこよく見えてしまい、Yは一気に気持ちがバスケに傾いてしまいました。

 E君も一緒に行った見学の人たちもバスケに入部することになり、バスケがかっこよくなってしまったYも一緒に入部を決めてしまいました。こうしてYは他の同級生と一緒にバスケの練習に加わることになりました。けれどもYは、心の中がもやもやしていました。

 なぜなら、それは剣道部の先輩たちに入部のことわりの話しをしないまま、バスケ部に入ってしまったからです。

 しばらくの間、Yは剣道部の人たちに帰り道などで囲まれて無断で入部をやめたことでなぐられたり、文句をいわれたらいやだなと考えるようになりました。バスケ部も剣道部も練習は体育館の中なので、Yは剣道部の人たちから見られているようで落ち着かない気分でした。そしてYがこちらから謝りに行っても殴られにいくようで気分がすすみませんでした。

 

 そんなある日、体育館で剣道部のA先輩とすれ違うときがありました。Yはどんなことになるんだろうと考えましたが、みんなとバスケのコートのはしで練習の準備をしているので簡単に逃げられそうにありません。Yは覚悟を決めてその場にいることにしました。

 A先輩はYのほうを見ながら近づいてきます。印象的な鋭い目がギラッと光った気がして、Yは体が硬くなりました。A先輩は

「・・・・・・・・・・・。」

Yは緊張しすぎて何をいわれたのだか覚えていません、ただ

「すみません。」

とだけ謝りの言葉をいいました。

 その後、Yはバスケ部で練習を続けました。剣道部の人にはこちらからなるべく早く謝るべきだったと思いました。一年生の夏を過ぎるとYはバスケに夢中になりながらも剣道部とどっちがよかったろうとときどき考えることがありました。

 剣道部は休んでもおこられないし、楽だときいていました。一方、バスケ部に入ってみたけれど、顧問の先生はきびしく、ときどき

「やる気がないなら帰れ!」

と部員の人がいわれているのと見かけたりしています。さらに一年生は応援の声が小さいと先輩たちからおこられ、ボールもなかなかさわらせてもらえず、マラソンやトレーニングをさせられてばかりです。

 でも、たまに先輩から新しい練習を教えてもらったり、やさしい言葉で話しかけてもらったりするのでした。Yは親切な先輩が試合で活躍するとうれしくなったりしました。Yははっきりいえばバスケ部はきびしい部活だと感じていました。しかし、きびしかったから小学校のときより運動ができるようになったし、体が丈夫になってきた気がしました。

 Yは剣道部の人たちには期待をさせてしまって申し訳ないと思っていましたが、バスケ部に入ってよかったとも考えるようになりました。

 M君も剣道部に入らなかったYに対して後でいろいろいってくることはありませんでした。休みの日も遊ばなくなったかというとそんなことはなく、おたがいに休みの日にはあいかわらず街へ行ってゲームをしたり楽器屋で楽器をいじったりして楽しみました。

 YはM君に対しても同じ部活ではなくなったけれど前と同じように遊んでくれるので今まで以上にいい先輩だなと思うようになりました。






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