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鬼
僕という人間を語る上でまず初めに着目する点はなんといってもやはり、僕には生まれた時から両親がいなかった、ただそのことに尽きるだろう。もちろん、だからといって僕が愛情の欠けた不幸な幼年期を過ごしたわけではない。やさしい祖父母に限りのない愛情をわけてもらったつもりだ。少しの哀れみが多少なりともあったにせよ。とにかく、僕が言いたいのはそんなことではない。僕は自分を語りたいのだ。だから自分の記憶、体験したものになるべく忠実に、そして素直にならなければない。意味など無い。体験それ自体に意味など無い。僕は自分をただ語るのであって、そこに何かしらの分析その他いかなる憶測もそれは僕のなすべきことではない。僕が言いたいのはそういうことだ。ストーリーとはだいたいそういうもので、今から僕は自分のライフストーリーを語るのだ。