悪役令嬢に転生しちゃった男の話
読者「おい作者!ざまぁはあんのか?」
作者「あ?ねぇよんなもん!」
男は感情が表に出ることのない常に無表情で不愛想な人間だった。
男は人生が終わるまで読書と己を磨くことを趣味としていた。
男は門下生など地域住民に顔からくる威圧感で勘違いされていたが、地域活動を通して誤解も解け慕われていた。
男は本を読み柔術の鍛錬をし門下生の指導をし…日々を忙しくも楽しく過ごしていた。
そんな男がついに身を固めた。相手は門下生として護身術として柔術を習っていた10歳も齢の離れた女性だった。
女性は無表情で不愛想な男を初めは怖がっていたが、指導を受けるうちに気を使ってくれる男にほだされていった。
最初は意思の疎通が上手く行かずギクシャクしてしまうこともあったが、それも長い時を共に過ごし何も言わずとも阿吽の呼吸で意思の疎通も可能になった頃にはそれも無くなった。
子宝にも恵まれ2男2女の子供を作り、全員が立派に成長し巣立っていった。
そんな男が92歳となり病魔に侵され布団から起き上がれないほどに衰弱し、愛する家族に看取られながら息を引き取った…。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
一度沈んだはずの意識が急激に浮上し目を覚ます。
(――――…ん?何だ?私は死んだはずでは…?何故…目を覚ましたのだろうか?)
家族に看取られながら死んだはずの私が目を覚ましてしまったことに驚愕しつつもそれが顔にでることはない。
(むぅ…一体全体何が…くぅっ!?あ、頭が!?)
何が起きたのかと思考を巡らせたその時、突然にかつて経験したことのないほどの痛みを発すると同時に、見たこともないはずの人間の記憶が脳裏を埋め尽くす。
(こ、れは一体?)
次々と湧き出てくるかの様に溢れる記憶を一つ一つ確かめていくと、それは幼い少女の記憶のようだ。
何がどうなってこうなっているのかは定かではないが、そんな男にも確信していることがある。
(これは…少女の記憶…?いや、これは『少女』の記憶…?)
男はその幼い少女の記憶が自分の物であると…否、己が少女自身であると理解する。
(魂の輪廻転生…という物だろうか?この様なことになるのならもっとそれに関する知識を深めておくべきだったか?)
(男から少女になってしまうとは…いや、この場合は過去生を思い出してしまったことを悔いるべきか…)
どうしてかつての自分を思い出してしまったのか?剰え男の自我が主人格となってしまったことに、少女として生きていたであろう過去の己に同情する。
とはいえどうすることもできないので、男は溢れる記憶を辿ることで今の己がどこの誰かを知り、かつて生きていた世界とは全く異なる世界であることに驚く。
(ファンタジー小説も嗜んでいたが…それの通りであるならばこの世界は剣と魔法の世界と言うものなのだろうな…)
この世界は魔物や魔獣が跋扈し、日々生活圏を掛けて人と魔物達とで争っている。救いとしては多種族が住む世界で人族の国々が人族至上主義などの人種差別をすることもなく、また魔王や魔神・邪神といった世界の敵が存在しないことだろうか?
(この世界の信仰は精霊に向かっているようだな…ふむ、神が世界を作りそこに精霊を生み出して世界の管理者としたのか)
少女として生きてきた嘗ての己が男だった過去と同じく読書を趣味としていたため、記憶を遡ることで世界の知識を吸収していく。
(ダメだな…これ以上は負担が大きすぎる、時間はあるのだ…幸い私と同じく無表情の不愛想な人間として認識されているようだし、人格が変わってしまったことに気づかれて騒ぎになることもないだろう…)
(で、あるならば、これからはさらに読書の時間を増やし知識を得ていくとしよう…後は貴族の令嬢らしく礼儀作法なども学んでいかねばならぬだろうな)
男としての己は既に死に、輪廻転生により少女として生まれ変わったというのなら、女として生きていくことに否はない。
これから少女として生きていかねばならないことに若干気落ちしつつも、女として生きていくことを決める。
(未だ子供であるが故に、体が未熟ではあるが…だからこそ柔術が生きるやもしれん)
己を磨き続けてきた男は少女だからとて…いや、少女だからこそ護身も兼ねて己を鍛えることを決意する。
(まずは今一度寝るとしよう…未だ夜の深い時間帯のようだ、寝ながら記憶の整理をするとしよう)
男の記憶を思い出してしまったのが深夜だったため、幼い体は睡眠を欲し抗えないほどの睡魔に襲われ目を閉じる。
―――――――
「フォルトゥナ・ミグレット!私は君との婚約を破棄する!そしてこちらのエレナ…エレナ・カルミア男爵令嬢と婚約したことをここに宣言する!」
学園の卒業パーティで整った顔立ちの青年が婚約者に向けて大声で宣言した。パーティを楽しんでいた者たちはいきなりのことに戸惑い困惑する。
青年の隣には輝く金色の髪に緩くウェーブを掛け、顔を青ざめさせ大きなサファイアの様な瞳に涙を溜めた少女と、婚約破棄を突き付けた青年とは違うがやはり整った顔立ちの青年や少年達が正面にいる少女にキツイ眼差しを向けている。
「…」
「どうした!なぜ何も言わない!私は知っているぞ!君がここにいるエレナに陰湿な苛めをしていたことを!」
青年は傍らに立つ少女を守るかの様に抱き寄せ、令嬢を睨む。
「…」
「君がエレナにした数々の非道の証拠は私たちが持っている!言い逃れはできない!今この場で跪き頭を垂れて彼女に謝るんだ!」
「…」
「貴様!何故何も答えない!貴様は恥という言葉を知らんのか?非道を重ねておきながらそれを謝罪することすらせんのか!」
口を開かない令嬢に痺れを切らしたのか少女の周りに立っていた頑健な体をした青年が怒鳴る。
「…」
「ねぇ?きみがエレナを苛めてたんでしょ?なんでなんにも答えないの?」
幼げな可愛い容貌をしている少年が精一杯眉根を寄せて令嬢を睨む。
「貴女が犯人であるとの証拠はすでに出揃っているのですよ?今さら知らぬ存ぜぬでどうにかなるとでもお思いですか?」
線の細い体躯をした青年も令嬢を睨む。
「……」
それでも令嬢は答えない。何故、令嬢は立場を悪くするだけの沈黙を続けるのか?答えは簡単なことだった。
(………誰だろう?)
令嬢は少女はおろか青年達の顔さえ知らなかった。
今この場で令嬢を断罪している青年達はいずれこの国を背負って立つであろう言わばエリート達であった。
令嬢は知識として青年達の名前を知ってはいたが、顔は知らなかった。初対面だった。
令嬢は確かに王太子である青年と婚約していたし、その為の教育も受けていた。
だが今日に至るまで一度も面会したことはないし、それを避けてすらいた。令嬢は読書が好きだった。令嬢は体を鍛え技を磨くのが好きだった。令嬢にはとにかく無駄な時間を過ごしたくないという思いがあった。
だからこそ令嬢は学園に入る際、学園で学ぶ全てを入学前に習得し学籍だけは取得して一度も学園に通うことが無いようにした。全ては学園で無駄な時間を使わないために。
本来ならその様な無法は通らないはずだった。だが彼女の父親は親馬鹿だった。貴族であればコネや伝手を作る場でもある学園に通わなくてもいいと娘の我が儘を聞いてしまった。
学園側も上位貴族からの無茶ぶりには慣れていたため、ならばと学園での試験や知識の深さを探ったり魔法の才を確かめてみたりしたところ、学園に通うどころか今すぐにでも王城で働いてもらいたくなるほどの才能の持ち主であったことが分かり、国王直々に許可を出し本来学園で授業を受ける時間を勤務時間として、その他の時間は自由にしていいことになった。
令嬢は初め時間を拘束されることを嫌ったがそれ以外では学園に通うことになると説得され、学園に通うよりはマシか…と渋々頷いた。
王城で働く者達は未だ学生であるべきはずの年頃の令嬢が王城で働くことに苦虫を噛み潰したような表情でいたが、令嬢の働きぶりを見てその考えを捨て去り、令嬢に負けないように働くようになった。
国王や国の重臣らは王城で働く者らに悪い影響を与えないかという不安はあったが、逆に発奮するようになり、大いに安堵した。
毎日登城し仕事を熟して屋敷に帰っては読書と鍛錬に勤しんでいた令嬢は少女をいじめるどころか学園に通うことすらなかったのだから困惑するばかりである。
沈黙を破りついに令嬢が口を開く。
「色々と申し上げたいことは多々ありますが、まず一つ…よろしいでしょうか?」
「何だ?言い訳でもしたいのか?」
遂に口を開いたかと思えば何やら言いたいことがあるという令嬢を蔑んだ目で見る青年達。
「お聞きしたいのは一つだけでございます…皆さまはどこの何方でしょうか?」
シーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
一斉に周囲から音が無くなる。この場にいる件の令嬢以外の心が一致する…『え?それガチで言ってんの?』
王太子である青年は当然この国の貴族であれば知っている者であるし爵位が低ければ見たことがないこともあるかもしれない。だが学園に通ってさえいれば爵位が低かろうとも王太子をみることはあるだろうし、こうして卒業パーティに出席しているのだから知っているのは当然のことである。
だが残念ながら令嬢は一度も学園に通うことは無く王城で働いていたし、婚約者としても会わないようにしていたため知らなかった。
王太子以外にも宰相の子息であったり騎士団長の子息であったり第2王子であったりと顔立ちだけではなく生れも才能からも有名な者達に対して『貴方誰?』というのは衝撃発言であった。
行き成り音のしなくなった会場に胡乱げに視線を彷徨わせ「あら?音が無くなったわ…?」と呟く令嬢を見て周りの者たちは茫然としてしまう。
「き、君は言うに事欠いて私が誰だか分からないと?将来はこの国の王になるであろう王太子の私を指して?」
「あら?王太子殿下で在らせられましたの?お初にお目にかかります。私はデルム・ミグレット公爵が長女、フォルトゥナ・ミグレットと申します。以後お見知りおきを…」
令嬢としての初対面の挨拶をして第3者の周りの者たちに『え?婚約者なのに初対面なの?』という疑問を植え付けさらに口を開いていく。
「婚約破棄でしたわね?それに付きましては私や殿下だけの一存で決めるわけには参りませんので改めて国王陛下に話を通してからにしていただけますか?もちろん、直ぐにでも婚約は破棄させていただきますので」
「それから…そちらのエレナ嬢を私が苛めていたというお話ですが…お会いしたのは今日が初めてですし、何より何故私がそのようなことをしなければならないのでしょうか?」
何やらよく分からない茶番に巻き込まれたようで時間を無駄にしていることに若干の苛立ちを覚えていたが、敢えてずれた質問をする令嬢。
「それは当然君が私とエレナが仲良くしているのを見て嫉妬したからだろう?先ほども言ったが証拠は既に出ているんだ!言い逃れはできない!彼女に謝罪するんだ!」
王太子はあっさりと婚約破棄を受けた令嬢に肩透かしを食らったが気を取り直して令嬢に謝罪するよう要求する。
「嫉妬…ですか?私が?エレナ嬢に?それは何故ですの?何故私が殿下と仲良くしているエレナ嬢に嫉妬しなくてはならないのですか?―――私は殿下とお会いするのは今日が初めてな上に殿下との婚約に何ら魅力を感じてなど居りませんし殿下に恋愛の情など持ち合わせておりませんが?」
王太子に魅力なんて感じて無いと切り捨てる令嬢。
「……え?」
己が容姿や才能に自信の有った王太子はつい間抜け面を晒してしまう。さらに令嬢は畳みかける様に告げる。
「そもそも、私は今日まで学園に通ったことなどないのですよ?そのような私がどうして殿下とエレナ嬢の逢瀬を察知することができるのです?」
「学園に通ったことがないだと?なにを馬鹿なことを!今こうして卒業パーティに出席していること、なにより学園に貴様が毎日出席していたと記録にもあるんだぞ!」
自分に絶対の自信を持っていた王太子がバッサリと切り捨てられ、頽れたため代わりに騎士団長子息が声を荒げる。
「ええ、私が学園で学ぶことなど何一つありませんでしたので、お父様にお頼みして学籍だけの出席扱いにしていただいておりましたの」
「馬鹿な!そのようなことが罷り通るわけがない!一体誰に許可を得てそのようなこと!」
たとえ力ある貴族だろうが王族だろうがそのようなことができるはずがないと令嬢の言葉を切り捨てる。
「それはもちろん国王陛下に…ですが?陛下以外にそのようなことができる方がいるはずもありませんでしょう?」
「そのような馬鹿な話があるか!国王陛下自らがそのようなことをしたなどとよく口にできたな!?これは歴とした侮辱罪だぞ!?衛兵!この痴れ者を今すぐに捕縛せよ!」
令嬢の言葉は国王を侮辱するものだとして断罪する騎士団長子息。しかし衛兵が動こうとすると令嬢の護衛がそれを邪魔する。
「貴様ら!何故その女を守ろうとする!?そやつは陛下を侮辱したのだぞ!?」
問う騎士団長子息に護衛は淡々と答える。
「陛下を侮辱など為さっていないからです。」
護衛の言葉に耳を疑う一同。
「何を驚くことがございますの?ここにいらっしゃる護衛の皆さんは普段王城で働いている方々ですのよ?学園に通っていない私が、普段王城で働いていることをご存知ですの、そもそも確りと陛下には試験を通して私が学園に通っても意味がないことをご理解いただけたからこそ許可してくださったんですのよ?」
護衛は令嬢の事情を国王に知らされていたため護衛としての責務を全うしたのだった。
「し、しかし貴女がエレナ嬢を苛めているとの証拠や目撃証言が…」
震える声で宰相子息が声を出すが、それに被せるように令嬢が口を開く。
「ですから、学園に通っていない私がどのようにして苛めなどできると言うのです?その目撃証言や証拠とやらは信用できるのですか?どこで私を見たのですか?学園に通っていない私を」
「あ、え、いや、だが…証言が…」
しどろもどろになる宰相子息。
「その証言をした方や証拠とやらを見せていただけませんこと?そもそも学生の中にどれだけの方が私の顔を知っている方が居りますの?改めて申し上げますが…私、今日初めて学園に来たんですのよ?」
「が、学園に来ていなくとも社交界なりなんなりで顔を見て…」
「社交界も私一度も出ておりませんの…それで?私がエレナ嬢を苛めている処を見たと証言したというのはどこの何方ですの?教えてくださらないかしら?私時間を無駄にすることが嫌いなんですの…早くしてくださると嬉しいのですけど…?」
タジタジな青年達にグイグイと押し込めていく令嬢。そこに午後になったことを告げる鐘の音が響く。
「あら?もうそんな時間に…?これ以上は時間の浪費でしかありませんわね。あらぬ疑いを掛け剰え私に恥を掻かせたことは確りと陛下にお伝えいたしますわ。それでは殿下…皆様方、ごきげんよう」
イライラを少しだけ解消した終始無表情の令嬢は最後にそう口にして会場を出ていく。後に残されたのは道化が3人と困惑する学生だけである。
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「婚約破棄とはなぁ…どうせなら貴族でなくなれば面倒事に巻き込まれることもないだろうに…いや…いっその事家出するか?」
会場を出た令嬢は小声で独り言を呟くがそれを護衛が耳聡く聞きつけそれを国王に報告し、令嬢の家出は阻止される。
令嬢の力はすでに国として手放すことはできないほどに大きくなっており、国王は今回の失態で王位継承権を失った第一王子と第二王子の代わりに継承権第一位となった第三王子との婚約を宣言してしまう。
親同士で勝手に決められた婚約に反発したい令嬢だったが、前回の家出を阻止されたことから表向きは納得したように見せかけ時間を掛けて入念に準備して今度こそ逃げ出してしまう。
令嬢に逃げられた国王は即座に捜索網を張り巡らせるが網の目を掻い潜り国外へ逃げられてしまう。
隣国へと逃れた令嬢は持て余していた才能を武器に冒険者として活動を開始し、有名になるたびに行方をくらまし各国を転々とする。
各地で前世にて得た知識を基に村の畑の改良をしたり発展の手助けをしたりしていると、いつの頃からか無貌の聖女と呼ばれ始める。
聖女を得んと欲し各国の王もまた聖女捜索を開始するが未だ成果は上がっていない。
終わり。
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~人物紹介~
フォルトゥナ・ミグレット公爵令嬢(16)
主人公の元御爺さん。読書好きで修行大好き。
根は真面目だが面倒と無駄が嫌い、魔法があることを知り柔術のみならず魔法の修行も開始する。
今回の騒動が無ければ第一王子と結婚してたと思う。女として生まれ変わったので女として生きていくことに躊躇いはないが、できることなら男とそんな関係になりたくはないと思っている。
逃げ出した後は各地を転々としながら色々やってるうちに『無貌の聖女』と呼ばれるようになった。無貌と呼ばれる原因は無表情なのもあるが、何度も幻影魔法で顔どころか声や体格まで変えて活動していたため。言動や無表情は変わらないので聖女と呼ばれる様になったこの頃はすぐバレる様になったのが最近の悩み。
子供好きで王城で働いていたころは第三王子(8)と良く喋ったり遊んでいた。
エレナ(16)
本作の薄幸ヒロイン。小市民。
脳内お花畑な転生ヒロインではなく「いのちをだいじに」がモットーの現地人一般ピーポー。
孤児院で育ち男爵に養子として引き取られた元庶民。今回の騒動で家から追い出されまた庶民に戻った。
養子に取られ行き成りお貴族様が通う学園にいれられた可哀想な子。
貴族やべぇ怖いどうしよう…と悩んでいる処に颯爽と王子様が現れた。
敬語とかいらないよ、と言われたけれどそんなことはできませんと幾度となく断ろうとしたが、その度に王子が悲しそうな顔になってしまうため渋々受け入れた。(この時点で相手が王族だと知らない)
何度も話すうちに打ち解けてきて王子の側近や弟も集まるようになり逆ハーっぽくなった。本人はそんなつもりは無くただ友達と楽しく喋っているだけのつもり。
だがそれを見た他のご令嬢方がなんなのあの女!と苛めを開始。
苛めに悩んでいるとまたもや王子様が駆けつけ助けてくれ、側近達も問題解決のために動き出す。
主犯であるご令嬢方は焦り、一度も見たことのない第一王子の婚約者に罪を擦り付けてしまう。
でっち上げた証拠や証言を持ちより王子は激怒、証拠や証言の精査をすることもなく突っ走る。
この時点でエレナは苛めがなくなったのであの人が助けてくれたんだなーと安心しきっていた。
が、卒業パーティで婚約破棄と断罪そしてエレナとの婚約を発表するのだと息巻く王子を見て「え?どういうことなの?」と思っていたところに実は王子が王子であったことを知る。
茶番をしてる時も顔面蒼白、頭真っ白で何がなにやらよく分からなかったが、すぐに茶番が終わり処罰も無く庶民に落ちるだけで終わって、内心ほっとしていたのだが、王位継承権を放棄させられた元第一王子や元第二王子がちょくちょく会いに来るのが最近の悩み。
よくある魅了魔法とかではなく元からある魅力で王子がコロッといってしまったために騒動に巻き込まれた薄幸系美少女ヒロイン。
元第一王子(16)
猪突猛進系爽やか王子。ヒーロー
学園の庭園で頭を抱えて悩んでいるヒロインに救いの手を差し伸べた優しい男。
直情的な精神の持ち主で考えるよりもまず行動してしまい失敗が多いのだが持前の才能でカバーしてしまうため、自分の欠点に気が付かない。
自分の容姿に自信を持っており、女性であれば誰でも自分を好きになってくれると勘違いしてる自惚れ屋。
今回の騒動で王族ではなくなり継承権を喪失し騎士団の下っ端として働かされている。
エレナには本気で惚れているため、騎士見習いに落ちた今でも会いに行っているがエレナは来ないでほしいと思っている。
エレナがかまってくれないのが最近の悩み。
元第二王子(12)
小動物系切れ者王子。腹黒ではない。
エレナのことは友達として好きなだけであって異性として好きなわけでは無かった。
友達を陰湿な苛めから守ろうとがんばってただけの良い子。
茶番の最中に主人公の言を聞いて犯人はこの人じゃないなーと考え、即座に会場を抜け出し証拠や証言を提出した令嬢を調べ上げそれらを国王に提出した。今回は友達が苛められたことで頭に血が上ってしまい間違えたが、本来は元第一王子なんぞ目じゃないほどに切れ者。茶番中に最初だけしか出番がなく影が薄いのはそんな理由だったりする。
エレナと話してると顔が熱くなるのが最近の悩み。
第三王子(8)
お子ちゃま系花まる王子。将来は俺様系。
王子として何不自由なく育てられちょいちょい俺様の兆候が出ていたが、フォルトゥナと知り合いけちょんけちょんにのされたことで改心した。
その頃からフォルトゥナのことが好きなのだが兄の婚約者であるということを知り、自分の気持ちに蓋をするくらいには兄を尊敬していた。
だが今回の騒動で婚約が破棄され、フリーになったフォルトゥナを狙い裏で暗躍し始める。
見事婚約者になったことで気を良くし過去に家出しそうになっていたことを忘れてしまう。
案の定逃げられ全力で探すものの一向に捕まる気配がなく、泣いちゃう子。
泣いてばかりいても意味が無いと決意し良き王となるべく発奮する。
フォルトゥナに会えない寂しさから徐々に俺様の面がチラチラしてきている。
フォルトゥナと会えないのが最近というかもうずっと悩み。
騎士団長子息(16)
冷静系ワイルド男子。脳みそ筋肉ではない。
エレナは王子の友達だったので助けようとした。そこに男女の情はない。
考えられないわけではないが考えるのは好きではないため今回の騒動も宰相子息や王子が行動を決めそれにしたがっていただけ。
もし彼が自分の意思でエレナを助けようとしていたなら、茶番は起きなかった。
魔法は身体強化以外はさっぱりだが剣の腕は既に父親と同格であり、才能が光り輝いてる忠の人。
元第一王子が自分と同じ騎士見習いの同僚となってしまいどう接したらいいのか分からないのが最近の悩み。
宰相子息(16)
インテリ系見た目詐欺男子。こっちが脳筋。
考えることが大好きだが実は頭はそんなに良くない。完全に見た目詐欺。
冷静沈着っぽい見た目だが脳みそ筋肉。頭が良くないくせに考えることが好きというアホの子。
今回の騒動は第一王子とこいつの主導で動いてしまったのが原因。
宰相への道が閉ざされた訳ではないが、こいつが宰相にならなくて、もしかしたら国が救われたかもしれない。
考えることは好きなので後は頭が良くなれば国王の良き相談相手となるだろうが、下級文官として働かされることで改善されるかどうかは分からない。
文字を読んでると頭から煙が出てくるのが最近の悩み。
読者「恋愛はありますか?」
作者「いいや、ないよ」