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烏の濡れ羽色の甲冑
100 年という長い時を超えてようやく会えたのは、全身が烏の濡れ羽色の甲冑を身に纏った武士であった。
雪兎はすぐには二の句が継げなかった。
なぜならその武士の身の丈は非常に小さく、すぐに壊れてしまいそうな華奢な体躯だったからだ。
「…お前、ここまで一体どうやって来たんじゃ?お前のようなものがひとりでたどり着ける場所じゃあなかろ?」
「え?そう?なんで?」
武士は漆黒の面頬を取りながらまったく飾らずにそう答えた。
面頬の下から現れた顔は驚くほど幼く、12、3 歳ほどにしか見えない。
(非常に可愛いが…)
しかし、ひとりで途方も無い時を過ごし、自分のもとにたどり着く屈強な戦士を思い描いていた雪兎は、このような子どもが現れたことに心の整理ができなかった。
「なんでって、そりゃあ!お前のような小僧がとつぜ
「大丈夫。絶対幸せにするよ」
幼い武士は雪兎の言葉を遮り、愛くるしい笑顔で小生意気に言った。
「な、な、なんじゃ…!え、え、え、えらそうにぃ!!!」
雪兎の雪のような鞘はほんのり紅く染まった。