遅い遅い遅い!
いつからか私は「雪兎」と呼ばれるようになった。
以前はこのような名前ではなかったように思う。
もはや昔の名前などわかりはしないが。
とてもとても常人ではたどり着くことはできないであろう荒涼とした山々に囲まれ凍りついた湖の中央にある遺跡に私はひとりで住んでいる。
私が想起できる最も古い記憶にはじいさまがいる。
一緒にここで暮らしていた。
じいさまが事切れてから後、私は朝日を見るたび神殿の壁に傷を付けた。
でもその数が 36,500 を超えたとき、もう、やめた。
毛ほどの意味もないことがわかったから。
そもそも聞いていた話と随分違う。
じいさまはこう言った。
「まもなくお前を綾取ることのできる者が現れる。
お前はその方に忠誠を誓うのだ。
よいな」
と。
そしてこうも言った。
「その方は不意に現れるだろう。
それまでに[これ]を暗記しておくのだ。
よいな。
現れたら落ち着いて暗記した内容を話すのだよ」
私は何度も何度も読み合わせをした。
何度も何度も。
ひとりで。
いつか現れたその方に流れるように言えるよう。
今ではまるで最初から自分の言葉であったかのように、心の奥底から自然と溢れ出るかのように、伝えることができる。
私はいつからは「雪兎」と呼ばれるようになった。
魔剣雪兎。
いつか辿り着く戦士に私は私を使役する上での呪いを流れるように伝え、それでもと踏み出す戦士に対して忠誠をちか…
『魔剣雪兎はここかっ!?』
「もー!!おそいよ!!!あほー!!!!」