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「派手にやらかしたなぁ、まだ小学生だってのに。」


父はまるで当たり前の事かのように「はな」を片手で持ち上げ、開いてる目を手でそっと閉ざした。


「何?これアイリの隠し子?」


怖くて声がでない。

僕はぎこちなく首をふった。


「ふーん…まあ、どうでもいいんだけど。アイリが来る前に片付けるか。」


父はそう言うと僕に「はな」を渡した。


「お前もそれも邪魔だからどっか持っていって。」



重い。



こんなにも重い。

こんなにも重いのに、こんなにも簡単に人の命を終わらせる事ができてしまうなんて。

僕は涙を堪えながらずっと「はな」を大切に抱えていた。

「はな」は始めに触った時より、なんだか硬く感じた。







「よし、綺麗になった。」


ファブリーズをかけるとほんのりとしたミントの香りで血の臭いは部屋から消えた。


そして、血の臭いはよりいっそう僕にこびりついた気がした。



「お前自分が殺したくせに大事に抱えてんじゃねーよ」


「だって…」


父のあまりの対応の早さに心が置いてかれてるのか、言葉がまだうまくでない。

僕がいるのはまだあの血だまりの部屋の中だ。


そんな父は僕に近づいてくるとそっと身体を腕でつつんだ。

求めていた温もりのはずなのに、身体は異常に父を拒んだ。


「ごめんな、今までこんな寂しい想いさせて。」


父はそう告げてそっと僕から離れると、「はな」を持って去っていった。



「お父さん、僕の名前忘れたのかな…。」



机の上には質のいい紙が一枚置かれていて、帰ってきた母はそれを見ると少し悲しげな表情をしたのだった。





その日から僕の苗字は「北上」から「高島」に変わった。









離婚をしてから母は帰って来ることがなくなった。

僕ももう、愛情を求める事はやめた。


「あ、僕の星座一位だ。」


今日は、最悪な事が起こるかもしれない。








お気に入りの水色のパーカーを着ると僕は中学の入学式へと向かうのであった。




「…あ、いってきます!」





誰もいない玄関に笑いかけて。

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