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Last-Wolf.  作者: 華月蒼.
3/3

X+3日目(最終日)


――村民会議により、半沢さんは処刑されました。

――翌日の朝、共有者・ロキは無惨な姿で発見された…




          あなたと生き残れるならば、

                                それだけでいい







「まさか、アイツがホントに処刑されるなんてね……まぁ、ワタシも入れたんだけど」

「でも、霊能が抜かれてるから、白黒判断できないな…」

「ところで、ロキさんが噛まれましたけど、進行はどうしましょう?」


 朝になって、僕が村の広場に行くと、既にみんな集まっていた。


「おはようございます」

「あら、おはよう。瑞樹チャン」

「ずいぶん遅かったな、瑞樹」

「おはよ。そういえば、瑞樹と花山サンは完グレだよな」

「そういうアンタはウラヌちゃんから黒出しもらってるじゃないの、カンザキ」

「だからオレは村人だっつの!オレ視点ウラヌは偽占いだし、そのウラヌの白もらいの半沢とナナミヤ吊れば終わるんだよ!そう思ったからアンタも半沢に投票したんじゃないのかよ!?」

「確かに昨日はそう思ったわよ。実際アイツに投票もしたし。でも、今日になってみてワタシの考察もちょっと変わったのよ。ウラヌが実際偽占いだとしても本物だったとしても、占いローラーを決行した時点でアンタは吊るべきだったのよ!」


 今日はカンザキと花山さんが言い争っているようだ。僕としては、占い師候補であったウラヌさんに人狼判定をもらっているカンザキがここまで生き残っているのも怖いし、僕と同じグレーの花山さんが生き残っているのも、心強いと感じるとともに、少しだけ不安も感じている。


「もう、考えもまとまらないし、僕もうこんなのやめたいよ」


 溜め息を吐いて、隣に座る聖太に愚痴る。


「何言ってんだよ、瑞樹。俺たち二人とも、生き残ろうって言ってたじゃないか」


 周りに聞こえないようにそう囁く聖太の声は、少しだけ怒っているようだ。みんなの死角になる位置でそっと繋がれた手を、握り返してみる。僕より少しだけ高い体温に、安心感を覚える。


「この騒動が終わったら、二人で引っ越そう?どこか遠い街で、また一からやろう?」

「…うん。ありがと、聖太」


 もうちょっと、頑張ってみる。そう言う前に、僕たちの会話は遮られてしまう。


「こう言い争ってても、ラチが明かないな…もう、狩人だっつー聖太に仕切り任せた方がいいんじゃねーの?」

「それでも構わないけど、理由がほしいわね、谷塚」

「そうですね…。僕としても、聖太君が狩人とは断定しきれないと思いますし。正直言うと狩人というのも騙りかもしれないと考えています。場合によっては谷塚君も吊ることになるかもしれません」

「花山もナナミヤも細けぇなー…まぁ、仕方ねぇか。オレが聖太を本物だと思った理由はこうだ。

 まず、オレの能力者と人外の内訳は、共有:ミヤノ・ロキ、占い:ウラヌ、霊能:村長、狩人:聖太、狐:いろは、人狼:花山、半沢、それともう一人はわからない」

「ちょっと待てよ!村長が霊能者だって!?そんなんアリかよ!?」

「ありえなくはねーだろ?実際、本物の内訳なんか村長しか知らなかったワケだし」

「それは良いとしたって、ワタシが人狼ですって!?それこそありえないわよ!大体、アンタの予想が仮に正しかったとして、ワタシが人狼なら、何で同じ人狼の半沢に投票するのよ!おかしいじゃない!」

「それはアレだろ、所謂『身内切り』ってヤツじゃね?」

「はぁぁッ!?」

「僕としては、ウラヌさんが本物の占いってことは無いと思いますけど、霊能のゴウヤさんがニセモノだとしたら、今までの僕の考察が破綻するんですよね。でも、花山さんが人狼ってのは、言われてみればしっくりこないこともないかも…」

「ちょっ、何言ってんのよナナミヤ!」


 谷塚さんの意見は、僕にはさっぱりわからないが、まともな考察も出来ない僕に、口出しする権利なんてあるのだろうか。


「正直オレはお前の意見には賛同しかねるぜ、谷塚。第一、ウラヌが本物の占いなら、半沢が人狼ってのはちょっとおかしいんじゃねぇか?」


 カンザキの意見を聞いて、それも確かにそうだと思った。谷塚さんがなぜそんな破綻した理論を持ち出したのか、その理由はさっぱりわからないが。


「とりあえず、日も傾いてきたし、今日の意見をもとに、各々怪しいと思う人に投票してください」


 村民たちに気まずい沈黙が流れる中、聖太の一声で今日の投票が開始された。




***


――村民会議により、花山さんは処刑されました。

――翌日の朝、村人・ナナミヤは無惨な姿で発見された…


***




「チクショウッ!!なんで終わらねぇんだよ!!」


 村に響くカンザキの怒鳴り声がこだまする。


「そりゃ、お前がラストだからじゃねーの?人狼サンッ!」

「だからなんでそうなるんだよ!?どっからどー見てもお前の理論は破綻してるじゃねーか、谷塚!」

「オレ的にはー、お前吊れればオシマイなんだから、今日お前を吊れれば理論なんてどーでもイイんだよ!」

「ハァァァァッ!?……谷塚、お前狂ってんじゃねぇのか!?」


 確かに、谷塚さんは普段から言動が二転三転し、よくわからないことは多々あった。僕は谷塚さんはそういう人だ、と思っていたけれど、こういう時に谷塚さんのそういった性格は、少し困るなと思った。


「聖太、どう思う?」


 黒出しされているカンザキと、狂人じみた言動の目立つ谷塚さん。どちらを信じればいいのかわからず、聖太に意見を求めてみた。


「…うーん」


 聖太もこれには困り果てた様子で、煮え切らない応えが返ってきた。


「聖太!瑞樹!コイツは理論も破綻してる!コイツを信じる道理はないはずだぜ!?」

「狂っていてもヒトはヒトだぜ、聖太?それよりも、黒出しされてるカンザキを処刑する方が、理にかなってると思わねぇか!?」


 花山さんが処刑される前、占いを処刑した時点で黒出しされたカンザキも吊るべきだったと言っていた。この点に関しては、僕は特に異論を持たない。しかし同時に、たとえ狂っていたとしても、ヒトはヒトという、谷塚さんの言う意見にも、僕は異論はない。人狼でなければ、僕たち村人を襲撃することはできないし、特別脅威にはならないともいえるだろう。


「オレの見解としては」


 聖太が静かに口を開く。


「霊能はやはり、ゴウヤだったと思う。そのゴウヤの判定ではウラヌさんは黒。よって、占い破綻したアユノは狐かそれ以外の何かだろうと思う。つまり、占い師の本物はいろはちゃんだろう。そのいろはちゃんは、谷塚を人間だと言っていた。だったら、オレはたとえニセモノの占い師だろうと黒出しされたカンザキこそ、処刑すべきではないかと考えるよ」


 聖太の言葉に、カンザキはどさりと膝を落とした。




***


――村民会議により、カンザキさんは処刑されました。


***


 その日の晩。

 谷塚はご機嫌な様子で自宅に帰ってきた。自分の他に残っている村民は瑞樹と聖太のみ。どちらかが今夜咬まれれば、自分と人狼の二人が残ることになる。

 この何日か、村人たちの中で適当に行けんを言っては場を引っ掻き回すのは、とても楽しかった。この村が無くなったとしても、また次の村に行き、人狼を呼び寄せようか。この遊びはしばらく飽きないだろう、と谷塚は考えていた。

 夜も更けたころ、家の粗末なドアをノックする音がする。こんな時間に自分を訪ねてくるような人間に、今の残りの村民からは心当たりはなかったが、酒を飲みフンフンと鼻歌を歌う程度には上機嫌の谷塚は、その向こうにいるものを特に確認したりせずに、家に招き入れた。と、同時に、首筋を勢いよく噛まれ、目の前が真っ赤になる。

 そこでようやく、谷塚は自分が何を家に招き入れたのかを悟った。

 遠くなる意識の中、谷塚が最後に見たものは、仲睦まじく歩き去る恋人たちの姿だった。






短編「Last-Wolf.」のあとがき・ネタばらしです。

とはいっても、作品の外で作品の説明をするのがあまり得意ではないので、大したことは書かないつもり(笑)




この短編は、「汝は人狼なりや?」というTRPGをもとにしています。

このゲームは、村人と人狼、その他の陣営に分かれて、議論と考察をもとに進めるゲームです。まぁ、ネットなどで検索すれば、いろいろな解説サイト様が出てきますので、そちらを参考にしていただければ幸いです。

今回の短編では、作中での明記はしませんでしたが所謂「恋人村」という、特殊ルールを採用しています。




ここから本格的にネタばらし。

作中のキャラクターの配役です。



(短編開始時の日付は、最初の襲撃があった夜を初日とすると7日目昼です)


村人陣営

 占い師:いろは(3日目処刑)

 霊能者:ゴウヤ(6日目襲撃)

 狩人:シアン(5日目襲撃)

 役職なし:花山、ナナミヤ、カンザキ、瑞樹(恋人)、その他3名


人狼陣営

 人狼:聖太(恋人)・半沢(7日目処刑)・ウラヌ(占い騙り・4日目処刑)

 狂人:谷塚(9日目襲撃)


妖狐陣営

 妖狐:アユノ(占い騙り・2日目処刑)


恋人陣営

 キューピッド:えにし(5日目処刑)

 恋人:瑞樹(村人)・聖太(人狼)




個人的には、花山と半沢のキャラ・関係性がお気に入りです。その割にすぐ処刑されたけど(笑)

オネェキャラと関西弁キャラは、一度本格的に書いてみたかったので、思いつきで出してみたのですが、意外と気に入ってしまったので、またどこかの短編にひょっこり出てくるかもしれません。


実は、この話を書く前に、某巨大創作物晒しサイト(普通にピ●シブって言おうよw)で見かけた人狼パロディ物にハマってしまいまして(笑)

それからちょくちょく創作物を漁ったりしているうちに、人狼のチャットなども観戦するようになりまして……そのうち自分でも実戦してみたいとは思ってるのですが、複雑なゲームゆえに、観戦から実戦に移るまでには相当かかりそうです(笑)




この話では、所謂「恋人陣営」である瑞樹と聖太の勝利で終わっていますが、実際のゲームでは、恋人や妖狐などの第三・第四陣営は特に勝利しづらいように感じます。

作中でもちょっと天界に無理があったかな―、などと反省中…

配役は最初話を上げてから考えたので、瑞樹は最初素村の予定だったのですが……思いつきで恋人ルールなんて採用するもんじゃないですね(笑)

猫又が登場しなかっただけマシかな?




今回は、リプレイ風小説ではなく、瑞樹という1人の村人の視点をメインにしたお話のため、他のキャラクター達や役職などの夜の会話等は書かない予定です。





短編は基本的に、気の向くままに書き始めたりすることが多いので、ここまで設定ガチガチに固めたモノはしばらく書かないかもです(笑)そして多分これも長編にしたらきっとgdgdになっていただろう…←


ではでは、次に浮上するのはいつになるかわかりませんが!

ご読了ありがとうございました!






130109 write.

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