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Last-Wolf.  作者: 華月蒼.
2/3

X+2日目

「今日の指定は聖太だ。カムアウトが無ければ、今日の吊りだ」



          あなたも生き残れるならば、

                                   それがいい







「ちょっと待っ…」

「ちょい待ちいや、瑞樹。そなあからさまな庇い方したら、自分疑われるで?」


 共有者に反論しようとした僕の頭をぽん、と軽く叩き、半沢さんが前に出る。半沢さんは僕を何かと気にかけてくれる近所のお兄さんだ。温厚で知的な人柄は、僕も尊敬している。


「共有はんも、そないに威圧感たっぷりやさかい、聖太クンもカムしにくいやん、なぁ?」


 眼鏡の位置を直しながらそう言う半沢さんに、共有者はギロリと睨み付けたが、それ以上は何もしなかった。


「狩人、カムアウトです」


 共有者からの威圧が和らいだ頃、聖太はぽつりと言った。


――狩人生きてたのかよ

――ウソ乙。吊り吊り


 村民からの心無い言葉に、聖太は泣きそうな表情で眉根を寄せる。


「とりあえず、『狩人日誌』を提出してもらえるかしら、聖チャン?」


 俯きかけながら細かく震える聖太に、花山さんが優しく言う。彼の言葉に頷いた聖太は、日誌を取りに行くと言い、走って行った。


「花山、そんな猶予なんざ与えたって、どうせ吊りだ」

「あら、共有サンはちょっと早合点し過ぎよぉ。聖チャンが狩人なんてびっくりだけど、私視点、有り得ない内訳じゃないわよ?むしろ怪しいのは…」


 花山さんは目を細めてチラリと半沢さんを見る。


「何やオカマ野郎、俺が怪しい言うんか」

「何よこの似非関西弁野郎。アンタなんか真っ黒よ」

「真っ黒は自分やろこのオカマ!!」


 そのままぎゃあぎゃあと2人は口論を始めてしまう。半沢さんも花山さんも、普段は温厚でやさしい人柄なのだが、ウマが合わないらしく、2人揃うといつも口論になってしまう。

 ちなみに、半沢さんは3人出ていた占い師候補のうちの一人から「白出し」、つまり村人判定を貰っているがその真偽は不明だし、花山さんは僕と同じく誰からも占われていない「完全グレー」だ。


「『狩人日誌』です」


 そう言って戻ってきた聖太は、共有者に日誌を差し出す。共有者は聖太と騒いでいる半沢さんと花山さんを睨むと、聖太の日誌を読み上げた。


「事件初日、犠牲者:村長。

  人狼が入り込んでるなんて、気づかなくてごめんなさい、村長。今日からは精いっぱい能力を使って、絶対に人狼たちを村から排除して見せます。


事件二日目、処刑:アユノさん(占い師候補①)(翌日の霊能判定:村人)、犠牲者:カズハさん。

護衛先:ミヤノさん(共有者)

 占い師候補が3人も出るなんてびっくりだけど、アユノさんは共有者であるミヤノさんに黒出ししちゃって破綻。霊能と迷ったけど、共有いなくなって仕切りいなくなるのも困るし、共有鉄板護衛いきます。


事件三日目、処刑:いろはさん(占い師候補②)(翌日の霊能判定:村人)、犠牲者:ニシキさん。

護衛先:ロキさん(共有者)

 占い師は明日までに全員吊り切りだし、仕方ないよね。オレに黒出してくれればニセモノだってわかりやすいんだけど。そしてロキさんも共有者。共有者2人を交互に護衛していきます。


事件四日目、処刑:ウラヌさん(占い師候補③)(翌日の霊能判定:人狼)、犠牲者:ミヤノさん(共有者)。

護衛先:ロキさん(共有者)

 ニシキさんごめんなさい、素直にニシキさん鉄板してればよかったのかも…


事件五日目、処刑:えにしさん(翌日の霊能判定:村人)、犠牲者:シアンさん(翌日の霊能判定:村人)。

護衛先:ロキさん(共有者)

 少なくとも占い全吊りで人外は一匹吊れてるとは思うんだけど、残りがわかんないよ…。狐は?もしかして人狼に味方している人間もいたりするのかな…


事件六日目、処刑:おうのさん、犠牲者:ゴウヤさん(霊能者)。

護衛先:ロキさん(共有者)

 もうだめだわかんないよ!!


……以上だ」


 共有者、もといロキは、読み上げ終わった日誌をぱらぱらとめくり、もう一度聖太を睨んだ。


「聖チャンの日誌、とりあえず信用はできそうよね、ロキ?」

「信用はともかく、いったん保留にするしかないな。本当ならば人狼たちに狩人の居場所を知らせたくないから、そのまま潜伏死してほしいものだが」


 それを聞いて、聖太はほっとしたようだ。さっきまで八の字になっていた眉が、少しだけ元の位置に戻ったようだ。


「しかし、それだと今日の吊り指定先が無いな…」


 ポツリとつぶやく共有者の声は、村人全員にしっかりと響き渡った。

 僕からすれば、今残っている村人の内訳何てさっぱりわからないのだ。咬み殺されるのも怖いし、処刑されるのも怖い。かといって、生き延びていても、自分の意見を言って村の推理に貢献することも出来ていない。なぜ僕が咬み残されているのか不思議でならない。


「そういえば、カンザキ、自分ウラヌから黒判定もろてたやろ?」

「確かに、カンザキは人狼判定出ていたな」

「そんなの、言いがかりだ!オレは紛れもなく人間だし、むしろオレから見ればお前とナナミヤのが人狼くさいぜ、半沢!」

「そうよねぇ。私もそれは思ってたわ。もっとも、一番怪しいのは黒出しされてるカンザキなんだけど。でも逆にウラヌちゃんが人狼で、人狼側の囲いって考えると、カンザキをスケープゴートにしようとしたのかも、って思えるのよねぇ」

「霊能が抜かれたのは痛いですね。ラインが見れない」


 次々と語り出す村人たちの会話について行けない。もうそろそろ、吊られる覚悟を決めた方がいいのだろうか。


「そろそろ日が落ちるわよ?投票はどうするのかしら?」

「…今日は各々怪しいと思う人物に投票してくれ。理由は明日聞こう。……生きていれば、だが」





121218 write.

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