X+1日目
――今日の死体は誰だ?
――クソッ、霊能者が抜かれた…!!
――吊りは何回残ってる?
――狩人は生きてんのか…?
あなたが生き残れるならば、
それでいい
『人狼』という生き物を知っているだろうか。文字通り、ヒトと狼の姿を持つが、彼らは歴とした獣だ。昼間はヒトの姿をし、ヒトに混じりヒトのように振る舞う。が、夜になると、遠吠えで仲間と意思を交わし、ヒトを喰う。朝になると無残な姿の村人が発見される。
そんな人狼が、どうやら僕の住む村にもいつの間にか潜んでいたらしい。
ある日の朝、人狼に咬み殺された村長の死体が発見されて、事の次第が発覚した。村長の「村民会議により人狼と思しき人物を処刑し、村を人狼たちの手から守ってくれ」という遺言のもとに、村では『人狼狩り』が始まった。
村長の遺言によると、この村には、幾人かの能力者が住んでいたという。その内訳は村長しか知らないらしい。
対象となる人物が村人か人狼か、はたまた別の獣であるかがわかる《占い師》。彼は事件発覚から3日目までに、村民会議によって全員処刑された。占い師は1人だが、占い師として立候補した人物が3人いたのだ。村民会議では、この3人の中に少なくとも2人は『人外』がいるとし、候補者三名全員の処刑を決行した。
村民会議で処刑した人物の村人の是非を、降霊術により知る事ができるのが《霊能者》だ。彼の死体は今朝発見された。
村長の欠けた村で、村民をまとめているのが《共有者》だ。彼らは2人一組で相方を把握することができる。村人であることが確定されるため、村民会議を仕切る役割を担っている。共有者のうち、片方は既に人狼の手にかかっている。もう片方は健在で、今も村人たちの意見を聞いている。
そんな村民たちの中心になる能力者や、他の村人の中から任意の者を、人狼の襲撃から護衛するのが《狩人》の仕事だ。今回は村民の誰からも候補者が出なかったので、狩人が誰なのかはわからない。もしかしたらまだ生きているのかもしれないし、人狼に咬まれてしまったかもしれない。会議で処刑してしまった可能性もある。
また、村人の脅威となっているのは『人狼』だけではない。人狼と違い人間への襲撃こそ無いが、村人に混じり村の乗っ取りを虎視眈々と狙う獣、『狐』だ。狐が残っている限り、村に平和が訪れる訳ではない。人外による脅威は全て抹消しなければならない。それが村長のご遺志でもあったのだから。
「それじゃ、今日の吊り指定だ」
共有者の声に、顔を上げる。ここではどんな仕草や表情の一片でも、疑いや襲撃のきっかけになってしまう。生き残るには、できるだけ平常通りに振る舞わなければ。
「指定は、聖太だ。聖太、何か言い残すことは?能力者のカムアウト等が無ければ吊るが」
共有者が処刑に指名したのは、僕の恋人だった。
121218 write.