06 学校2
「そうだなー、まあ僕はあまり他の人のは見てないけど、二十二章のマユ子あいつのはバカだよなーだって、お花が笑ってる。とか書いてあるんだぜ。マジで笑えるし、ぷふふ」
マユ子? 章って自分の名前まで書いてあるのか? それに自分で書いたものなのか?
「福田君ほかには何か気に入った章はないの?」
僕はなんとか自分の章を聞き出そうとする。
「龍朗さぁ、なんでそんなほかの章ばっかり気にするわけ? 僕はそんなに他人のを見たりしないんだよ。だって一応プライバシーもあるだろうしさ」
福田は少し不機嫌になる。どうやらこれ以上は知らなそうだ。
「福田くん達もうすぐ授業が始まるから静かにしないと」
黒い長髪の少女が話しかけてきた。けれど顔はぼやけていてよく見えない。
「ちっ、うるさい女だな。それより俺の章を聞かせてやるよ」
「えっ、いいよ!」
僕は福田の章が周りの人にも影響するのではないかと、特に僕たちに注意してきた女子の事が心配になって止めようとしたが福田構わずに喋りだす。
学校は大好きだけど
給食の時間がいちばん大好きです
でもいちばん大好きなのはひるねです
だからみんなでおひるねしましょう
「えっ……」
福田は章を言い終えると急に居眠りをしだした。
それにつられるように教室にいた生徒全員が居眠りをしだした。
「なんだ? ……これ」
福田は完全に眠っていて起きる気配がない。
僕はその場を後にした。まだ一人目を見つけたばかりなのにこれ以上ほかの人を探しても無駄な気がして僕は気落ちした。
それにしても章とは何なのだろか、願いを叶える呪文というよりも子供が書いた作文のようだ。
けれどいくら考えても今の僕にそれを知るすべはなく、僕は学校を出てすぐの道路で止まった。
「……これからどうすればいいんだ。……はぁ」
出るのはため息ばかりだ。