05 学校1
「……どうやって探そうかと思っていたけど、……意外と簡単かもしれない」
僕は雨宮さんのいた場所から少し歩いた学校付近から妙な気配を感じ取っていた。ゆらゆらとぼやけた学校の教室の一室だけはっきりとして見えていた。
「やっぱり、あそこだよな……」
僕は学校に向かって坂を登っていく。途中他にも登校している黒い学生服の子が何人もいたけど全員顔がぼやけて見ることもできず、僕は気味が悪くて触れないように避けながら歩いていった。
学校に入ると一階からは何も感じずに階段を上がって二階の廊下に出ると二つ先の教室から違和感を感じた。その場所だけ明らかにはっきりと普通の教室に見える。
「二年B組みか……」
教室の中に入ると僕が探している三十二人の内の一人はすぐに見つかった。
扉側の列の四席目に座っている髪が短くてボサボサした出っ歯のメガネ。彼で間違いない。二年ということは僕と同い年だ。
「やっ、やあ、はじめまして」
「んっ? 何君?」
彼はボーッとしていて眠たそうな目をしている。
「僕は渡 龍朗、君と同じでこの世界に来んだけど……」
僕はまず彼がどんな人物なのかを探るため当たり障りのない会話をしてみる。
「へー、僕は福田だよ。福田 康介」
「福田君よろしく」
さてと、どう僕の章について話を切り出せばいいだろうか。正直に話してみるか? でもそれだと向こうが何してくるかわからないし牽制として僕も章を知っている振りをしたほうがいいのかな……
「それで君はさぁ、どの章がすごかったと思う?」
「えっ!」
いきなり向こうから話してきた! どうしよう、でも答えないとまずいよな。
「えーと、あれとか良かったよね。ほら、四章とか……」
僕は曖昧に返事をした。
「ぷふっ、四章? マニアックだなー、龍朗はさ!」
もう呼び捨て?
「僕はやっぱり自分の章が好きだな、十九章の……」
「あっ、待ってよ! 福田君が他に気に入ったのを先に聞いてみたいな」
僕は福田が自分の章を唱えるのを遮る。何が起こるか見当もつかない。それに福田は少し話をしにくい相手だ。マイペースというか自分の世界が激しそうというか。