04 少しの手掛かり
「…………お願いだよ」
僕はそれでもその子に頼るしかなかった。
「……章を、自分の章を思い出せばなんとかなるかもしれない」
「章? それを思い出せば帰れるの!」
「さあね、それは君次第だよ」
「そうか……でっ、その章はどうすれば思い出せるの? ってか、章って何?」
「私がこの池を出したときに言った言葉覚えている? あれが章」
僕はその子が池を出したときのことを思い出した。確かに詩のようなものを言っていたけど、つまり章は魔法の呪文なのだろうか?
「章は魔法の呪文みたいなものかな?」
聞いてみた。
「まあ、そんなものかな……」
「じゃあ僕にも魔法が使えるのかな?」
するとその子は呆れたように言った。
「君さあ、本当に何も見なかったんだね。……いいよ、面倒だけど君が何をすればいいのかだけ教えてあげる」
「本当! ありがとう」
やった! ようやく元の世界に帰る手がかりが。
「ここには私や君みたいに全員で三十二名の夢を叶えた子がいて皆あそこで自分の章を見たの。章は全部で三十二章、君の章もそこに書いてあったはずだから君が自分の章を思い出せないのなら他の子が君の章を見ていないか聞いてみることだね」
僕の他にも三十二人も……いや、少ないよね。どうやって探せば……
「ちなみに私は自分の章だけしか見ていないから」
「ほかの人はどうやって探せばいいかな?」
「……私を見つけた時と同じ要領でいけば? ただ気を付けないと危ない章の子もいるかもしれないからね」
もしかして、いや、もしかしなくても彼女は少し苛立っている?
「分かった気をつけるよ。えーと僕は渡 龍郎君は?」
「……雨宮ななみ」
「そう、いろいろ教えてくれてありがとう雨宮さん」
僕は雨宮さんにお礼を言ってその場を後にした。