18 雨宮の思い
「私はこの世界に来てからはものすごくマイペースに見えたでしょ。でもそれは嘘の私で本当の私はいつも何かに遠慮しているの。気を使って周りに合わせて……」
「そんな雨宮さんが?」
僕はようやく口が開けた。あまりにも信じられなくて。
「でもやっぱりマイペースにもなりきれなかったな。渡くんがこの世界で何も知らずにいるなんて……」
あっ、そういえば雨宮だけだった僕の手助けをしてくれたのは……
僕は雨宮に本当に感謝しなければいけないと思った。
「ごめん、雨宮の大事な時間を俺なんかのために使わせて……」
けれど口から出たのは感謝の言葉よりも謝罪の言葉だった。
「悪いと思っているのなら一つ頼み事をしてもいい?」
「えっ? いいよ! なんでもする!」
「そう、なら今から私が話すことを聞いたら馬鹿だなって、私を責めてくれる?」
「……分かった」
雨宮がこれから何を話すつもりなのかは分からない。僕はそれでも雨宮のいうことを聞いてあげたかった。
「私はこの世界に来る前に二人の友達がいたの。でもその二人とはあまり考えが合わなくて私のほうが合わせていたの。よくある話でしょ」
雨宮は小さく微笑んだ。
「小さい頃からそうだった。私は人に嫌われるのがすごく嫌で、でも自分に嘘をついて我慢ばかりして結局自分が一番自分を傷つけて……頭じゃ分かっているのに、それでも人に遠慮して自分を隠してた。だからめだか文集を学校で書くときにあの章を書いたのに……」
すると雨宮は両腕で目を隠して震える声で続けた。
「本当は……ただのんびりしたいって書けばいいのに……それなのに私は他にも何か書かなきゃ……ひっぐ……って、だから釣りって書いたの。したこともないくせに……のんびりしてるように見えたから……でも、やっぱり何もせずにのんびりしたいって書けばよかったのに」
雨宮は泣いて抑えている腕から涙は溢れこぼれていく。
僕は雨宮の頼みを聞いてあげた。
「バカ……だな」
僕の頬に涙が伝った。
「そう……私バカなのー」
雨宮は涙を流しながら笑った。




