08 ファミレス1
「……決まった?」
「あっ、でも僕お金が……」
財布は家に置いたままだ。
「いいよ、お金なんて必要ないし。高いやつ選びなよ」
「そうなの? それじゃあステーキ定食にしようかな」
「んっ」
雨宮さんは呼び鈴を押して店員が来るのを待つ。
「お待たせしました。ご注文を……」
「?」
店員は僕達に気づかないように周りをキョロキョロと見回した。
「あの、すみません……」
店員は僕の声に全く反応しない。
「そんなんじゃダメよ、もっとこうしないと」
そう言うと雨宮さんは店員のむなぐらを掴んで引き寄せた。
「シーフードパスタとステーキ定食持ってきて」
「は、はい、かしこまりました」
店員は慌てて厨房に行った。
「……あんなことして大丈夫なの?」
僕は唖然としていた。
「あれぐらいしないと私たちの意識が届かないからね」
「へぇ……あっ、ドリンクバーも頼んでもらえばよかった」
「行けばいいよ、好きなものとってくれば」
「へぇ、いいんだ……雨宮さんの分もとってくるよ。何がいい?」
「そう、じゃあ野菜ジュース」
「分かった」
僕はドリンクバーで勝手に飲み物をいれるけど誰も文句言ってこない。ちょっと楽しいかも。




