プロローグ
夜。
真っ暗で、今にも道が脆く崩れて消えてしまいそうな、夜。
そんな、夢の様に儚げな夜の道を、俺とシンは走っていた。
目的はただ一つ。脱獄である。
俺とシンは人を殺した。
何人も何人も、数えるのが嫌になる程。だから今更追われている事に対して、図々しく被害者を名乗る気は無い。でも、それでも、俺とシンは自由になりたい。
分かってる。
理解している。
我儘だって事は。
でも、あんな所____居るだけで、空気を吸うだけで、気が狂いそうだった。
罪人は、栄養失調で野垂れ死ぬ者、気が狂って看守に殺される者、自分で首を閉めて死ぬ者、様々だ。常に何処かで物が壊れ、泣き声と嬌声と怒声と罵声と悲鳴が彼方此方で爆発する様に生まれ、血の匂いと吐瀉物の匂いと食べ物が腐った匂いと死体の匂いとレイプ時の精子の匂いと内臓の匂いと排泄物の匂いと火薬の匂いとが混じり混ざり充満している。
挙げ句の果てには、死刑囚は頭を撃たれて其の儘死体を放置だ
あれは監獄では無い。
あれは刑務所では無い。
あれは____地獄だ。
いっそのこと死んだ方がマシだ。
彼処はヤバい。
そんな、殴り合い犯し合い奪い合い食べ合い飲み合い殺し合う囚人達の中で、傷付けられ、犯され、其れでも死なずに済んだのは、奇跡なのだろう。
そう思う。
だからこそ、神様が守ってくれた此の命____無駄にはしない。
そう思って、俺は脱走計画を立てる事にした。
俺の牢獄は今は一人で、前一緒だった囚人は犯して来たので、殺した。
だから、何とか看守の目を盗んで抜け出そう。そう思っていた。
だがしかし、シンが来た。
でもシンは俺にすごく優しく、何故か俺も信頼出来た。
だから俺はある日、シンに脱獄計画を話した。
一緒に脱獄しよう。と。
二つ返事だった。
でもこれは賭けだった。
看守にチクられれば殺される。
罪人にチクられれば口止めの代わりに死ぬまで色々な奴等から犯される。
でも、俺は勝った。
そして、何とか脱獄して今に至る。
経過したのは10分位だろうか。
看守は15分毎に来るから、もうすぐで、いない事が見つかる。其れ迄に出来る限りに逃げなければ。
「はっ、はっ、はっ……!」
「もう、ここまで来れば、大丈夫、だよ、リス……!」
「そ、そうか……もう、大丈夫か……」
シンが壁に手をついて肩で息をしているので、俺も止まる。疲れも苦しさも走っている時は感じなかったのに、止まって安心した途端、一気に疲れた俺は、壁に倒れる様にもたれかかった。
シンはそんな俺の事を、自分も苦しい筈なのに支えてくれる。
「大丈夫……リス……?」
「あぁ、大丈夫だ……。それより、脱獄計画其の二だ……」
「そのに?」
「其の二、家の持ち主殺して、必要な物を奪う……」




