【読み切り】
学校に放課後を告げるチャイムが鳴り響く。授業の合間はにぎわう保健室も、生徒の姿は一人も見受けられなくなった。ふぅっと、息をついて椅子に深く腰掛けたのはこの学校で保健の先生をしている、有森昂だ。今日ももうすぐ仕事が終わるだろうとリラックスしていた。そんなとき、邪魔する奴が現れた。
「昴せんせ!!お茶にする?お昼寝する?それともおーれ?」
「最後の意味わかんないですよ、杉原先生。」
「ぶー、こんなときは修輔って呼んでほしいな。」
「いやいや、まだ仮にも仕事中でしょうに。」
数学教師の杉原修輔は、そういっている昴の事も気にせずに保健室の中に入ってきた。そして、ガバッと後ろから抱きつく。
「ちょ・・・まだ生徒学校にいるんですよ?どうするんですかこんなとこみられたら!!」
「構わずカミングアウト。俺達付き合ってるんですーって言えばいいんだよ。」
「だめに決まってるでしょう!!即クビですよそんなの!!」
そう、昴と修輔は付き合っている恋人同士。でもそんなの世間一般で受け入れられにくい事は本人たちも痛いほど知っている。だからこの事は絶対に秘密にしないといけないのだが・・・・。
「冗談冗談。俺まだこの生活やめたくないしねー。」
「ほんとですかそれ?」
「ちょ・・・疑うなんてひどいなぁ。」
「ていうか、もうすぐテストなんじゃないんですか?他の先生方泡食ってますよ?社会科の森先生なんか徹夜だそうですし・・・国語の相田先生もたいへ・・・うひゃあ・・・!!?」
ふぅっと耳に息を吹きかけられ、昴はそこで言葉を切った。
「ちょ・・・なにするんですか!?」
「俺のいる前で他の男の事言うなー。」
「はい!?いいじゃないですか別に。同じ職場ですし。」
「でもやだ。」
「どこの子供ですかどこの。俺より二つ年上のくせに・・・。」
これじゃどっちが上だかもわからなくなる。
「ていうか、俺・・・先生がテスト作ってるとこみたことないんですけど・・・・。」
「ちゃんと作ってるよ?まぁ、ちゃちゃちゃっと。あんなの適当だよ。」
「てき・・・だめでしょうそれ。」
「適当に考えて、適当に生徒があれこれ悩むような問題にしてみた。前回もそうだったけど何の問題もなし。いやぁ、俺って天才じゃん。」
「自分で言わないでください。あと、離してください。」
「いやだ。一日一回はこうしないと気が済まない。」
「昨日も散々そう言って人から離れなかったじゃないですか。どうせ今日も帰ったってこうなんでしょう?それまで待てませんか?」
「まてないからこうしてるんじゃない。これでも今まで我慢してた方だぞ?」
「当たり前ですよ。学校でこんなことしてるの見られたらほんとに洒落にならないんですからね・・・。」
「昴は人の目気にしすぎだよ。」
「貴方が気にしなさすぎなだけです。僕まだ少し仕事残ってるんで、職員室にお帰り下さい。」
「冷たい反応嫌だぁ。」
「駄々こねないでくださいよ・・・・・・。」
「うー・・・じゃ、終わったら電話ちょうだい。俺も帰る。」
「はいはい。」
「じゃ、頑張ってのチューして?」
「はぁ!?」
「してして!!」
「いやです。」
「じゃ、いっかいしよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・なんでそうなる・・・。」
「だってせっかくこんな素敵なところに二人きりなんだもの。これを利用しないわけにはいかないでしょう。」
「しなくていいですし、保健室はあくまでそういう所じゃないですから。清潔感あふれるところですから。」
「え-俺清潔感あふれるでしょ?」
「むしろ逆ですよ。淫猥すぎる。存在自体が。」
「昴酷い。」
「貴方の頭がひどいですね。」
「じゃ、これで今は我慢する。」
「は・・・・んっ!?」
で、いきなり強引にキスされた。ていっても、触れるだけのあっさりした奴。
「じゃ、元気もらったからテストし上げちゃおーっと。あ、ちゃんと連絡してよ!続きは今晩ねー!!」
「しなくていいです!!」
去っていく修輔の姿を、昴は真っ赤な顔で見送った。
~終~
ふまじめに振り回されるまじめって感じですかね?
2人はすでに恋人同士って設定でした。