【下】
二人の恋の行方は―・・・・・・・・・
そのままの状態で、2人は雨の中を下校していた。雨はやはり弱まる様子を見せない。
「結構濡れねーもんだな。」
「そうだけどさ・・・・いつまで俺の事抱き寄せてるつもりだよ・・・。」
「こうしてねーと洸まで入んないじゃん。・・・嫌?」
「や・・・じゃないけど・・・・お前は平気なのか?」
「俺?俺は別に?洸なら平気。」
「俺なら平気ってどういう事だ?」
此処まで言っても分かんないかぁ・・・・どんだけ鈍感なのさ。いや、天然ってことにしておこうかな。
「直幸・・・・・・。」
「何?」
「あとで宿題貸して?」
「もう、宿題写す気なのか・・・・。」
「ん・・・・眠いから、帰ったら寝ようかなって・・・宿題出来たら電話ちょうだい。」
「何なら今からこのまま家帰って一緒に宿題やろう。」
「はぁ?なんでそうなんの?俺眠いんだよ・・・・。」
「今日も遅刻ギリギリまで寝ててよく言うよ。」
朝に弱い洸を起こしにいくのは直幸の日課だった。
あの寝起きの顔がたまらなくやばいんだけどなぁ。洸を起こしにいく役はだれにも譲れない。まぁ、洸はいつだって可愛いけど。
「なぁなぁ、洸って・・・・・・・・・・・・・やっぱいいや。」
「なんだよ、自分から聞いておいて。気になるじゃんか。」
「・・・・・・・洸って好きな奴とかいんの?」
「は・・・はぁ!?何いきなり・・・・。」
「いや、ふと思っただけ。」
嘘。いま一番の悩み。あんまり洸のそういう噂聞かないんだよな・・・・。いるって噂も、いないって噂も・・・聞いたことないけど・・・・・。
「・・・・・・・・・・・いるかもしんない・・・・。」
うはぁ・・・・一番聞きたくなかった言葉・・・。そりゃそうだよなぁ、洸だってもうれっきとした高校生だし?つかもう三年だし?俺もそうだけど。・・・・・・いるよ・・・・なぁ・・・。
「そう言う・・・直幸は?」
「俺?いるよ。」
「はっきりと断言するんだ。」
「まぁな。」
しらなかった。いるんだ、直幸にも。誰なんだろ・・・でも、告ったって絶対直幸ならOKもらえると思うんだけどなぁ・・・・。かっこいいし、男らしいし・・・実際コクられてんの見たことあるし・・・・。うらやましい・・・同じ男としてうらやましい。コクられた事なんかないぞ俺は!!
「ふーん・・・・・そっか・・・・。そうなんだ・・・。」
そうつぶやいて、洸一は黙ってしまった。
「洸?」
「ね、告んないの?」
「はぁ!?」
なななな・・・・なにいいだすんだこいつ!!
「いや・・・だから、そのすきな人に告ったりしないの?直幸なら絶対いいってその子言ってくれると思うよ。なんでしないの?」
なんでって・・・・言えるかアホ。
「良いだろ別に。俺の勝手だろ。そう言うお前はどうなんだよ。さっきいるかもしんないとか言ってただろ。」
「ん・・・・だって・・・俺じゃ絶対無理だもん・・・・。」
やや顔をうつむかせてそう言う。珍しい、洸一がそんな態度を取るなんて。
「わかんねーよ?お前だって、見込みあるかも知んねーじゃん。」
「無理だよ・・・告ったらその場で・・・・嫌われるよ・・・・絶対・・・。だったら俺・・・・このままでいいから・・・・。」
「はぁ?」
「だって・・・その人が俺の事見てくれる要素・・・皆無だし。」
こいつがそこまで思いつめる相手ってどんな奴だよ・・・・
「俺なら速攻でOKだすのによ・・・・・。」
思わず口からこぼれた。しまったと、慌てて口をつぐむ。
「直幸・・・なんかいった?雨の音うるさくて聞こえないんだけど?」
「い・・・いや・・・別に何も言ってない。」
「そう・・・。」
セーフ。ホントに今日、雨降ってて良かった。マジ神様ありがとう。俺にとってはこれは恵みの雨だ。だっていま洸は腕の中にいるんだ。
ホントは全部手に入れたいけど、こいつには好きな人いるって言うし・・・つか、俺が抱いてるこの気持は、成就しないに決まってる。だから俺はこのまま片思いでいい。陰ながら思ってるだけでいい。洸が幸せになるならそれでいい・・・いいんだよ・・・。
「直幸が・・・好きな人ってどんな人?」
「は?聞いてどうすんの?」
「何となく・・・気になっただけ・・・。言いたくないなら言わなくていい。」
「目に入れても痛くないほど可愛い奴だよ。」
「何そのおじいちゃんみたいなセリフ。今何歳だよ。」
「お前と同い年だ。」
「俺爺じゃねーよ。ふーん・・・可愛い子・・・かぁ・・・・。そっかぁ・・・。」
「なんだよ。」
「ううん、可愛い子なら直幸とお似合いだなぁって思っただけだよ。なぁなぁ、告っちゃいなよ。」
「んな簡単に行くか。」
「えーなんでだよ。直幸なら大丈夫だって、俺お墨付きだすから。」
そんなお墨付きいりません。
「マジでいってんのかよ?」
「大マジ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
そうこうしているうちに二人の家の前に来ていた。ひとまず洸一の家の玄関前に来る。
「一応ありがとう。」
「んだそりゃ。」
「だって・・・俺待つ気だったし・・・それに・・・・。」
いろいろ聞けたから・・・なんかもう満足。うん。
「ったく・・・今度はもうほっとくかな。」
「とか言いつつ、いつも俺の世話がかりだけどな。」
「少しは自分でしろ。」
「出来たら世話ないっての。じゃ、後で宿題待ってるからな!!」
そう言って洸一が玄関に入っていこうとする。直幸は思わず幸一の手を取ってしまった。
「何?」
「お前さぁ・・・・・ニブ過ぎ。天然なのも良いけどさぁ…もう少し鋭くなってほしいって思うわけよ。」
「????」
ずいっと、直幸は洸一の耳元に口を近付ける。
「俺が好きなのは、お前だよ・・・洸。」
そういって、直幸は隣の自分の家に帰っていった。玄関先で取り残された洸一は、へたりとその場に座り込んだ。
「ま・・・じで・・・・?」
うそだ・・・・うそ・・・・そんなの・・・・こんなのあっちゃダメだろ・・・・
でも・・・・
うれしい
「って・・・・宿題どうしろっていうんだよ・・・・・まさか・・・返事言わなきゃ貸してくれないとかないよな・・・・え・・・う・・・・うう・・・うーん・・・・。」
隣に住んでるのにそこへ行くのが果てしなく遠く感じられる
でもいつまでもこうしてるわけにもいかないし、それに自分だって・・・・
ぺちぺちと自分のほっぺたをたたいた洸一は、鞄を家の中にほおり投げ、すぐに雨の中へ駆けだした。
目指すは隣の家にいる幼馴染
もちろん宿題の為だけでなく
さっきの返事を言いに
「俺も好き!!!!」
外とは裏腹に俺らの心は快晴だった。
~終~
うはぁ・・・書いててこっちが恥ずかしい。
あんま読まないでほしいなんて言ってみる。でもここに書いてちゃ遅いか・・・。
いつの間にか好きになってたんだよっていう幼馴染のお話でした。