【下】
一応校舎裏の木の下では完結です。
その次の日。僕は学校を休んだ。というより、昨日先輩に送ってもらって家に帰ってから、僕はベットから抜け出せなくなった。昨日先輩に言われた言葉が頭から離れなくて、思い出すたびに顔から火が出そうになる。ドキドキが止まらなくて、苦しくなる。いま先輩を顔を合わせたら、どうなるかわからない。たとえいじめられてても学校を休まなかった僕が、こんなことで休むなんて・・・・なんでだろう。
「先輩が・・・・僕のこと好きって・・・・。」
僕は男だし、先輩とつり会えるなんて思えないし・・・。でも、先輩は僕のことが好きで・・・。じゃあ・・・・僕は?僕は先輩のこと・・・・どうなんだろう・・・・・。
その時、携帯が鳴った。誰だろうと思って開くと、数少ない友達の一人の杉浦航だった。いま、授業中じゃないのかなぁ・・・。そう思いつつ、宏人は電話に出た。
「もしもし?」
『どうしたんだよ、宏人。風邪か?』
「ん・・・そんなとこかな・・・・。ね、今授業中じゃないの?」
『ああ、数学の先生今日休みだから自習なんだよ。お前ほんとに風邪かぁ?』
「え・・・そ・・・言われると・・・うんとは言えないかな・・・・。」
『まさかまたいじめ始まったのか?最近なくなったって言ったじゃんか。最近見かけなくなったし・・・・。』
「ち・・・違うよ・・・。ちょっと・・・いけなくて・・・・。」
『お、いっちょ前に悩みごとか?相談に乗ってやっても良いぜ?俺今暇だし。』
実習の課題とかないの?と聞きたくなった。だが、杉浦は結構モテる。だからそう言うお付き合いとかも・・・まぁ男女のだけど宏人よりは経験豊富だから、相談してみるのも悪くはないかもしれない。
「ほ・・・ほんとに相談に乗ってくれる?」
『お、マジで悩みごとで休んだのか。案外女々しいなぁ宏人は。』
「女々しくないよ・・・。あのさ・・・僕、実は・・・告白されたんだ・・・。」
『まじ!?誰?誰?』
「誰ってそれは・・・・・・。」
言ったらどう思うかな・・・。やっぱ嫌われるかな・・・。男に告白されて悩んでるなんて・・・・。
「い・・・言っても嫌わない?僕のこと。」
『なんで?』
「え・・・なんでって・・・その・・・・。あまり信じてもらえるか・・・わかんないし・・・。ちょっとあり得ないかもしれないし・・・・。」
『良いから言ってみろって。俺が聞きたいって言ったんだからいいだろ?』
「・・・・・・・・・佐川先輩・・・・・。」
しばしの沈黙。
『さ・・・・佐川先輩って・・・・佐川涼?あの?』
「うん・・・佐川先輩って学校に一人だけだと思うから・・・。」
『・・・・・あの先輩に好きって言われたと。・・・・・・で?』
「で、って?」
『お前はなんて答えようと思ってんの?』
「わ・・・わかんない・・・・・。」
『お前ああいうタイプ苦手なんじゃないのか?喧嘩暴力日常茶飯事みたいな人。』
「せ・・・先輩はそんなじゃないよ・・・・。いろいろ助けに来てくれたりするし・・・それに噂されるほど喧嘩してないよ?校舎裏で昼寝とかする時間が多いって言ってたし・・・ほんとだよ?」
『ふーん・・・お前は嫌いじゃないんだ、先輩のこと。』
「好きか嫌いかって言われたら・・・好きかなって思うけど・・・それが恋愛対象かどうかは・・・・。」
『でも実際悩んでるんだろ?』
「言われたの昨日だけど・・・あれからドキドキとまんなくて・・・ずっと先輩のことばっか考えちゃうし・・・熱あるみたいに顔熱いし・・・。」
『それ、そのまま先輩に言ってみろよ。よろこぶぜ?俺も彼女にそう言われてみてーよ。』
「ふえ?」
『今からでも遅くねーんじゃね?どうせ先輩いま校舎裏で寝てるだろ?こっそり学校来て今のこと伝えに行けよ。応援してるぞ!いい結果待ってるからな!じゃ!』
「え・・・・ちょ・・・航!?切れちゃったよ・・・・今のことって・・・意味わからないと思うけどなぁ・・・・。でも・・・先輩に会いたい・・・。顔だけでも・・・見に行こうかな。それに昨日のお礼も・・・言ってなかった気がするし・・・うん、言ってみよう。」
そう思った宏人は、制服に一応着替え、家を飛び出した。目指すは先輩にあったあの校舎裏の木のところ。あそこが先輩の定位置。
そして予想通り、先輩はそこにいた。木にもたれかかってすやすやと寝ている。宏人は佐川のすぐそばにしゃがみこんだ。そしてじっと、その整った顔を覗き込む。喧嘩する時もある。その時は確かに怖い。けど、それはきっと誰でもそうなんだと思う。喧嘩してる時に怖くないなんておかしいもんね。それは先輩もおなじ。だって今こんなに優しい顔して寝てるんだもんなぁ。うわぁ・・・またドキドキして来た。どうしよう。そんなとき、風がびゅうっとその場に吹いた。そして、それによってなのか、佐川が目を覚ました。
「あ・・・・せんぱ・・・・。」
「お前・・・今日学校休みじゃないのか・・・?」
「え・・・なんでしって・・・・。」
「んなことどうでもいいだろ?なんでここにいんだよ?」
「せ・・・先輩に会いに来ました。」
「はぁ?」
「えと・・・あの・・・・昨日言われたことで・・・その・・・。」
そこで言ったん言葉を切った宏人は再び口を開いた。
「昨日は助けてくれてありがとうございました!!えと・・・あと・・・昨日から先輩のことが頭から離れません!!考えるだけでドキドキします!!顔もすごい熱いし、なんか胸苦しいです!好きかどうかはまだ分かんないって言うか・・・僕、人を好きになったことなんかないんでこれがどうなのか・・・わかんないんでその・・・・っ!?」
いきなり佐川に抱き締められて、宏人の言葉はそこで途切れた。そこで気がつく。佐川の鼓動が速いことに。そして彼に導かれて触れた顔が熱い。
「どうだよ。おんなじだよ俺だって。今お前が言ったこと全部好きって気持ちなんだよ。俺だってお前の事ばっか考えるし、ドキドキしっぱなしだし、ほんとマジどうしてくれんだってくらい、狂ってる。」
これが好きって気持ち?
「せんぱ・・・・・。」
「俺はお前のことが好き。」
「っ・・・・僕も・・・・先輩が・・・好きです・・・・。」
此処が僕の安心できる唯一の場所。震える手で、宏人はそれでもしっかりと佐川にしがみついた。しばらくその体制でいた後、宏人が顔を上げると、佐川と目があった。
「相沢・・・・。」
「・・・・・宏人でいいですよ?」
「ふ・・・・宏人。」
「先輩。」
「お前は先輩なのかよ。涼でもいいのに。」
「じゃ、涼先輩。」
「・・・まいっか。」
クスッとはにかんだ涼はそのままいきなり宏人の唇を奪ってしまった。ただ触れるだけのそれはすぐに離れて、宏人は訳が分からず放心していた。
「え・・・・ふえ・・・・えええ!!?」
「ぼけっとしてるからだ、ばか。」
「せ・・・・先輩の意地悪!!」
静かなはずの校舎裏に二人の笑い声が響いていた。
~終~
Short・・・なんでしょうか・・・こんな感じでこれからもいろんなお話書こうかなと思います。