【上】
不良先輩×いじめられっ子後輩のはなし。
軽ーく暴力ある気もしますが、タグとかは付ける必要ないかなと。
痛いよ。くるしいよ。こわいよ。
「はっ・・・・はぁっ・・・・・っは・・・・・・・。」
校内の敷地を、行き切れ切れで走る一人の少年。そしてその後ろからは彼を追いかける複数の男子生徒の姿。此処でつかまったら・・・・やばい・・・・・・・・。
「まてこら!!」
「にげたってむだなんだよ!!」
冗談じゃない。つかまったら囲まれてリンチされるに決まってる。昨日殴られた腹が、青く痣になっているところがキリリと痛む。校舎裏の裏庭に逃げ込むが、まだしつこい奴らは追いかけてくる。そろそろ少年―――相沢宏人の体力は限界だった。そんな時だった。足元にある何かに気がつかず、宏人は地面に倒れこんだ。だが、痛くはない。それどころか、なんか地面じゃない気がする。転ぶ瞬間目を閉じていたが、それを開いてみる。
「いってぇ・・・な・・・何しやがんだ、あ?」
宏人の下には人がいた。どうやらここで昼寝をしていたようだ。宏人はその人の顔を見て思わず固まってしまった。やや明るい赤い髪、右目の下に泣きぼくろがあり、両耳にはピアスがきらめき、Yシャツは開け放たれて中に黒いTシャツを着ている。胸元にはシルバーのアクセサリーが輝く。いくら世間知らずな宏人とは言え、この人の事は知っていた。この学校一の不良だ。
「ごごごごごご・・・・ごめんなさ・・・・ぼくちょ・・・・あの・・・ほんとにごめんなさ・・・・そそそそそれじゃぼく・・・にげなきゃいけないのっで・・・これで・・・・。」
そうしている間にも、後ろから追いかけてくる足音が近づいて来ている。
「おまえ・・・・・・・・・・。」
宏人の顔を見て、不良が何かつぶやいた。
「ふえ・・・?っわぁ!!!?」
力強く引き寄せられたと思ったら、宏人はそのまま不良の胸に顔をうずめるような形になった。しかもしっかりと頭を押さえられている。な・・・・なんなの?そこでようやく宏人を追いかけてきた奴らが追いついた。
「おい、お前ら。誰の眠りを妨げに来たんだ、ああ?」
木の影から、顔だけを振り向かせた形で、その不良が追いかけてきていた男子達にガンを飛ばす。そんな恰好だから宏人の姿は彼らには見えていない。
「げ・・・・二年の佐川だ・・・・。」
「やべ・・・・行こうぜ・・・・・。」
彼らはすぐにまわれ右して立ち去っていく。た・・・・たすかった?ほんとに・・・?殴られずに済んだ?
「あ・・・あの・・・・。」
というか苦しいのでそろそろ離してほしい。けど怖くて言えない。やっぱりこの人、二年で、この学校一不良の佐川涼先輩なんだ・・・・。どどどど・・・どうしよう・・・・まだピンチ続いてるのかな・・・・。僕まさかこれからぶん殴られるんじゃ・・・・。そう思うと身体が震えはじめる。
「おい・・・奴ら行っちまったのになんで、震えてんだ相沢。」
「え・・・・なんで僕の名前知ってるんですか・・・・・?」
「っ・・・・ちっ・・・んなことどうでもいいだろうが。で、なんで震えてんだ?」
貴方が怖いからですよ・・・でも面と向かって言えないよ・・・・。
「な・・・・なんでもないです・・・あの・・・・離していただけたりしませんか?」
「あ・・・ああ。」
ようやく、解放された。にしても、なんでこの人はほんとに、僕の名前を知ってるのだろうか・・・それとも人違い?でも相沢なんて名前この学校には一人しかいない気がしたんだけどな・・・。
「あ・・・あの・・・助けてくれてありがとうございました。」
「べつに、五月蠅いのはいやだっただけだ。」
「そ・・・・・ですか・・・・。あ・・・あと・・・のしかかっちゃって・・・済みませんでした・・・。」
「それは・・・別にいい。」
「え・・・・?」
「さっきの奴ら、お前のこといじめてるやつらか?」
「え・・・・?」
「どうなんだよ?」
だからこわいですから、睨まないでください。
「そ・・・そうですけど・・・でも・・・これは僕の問題ですから・・・その・・・。先輩が聞かれても・・・・・・。」
「あぁ?俺に口答えしようってか?」
「ひっ・・・ごめんなさい!!そうですあの人たちは僕のこといじめてます!!」
「同じクラスか?」
「同じな人もいれば、違う人も・・・・。」
「・・・・休み時間かいじめられんの?」
「大体は・・・あとは放課後くらい・・・・現に今もそうでしたし・・・。」
「殴られたりか?」
「そうですね・・・暴力が多いですね・・・・後はよくパシリにされますけど・・・。」
思い出したのか、宏人の大きな黒い瞳が揺らぐ。
「わかった・・・・。」
「な・・・なにがですか?」
「お前、昼は屋上に来い。」
「え?」
「そんで放課後は俺を迎えに2-Dの教室まで来い。」
「はい?」
「携帯貸せ。」
「ふえ?」
「早くしやがれ。」
「ははは・・・・はい・・・・・。」
最近買い換えたばかりの携帯をポケットから取り出す。それをすぐに佐川は奪い取った。そして勝手に操作する。それをわけがわからず見ているとあっという間に帰ってきた。
「俺の番号入れたから、なんかあったらかけろ。・・・・あったらじゃないな、何かされそうになったらすぐにかけろ、わかったか?」
「え・・・は・・・はい?」
「じゃあな。」
ぽんぽんと宏人の頭をなでた佐川はそのままその場から立ち去っていった。訳がわからない宏人はしばらくその場にいた。なんなんだろうか・・・あの人は・・・・。撫でられた頭を押さえつつ、宏人は佐川が立ち去った方を眺めていた。
次回:校舎裏の木の下で【中】となっております。
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