【読み切り】
英語教師と2年主席君。
きーんこーんかーんこーん
というチャイムと共に、2-Bの教室を飛び出した生徒が一人。杉浦夕貴2年主席である。いつもは校則を破らない彼だが、今日は全速力であるところに向かう。あるところとは・・・英語教材室。そしてその部屋のドアを勢いよく開け放つ。
「先生!!これはどういう事なんですか!!」
「なにが?」
のんきに椅子に座ってアイス食ってるのが、夕貴の英語担任、荒池響である。というか、学校でアイス食べてていいのか・・・・。
「これですよ、これぇ!!」
そういって夕貴が取り出したのは赤い色の紙。それは赤点の生徒に配られる魔の紙である。夕貴はこんな紙を受け取るのは初めてだ・・・というか・・・。
「俺、今期の英語、赤点じゃなかった気がするんですけど!!テストだって98だったし。授業だって真面目に聞いてるし、なにが赤点なんですか!!」
「ないよ?」
「へ?」
ない?nothing?え・・・・え・・・・?
「だから、この学期で赤点取った生徒いないけどね?」
「は?じゃ・・・これなに・・・?」
思わず敬語が外れる。それほどこの先生の言っている意味がわからん。
I don’t under sutund.
「それが夕貴のとこ行けば、ここくるかなあと。」
「は?」
「簡単にズバッと言うと、職権乱用?」
「はぁあああああああああああああ!!!?」
おいおいおいおいおいおいおいおいおい!!
「ちょ・・・なにそれどういうこと!?」
「だって最近テスト勉強だ!!とかいって会いに来てくれなかったからさ。呼び出し。どう?結構ユニークだったろ?」
「先生がそんなことしていいと思ってんですかあ!!」
「いいじゃん、赤点じゃないんだからさ。オール5おめでとう。」
「うれしくない。むしろ悩みっぱなしだったあの時間を返してほしい。」
「それは残念。夕貴の悩む姿を拝めなくて。」
「あんたねぇ!!」
「夕貴。」
「?」
「おいでおいで、ここ!」
こことはどこかって?先生の膝の上。座れって言うんだな?
「座んなきゃマジで赤点にしてやろうか?」
誰かこいつぶっ殺して!!
だが座ってしまうのは・・・惚れた弱みとかそんなん信じないぞ!!
膝の上に座ったら後ろから抱き締めてきた。ご機嫌なようで鼻歌なんか歌ってるし。
「先生、もういいですよね?他の先生来たらどうするんですか?」
「あ-今日俺しかいないよ?英語教師。」
「え・・・。」
「だから他の教室にも代理教師で行かなきゃいけなくて、あ-疲れた。だから回復させて。」
「俺はゲームの回復ポイントじゃないですよ!!」
「えー。あ、今度の週末だけどさ。」
「急に話題を変えないでください。」
「どっかいかない?」
「どこかって・・・先生とですか?」
「俺、休日まで先生やってないから。ただの響だから。」
「そう言う問題ですか・・・。それで・・・どこへ?」
「遊園地とかどう?最近出来たあそこ。」
「遊園地ですか。そう言えばいってみたいなとは思ってましたけど・・・。」
「はい、決定。」
「俺とそんなとこ行って楽しいですか?」
「楽しいよ?ま、夕貴とだったらどこでもいいけどね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・先生見る目ないですね。」
「それはどういうことかなぁ?俺最高に見る目あるから。だってこんな可愛い夕貴、ほっとく男が信じらんないでしょう。」
「かわ・・・・いくないです!!」
しかもどさくさにまぎれて顔近付けてくるのはやめてほしい。そこまで俺は危険を冒すようなことは学校ではしたくない。さっき廊下全速力で走ったけど!!
「俺のどこが好きなんですか?」
「全部。しいていうなら・・・・all?」
「全部じゃないですか結局・・・・・・・・。」
なんか英語の成績だけ手を抜きたくなった。
あ・・・やっぱやめた。なんか後が怖い。
夕貴が響の腕の中から解放されたのは、驚くことにそれから一時間後だった。
~終~
赤点の制度って、どこの学校も一緒なんでしょうかね?
私の高校は赤い紙を受け取るっていう奴だったんで、この小説もそうしたんですけど・・・
私はもらったことないですよ?ほんとですよ。