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05:彼が私を避ける理由・後

早くも行き詰まった感が否めない(汗)。更新が遅れそうです……。

大学生活も、残すはあと一年。三年生になってすぐに取り掛かった論文も、終わりを迎えつつある。単位は必要数を取得したから、講義に出る必要も無い。

とはいえ、私にも残された課題がある。


それは《就職》だ。

講義やバイト、それに論文に時間を費やすあまり、自分がどういった職業に就きたいのか、考えた事がなかったので、中々厄介だ。

それに………


(…志摩くん…)


つい最近、懐かしい人に会った。高校時代を共に過ごし、そして………心無い、残酷な言葉で傷付けた、元クラスメイト、志摩渚くんに。

三年の月日は、幼かった彼の顔を大人びさせた。中性的な顔立ちは、可愛さよりもかっこよさが目立ち、背も、伸びた。

求人雑誌を買いに立ち寄って、偶然に会ったあの日、私は志摩くんと再会出来た事が、嬉しかった。

けど、それは私だけが嬉しいと思っただけの事。

いっぱい話したい事、そして、今更だけど謝りたい事があったのに、志摩くんとの会話は、彼が足早に店を出た事で、断たれた。


(やっぱり私、嫌われてるんだ……)


ズキッ!と、痛む。そして月島くんに言われた言葉を思い出す。


『これ以上、渚に関わるな……』


(ごめんね……)


足早に去って行った志摩くんを目で追いながら、口には出せない謝罪の言葉。



罪悪感が拭えない翌日は、私の心と同じ、雨。

幸い学校は無かったけど、バイトの日。

憂鬱に足どり重く、向かった先で待っていた、嬉しいような、気まずい再会。


「いらっしゃい……ま…せ…」


思わず上擦った声は驚きと、戸惑い。

私よりも少し年上の美人な女性と、昨日偶然にも再会した、志摩くんの姿。


(志摩くんが、女の人と……)


女性の方は、何度も面識のある顔で、たしか名前は野沢さん……だったっけ。すらっとした、眼鏡がよく似合う美人。

志摩くんも、大人びた印象がかっこよくて、まるで美男美女のカップルに見えてしまう。

だからこそ余計に……。


(なんで……野沢さんと一緒なの?)


羨ましい。志摩くんと一緒に居る野沢さんが。


「あ、私らは別に付き合ってるんじゃないから安心してね!」


どんなつもりで言ったのかは知らないけど、野沢さんの言葉に、私は思わず安堵。えっと、なんで?


「水上さんは、ただの知り合いですよ」


志摩くんの言う事は、正論以外の何物でもない。私と志摩くんの関係は、たしかにただの知り合い(クラスメイト)。

けど、何故だか心は痛む。久しぶりに会って、志摩くんの大人びた姿に見惚れたせいか、それとも……。


燻る感情の答えもわからず、私は再び厨房へと戻った。

そして志摩くん達が店に来て2時間。完全に酔っ払いと化した野沢さんの絡み酒に付き合わされている志摩くんは、げんなりとした顔で、適当に野沢さんに相槌を打っている。

私も幾度か野沢さんの愚痴に付き合わされた事があるから、気持ちはよくわかる。だからこそ、心の中で志摩くんに合掌……。

絡み酒から開放された志摩くんに呼ばれ、会計。飲み物が会計の七割を占めていた事に、私は少し驚いた。いや、私はお酒飲まないからさ。

野沢さんは酔い潰れて眠ってしまった(いつもの事だけど)ので、全額を支払った志摩くんに同情しながら、お金を受け取る。


「また来てよ!」

「…気が向いたら」


靴紐を結ぶ志摩くんの視線は、こっちを向いてはくれない。


「あのさ、今度来た時にはサービスするから!」

「来るかもわからないから」


立ち上がった志摩くんは、ようやくこっちを向いてくれた。

けど、返ってきた言葉はまだ、私を受け入れてはくれない、辛い内容だった。

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